【宅建過去問】(平成30年問10)相続

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相続に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. 無権代理人が本人に無断で本人の不動産を売却した後に、単独で本人を相続した場合、本人が自ら当該不動産を売却したのと同様な法律上の効果が生じる。
  2. 相続財産に属する不動産について、遺産分割前に単独の所有権移転登記をした共同相続人から移転登記を受けた第三取得者に対し、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。
  3. 連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合、相続人らは被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となる。
  4. 共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人は、協議なくして単独で共有物を占有する他の相続人に対して、その共有物の明渡しを請求することはできない。

正解:4

1 正しい

無権代理において、本人が死亡して無権代理人が単独でこれを相続した場合、その無権代理行為は相続によって当然に有効となり、無権代理人は本人の地位で追認拒絶をすることはできません(最判昭40.06.18)。
つまり、本人が自ら当該不動産を売却したのと同様な法律上の効果が生じます。

※本肢とは逆に、無権代理人が死亡して本人が単独で相続した場合、無権代理は相続によって当然に有効にはなりません(最判昭37.04.20)。本人は、追認を拒絶することもできます。

■参照項目&類似過去問
内容を見る

無権代理と相続(民法[04]4)
年-問-肢内容正誤
無権代理人が本人を単独相続した場合
1R01-05-2本人が追認拒絶をした後に無権代理人が本人を相続した場合と、本人が追認拒絶をする前に無権代理人が本人を相続した場合とで、法律効果は同じである。
×
230-10-1無権代理人が本人に無断で本人の不動産を売却した後に、単独で本人を相続した場合、本人が自ら当該不動産を売却したのと同様な法律上の効果が生じる。
324-04-2本人が死亡し無権代理人が単独で相続した場合、無権代理人は追認拒絶が可能。×
420-03-3本人が死亡し無権代理人が単独で相続した場合、無権代理行為は当然有効となる。
505-02-4本人が死亡し無権代理人が単独で相続した場合、無権代理行為は当然有効となる。
無権代理人が本人を共同相続した場合
124-04-4本人が死亡し無権代理人が共同で相続した場合、他の相続人が追認しない限り、無権代理人の相続分についても当然有効にはならない。
216-02-3本人が死亡し無権代理人が共同相続した場合、無権代理人の相続分については当然有効となる。×
本人が無権代理人を単独相続した場合
1R01-05-4本人が無権代理人を相続した場合、当該無権代理行為は、その相続により当然には有効とならない。
224-04-3無権代理人が死亡し本人が単独で相続した場合、本人は追認拒絶が可能。
320-03-4無権代理人が死亡し本人が単独で相続した場合、無権代理行為は当然有効となる。×
416-02-4無権代理人が死亡し本人が単独で相続した場合、本人は追認拒絶が可能。相手方は善意無過失であれば、本人に対し損害賠償請求が可能。

2 正しい

選択肢の記述が抽象的なので、平成19年問06肢3で出題された事例を使って説明しましょう。
①兄と弟が各2分の1の持分で共同相続
②遺産分割前に、兄が甲不動産を単独相続した旨の所有権移転登記
③兄は、甲不動産を第三者に譲渡
④第三者名義で所有権移転登記
この場合、弟には、何らの登記もありません。それでも、第三者に対して、自己の持分を対抗することができる、これが判例の結論です(最判昭38.02.22)。兄は、甲不動産を単独所有している旨の登記をしていますが、弟の持分については無権利です。第三者は、無権利者から譲渡を受けたに過ぎないのです。単独所有という登記を信じたからといって、保護されるわけではありません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る

共同相続と登記(民法[07]2(4)③)
年-問-肢内容正誤
1R03s-06-4共同相続財産につき、相続人の一人から相続財産に属する不動産につき所有権の全部の譲渡を受けて移転登記を備えた第三者に対して、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。
230-10-2相続財産に属する不動産について、遺産分割前に単独の所有権移転登記をした共同相続人から移転登記を受けた第三取得者に対し、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。
319-06-3共同相続人の一人が単独所有権移転登記し、さらに第三者に移転登記した場合、他の共同相続人は、共同相続の登記をしなければ、第三者に対し自己の持分権を対抗できない。×
415-12-1遺産分割協議前に、共同相続人の一人が単独所有権移転登記し、第三者に譲渡、第三者が所有権移転登記をした場合、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして、第三者に対抗できる。
509-06-2共同相続した土地につき、遺産分割前に、共同相続人の一人が単独所有権移転登記し、第三者に譲渡、第三者が所有権移転登記をした場合、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして、第三者に対抗できる。

3 正しい

連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となります(最判昭34.06.19)。
連帯債務者①と連帯債務者②が1,000万円借り入れ、連帯して返済する義務を負っていたとします。返済の前に連帯債務者②が死亡し、相続人AとBが相続しました(相続分は2分の1ずつ)。この場合、連帯債務者②の連帯債務を相続人が分割して承継します。つまり、相続人AとBは、500万円の範囲で債務を相続したことになります(左図)。今後は、連帯債務者①と相続人A、Bが連帯債務を負うことになります。ただし、A、Bが連帯債務を負うのは、500万円の範囲です(右図)。

4 誤り

この選択肢も抽象的なので、事例を設定しましょう。
ある建物をAとBが共同相続し、その持分がそれぞれ1/3と2/3だったとします。
Aは共有者の1人ですから、Bと協議をしていないにしても、この建物全体を占有する権利を持っています。その占有を不法占拠ということはできません。

だとすれば、BがAに対して、この建物の明渡しを請求するのは、共有物の利用・改良行為ということになります。
ここでBは、持分価格の過半数を有しています。したがって、Aに対して、この建物の明渡しを請求することが可能です(民法252条1項)。

■参照項目&類似過去問
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共有物の使用(民法[10]3(1))
年-問-肢内容正誤
1R07-08-4AがB及びCに無断で甲土地を占有している場合であっても、Bは、Aに対し、当然には自己に甲土地を明け渡すように求めることができない。
2H30-10-4共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人は、協議なくして単独で共有物を占有する他の相続人に対して、その共有物の明渡しを請求することはできない。×
3H29-03-1共有者は、他の共有者との協議に基づかないで当然に共有物を排他的に占有する権原を有するものではない。
4H29-03-2AとBが共有する建物につき、AB間で協議することなくAがCと使用貸借契約を締結した場合、Bは当然にはCに対して当該建物の明渡しを請求することはできない。
5H29-03-3DとEが共有する建物につき、DE間で協議することなくDがFと使用貸借契約を締結した場合、Fは、使用貸借契約を承認しなかったEに対して当該建物全体を排他的に占有する権原を主張することができる。
×
6H24-10-2共同相続人の一人が相続財産である建物全部を占有する場合、他の相続人は明渡請求ができる。×
7H23-03-4他の共有者との協議に基づかないで、自己の持分に基づいて1人で現に共有物全部を占有する共有者に対し、他の共有者はその持分によらず単独で自己に対する共有物の明渡しを請求することができる。×
8H19-04-1共有者の一人から占有使用を承認された者は、承認した者の持分の限度で占有使用できる。
9H13-01-2共有者の一人が共有物全体を使用している場合、他の共有者はその明渡しを請求できる。×
10H09-02-3共有者は、その持分割合に応じて、共有物全体を使用する権利を有する。


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【宅建過去問】(平成30年問10)相続” に対して10件のコメントがあります。

  1. まっちゃん より:

    上記の質問の続きです。
    改正民法では、「共有物を使用する共有者」がいるときに、その共有者に明渡しを求める行為も、「共有物の利用・改良行為」と扱うことが明示されました。

    明示された条文をご教授お願い致します。

    1. 家坂 圭一 より:

      解説にも挙げましたが、民法252条1項が根拠条文です。
      後段部分をご確認ください。
      以下に引用しておきます。

      第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

      1. まっちゃん より:

        何度も質問して申し訳ございません。
        昭和41年5月19日の判例(https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57745)では
        共有物の持分の価格が過半数をこえる者は、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、当然には、その占有する共有物の明渡を請求することができない。
        と書いてあります
        改正民法でこちらの判例の結果を改正したという理解で宜しいでしょうか?

        1. 家坂 圭一 より:

          まっちゃん様

          長文になりましたが、ご質問に回答します。

          (まっちゃんさん以外のかたへ)
          以下の解説は、判例や民法改正の内容に踏み込むもので、宅建受験用解説の範囲を越えています。
          興味があったとしても、読むのは、本試験終了後にしましょう。

          【1】判例の解説

          最判昭和41年5月19日の結論は、以下の(1)(2)です。

          • (1)共有物の持分の価格が過半数をこえる者は、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、当然には、その占有する共有物の明渡しを請求することができない。
          • (2)明渡しを請求するためには、明渡しを求める理由を主張し立証しなければならない。

          つまり、(1)当然に明渡し請求ができるわけではないですが、(2)明渡しを求める理由を主張・立証すれば、明渡し請求が可能であるといっているわけです。

          判例の事案では、共同相続による共有者は9人いて、

          • 占有者の持分:1/12
          • その他に、1/3を有する者1人、1/12を有するもの7人という状況でした。

          そして、占有者以外の8人は、明渡しを求める理由について、何の主張・立証もしませんでした。
          そのため、明渡し請求は、認められなかったわけです。

          【2】改正民法の内容

          この判例は、(2)について、「どのような事情があれば、明渡しを請求する理由になるか」を明確にしていません。

          その点を解決したのが、改正後の民法252条1項後段です。
          この条文により、「共有物の管理に関する事項・・・は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。」というルールが、
          「共有物を使用する共有者があるとき」にも適用されることが明らかになりました。

          つまり、共有物を占有する者以外の共有者が「持分価格の過半数」で決定すれば、占有者に明渡しを求めることができるというルールになったわけです。

          【3】この過去問の特殊性

          共有物を占有する者「以外」の共有者が複数であれば、改正民法のルールは、明解です。
          「過半数による決定」があるかどうか、を確認すればいいからです。

          過去の出題では、以下のようになっています。

          (1)平成24年問10肢2

          占有するAと明渡し請求するFの持分がそれぞれ1/2
          →「過半数」ではないので、当然に明渡し請求することはできない。

          (2)平成23年問03肢4

          「他の共有者はその持分によらず単独で」
          →「持分」が「過半数」ではなければ、当然に明渡し請求することはできない。

          しかし、今回の問題では、
          「共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人」
          とあるだけです。

          この相続人が1人だとすると、「過半数」による決定があったのと同様です。
          つまり、自分の持分が過半数であることを理由に明渡し請求ができることになります。

          そうすると、出題時の問題文
          「当然にその共有物の明渡しを請求することができる」
          は「正しい」とも考えられます。

          出題時は「当然に」がヒッカケで、この選択肢は「誤り」でした。
          しかし、改正民法が存在するため、「1人で過半数の持分を有する共有者」がいれば、「過半数による決定」なしで、明渡し請求ができることになりました。
          このことを「当然に」と表現することも可能だと思います。

          このままでは、正誤が曖昧になってしまいます。
          そこで、出題時の選択肢を修正し、現在のものにしました。

          1. まっちゃん より:

            大変分かりやすくご説明してくださって
            ありがとうございます。
            これですっきりしました。

            1. 家坂 圭一 より:

              かなりややこしい話なので、講義では細かい説明を省き、結論だけを強調しました。
              今回、まっちゃんさんのご質問により、初めて、詳細な説明を書く機会が得られたわけです。

              他の受験生のかたの役には立ちそうもないですが、私にとっては貴重な機会でした。
              ハイレベルなご質問、ありがとうございます。

  2. 小原茂生 より:

    お世話になっております。貴社サイトが宅建過去問サイトの中では一番優れていると思っております。
    ところで、平成30年問10選択肢4に関しては、元々の問題が、「4.共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人は、協議なくして単独で共有物を占有する他の相続人に対して、当然にその共有物の明渡しを請求することができる。」で、正解は「誤り」、すなわち、「請求できない」と他のサイトではなっております。貴社では選択肢4自体を変更して、文末を「請求することはできない。」としながら、回答は、同じく「誤り」としているので、他社サイトと解釈が逆転しております。どちらが正しいのでしょうか?

    1. 家坂 圭一 より:

      小原様

      ご質問ありがとうございます。
      返信が遅くなって申し訳ありません。

      さて、ご質問の件ですが、この問題の肢4は、令和5年4月1日に施行された改正民法に合わせて改題しています。

      改正民法では、「共有物を使用する共有者」がいるときに、その共有者に明渡しを求める行為も、「共有物の利用・改良行為」と扱うことが明示されました。

      したがって、「共有物を単独で占有する共有者(「A」とします。)」以外に、「持分の過半数を有する共有者(「B」とします。)」がいれば、Bは、単独で、Aに対して明渡しを求めることができます。

      このような民法改正があったため、過去問の問題文や解説を修正する必要が生じました。

      当社では過去問の改訂に当たって、

      1. 四択問題の正解を変更しない(「複数解答」や「正解なし」を避ける)。
      2. そのために、各選択肢の正誤を変更しない。

      という方針を取っています。

      そこで、肢4の「できる・できない」を変更し、「誤りの肢」であることを維持しました。

      上で挙げた民法改正については、
      ■民法[10]共有
      https://e-takken.tv/mp10/
      3.共有物の利用関係
      (3).共有物の管理
      で説明しています。
      ご確認ください。

      1. より:

        上記質問の続きで、別サイトの文言の間違い部分はどこになるのでしょうか?

        1. 家坂 圭一 より:

          ふ様

          ご質問ありがとうございます。

          申し訳ないのですが、「別サイトの文言の間違い部分」というのが、何を指すのか分かりません。

          これは、

          • どのサイトの
          • どのページにある
          • どの文言

          のことでしょうか。
          お手数ですが、URL等をお示しください。
          よろしくお願いします。

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