【宅建過去問】(令和02年12月問37)契約書面(37条書面)

宅地建物取引業法第37条の規定により交付すべき書面(以下この問において「37条書面」という。)に関する次の記述のうち、同法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 既存の建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項がない場合、確認した事項がない旨を37条書面に記載しなければならない。
  2. 代金又は交換差金についての金銭の貸借のあっせんに関する定めがない場合、定めがない旨を37条書面に記載しなければならない。
  3. 損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがない場合、定めがない旨を37条書面に記載しなければならない。
  4. 宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがない場合、定めがない旨を37条書面に記載しなければならない。

正解:1

必要的記載事項と任意的記載事項

37条書面について、必要的記載事項と任意的記載事項との区別を求める問題です。
両者には、「定めがない」場合に大きな違いが生じます。
必要的記載事項の場合、定めがない場合でも、「定めがない」ということを記載しなければなりません。一方、任意的記載事項については、定めがなければ、何も記載する必要がないわけです。

  必要的記載事項 任意的記載事項
定めがあるとき 記載必要 記載必要
定めがないとき 「ない」という記載が必要 何も記載しなくてOK

1 正しい

建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項」は、売買における37条書面の必要的記載事項です(表の⑥。宅建業法37条1項2号の2)。

37条書面(契約書面)の必要的記載事項

必要的記載事項ですから、確認した事項がない場合には、「確認した事項がない旨」を記載する必要があります。

■参照項目&類似過去問
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37条書面の必要的記載事項(⑥当事者双方が確認した事項)(宅建業法[12]2(1)⑥)
年-問-肢内容正誤
1R05-27-4既存住宅の貸借の媒介を行う宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法第37条の規定により交付すべき書面に建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項を記載しなければならない。×
2R03s-26-2宅地建物取引業者は、その媒介により建物の貸借の契約を成立させた場合において、当該建物が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項を37条書面に記載し、当該契約の各当事者に交付しなければならない。
×
3R02s-37-1宅地建物取引業者が媒介により既存建物の売買の契約を成立させた場合、既存の建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項がないときは、確認した事項がない旨を37条書面に記載しなければならない。
4R01-34-2宅地建物取引業者が既存住宅の売買の媒介を行う場合、37条書面に当該建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項を記載しなければならない。
5H30-27-4宅地建物取引業者Aは、Bが所有し、居住している甲住宅の売却の媒介を、また、宅地建物取引業者Cは、Dから既存住宅の購入の媒介を依頼され、それぞれ媒介契約を締結した。A及びCは、Dが宅地建物取引業者である場合であっても、法第37条に基づき交付すべき書面において、甲住宅の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項があるときにその記載を省略することはできない。
6H30-34-エ宅地建物取引業者が媒介により既存建物の貸借の契約を成立させた場合、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項について、37条書面に必ず記載しなければならない
×

2 誤り

金銭の貸借のあっせんに関する定めがある場合には、「あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置」について記載する必要があります(宅建業法37条1項9号)。任意的記載事項ですから、定めがない場合には、何も記載する必要がありません。

契約書面(37条書面)の任意的記載事項

■参照項目&類似過去問
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37条書面の任意的記載事項(④金銭貸借のあっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置)(宅建業法[12]2(2)④)
年-問-肢内容正誤
1R02s-37-2代金又は交換差金についての金銭の貸借のあっせんに関する定めがない場合、定めがない旨を37条書面に記載しなければならない。
×
2R02-33-4宅地建物取引業者が自ら売主として宅地の売買契約を締結した場合、代金についての金銭の貸借のあっせんに関する定めがある場合における当該あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置については、37条書面に記載する必要はない。×
3R01-36-ウ土地付建物の売主である宅地建物取引業者は、買主が金融機関から住宅ローンの承認を得られなかったときは契約を無条件で解除できるという取決めをしたが、自ら住宅ローンのあっせんをする予定がなかったので、37条書面にその取決めの内容を記載しなかった。×
4H24-32-3宅地建物取引業者A社が、自ら売主として宅地建物取引業者でない買主Bと宅地の売買について交渉を行う。Bは、当該宅地を購入するに当たり、A社のあっせんを受けて金融機関から融資を受けることとした。この際、A社は、重要事項説明において当該あっせんが不調に終わるなどして融資が受けられなくなった場合の措置について説明をし、37条書面へも当該措置について記載することとしたが、融資額や返済方法等のあっせんの内容については、37条書面に記載するので、重要事項説明に係る書面への記載は省略することとした。
×
5H22-34-3土地付建物の売買契約において、買主が金融機関から住宅ローンの承認を得られなかったときは契約を無条件で解除できるという取り決めがある場合、当該売買の媒介を行う宅地建物取引業者は、自ら住宅ローンのあっせんをする予定がなくても、37条書面にその取り決めの内容を記載する必要がある。
6H11-35-1建物の貸借の契約を媒介した場合、借賃についての融資のあっせんに関する定めがあるときは、当該融資が成立しないときの措置について37条書面に記載する必要がある。
×
7H02-49-4宅地建物取引業者が自ら売主として37条書面を交付する場合に、金銭の貸借のあっせんの定めをしたが、その履行が確実であったので、金銭の貸借が成立しないときの措置について、これを定めず、買主の承諾を得て、その記載をしなかったとしても、宅建業法に違反しない。
×

3 誤り

損害賠償額の予定又は違約金に関する定め」は、37条書面の任意的記載事項です(肢2の表の③。宅建業法37条1項8号)。任意的記載事項ですから、定めがない場合には、何も記載する必要がありません。

■参照項目&類似過去問
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37条書面の任意的記載事項(③損害賠償額の予定又は違約金に関する定め)(宅建業法[12]2(2)③)
年-問-肢内容正誤
1R02s-37-3損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがない場合、定めがない旨を37条書面に記載しなければならない。×
2R01-34-1宅地建物取引業者が自ら売主として建物の売買を行う場合、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額として売買代金の額の10分の2を超えない額を予定するときは、37条書面にその内容を記載しなくてよい。
×
3H22-34-2宅地建物取引業者が区分所有建物の貸借の媒介を行う場合、損害賠償額の予定又は違約金に関する特約の内容について、37条書面に記載する必要はないが、売買の媒介を行う場合は、当該内容について37条書面に記載する必要がある。
×
4H18-37-イ宅地建物取引業者が建物の貸借の媒介を行う場合、損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容を37条書面に必ず記載しなければならない。
5H13-35-3宅地建物取引業者は、宅地の売買を媒介した場合、損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容について、37条書面に記載しなければならない。
6H12-34-4宅地建物取引業者が、その媒介により宅地の貸借の契約を成立させた場合、37条書面において、損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容を必ず記載しなければならない。
7H01-47-4宅地建物取引業者が自ら売主となって工事完了前のマンションの売買契約を締結する。損害賠償の予定額又は違約金については、契約締結時に宅地建物取引業法第37条に規定する書面において説明することとし、説明を省略した。
×

4 誤り

租税その他の公課の負担に関する定め」は、37条書面の任意的記載事項です(肢2の表の⑧。宅建業法37条1項12号)。任意的記載事項ですから、定めがない場合には、何も記載する必要がありません。

■参照項目&類似過去問
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37条書面の任意的記載事項(⑧租税その他の公課の負担に関する定め)(宅建業法[12]2(2)⑧)
年-問-肢内容正誤
1R02s-37-4宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがない場合、定めがない旨を37条書面に記載しなければならない。×
2R01-34-3宅地建物取引業者は、その媒介により売買契約を成立させた場合、当該宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めについて、37条書面にその内容を記載する必要はない。
×
3H27-38-エ宅地建物取引業者Aが自ら買主として宅地の売買契約を締結した場合において、当該宅地に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、Aは、その内容を37条書面に記載しなければならず、売主が宅地建物取引業者であっても、当該書面を交付しなければならない。
4H26-40-エ宅地建物取引業者は、建物の売買の媒介において、当該建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容を37条書面に記載しなければならない。
5H13-35-4宅地建物取引業者は、宅地の売買を媒介した場合、当該宅地に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容について、37条書面に記載しなければならない。
6H11-35-4建物の貸借の契約を媒介した場合、当該建物に係る租税等の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容を37条書面に記載しなければならない。
×
7H02-49-3宅地建物取引業者が自ら売主として37条書面を交付する場合に、固定資産税について、負担額が不明であったので、日割計算によって負担割合を定めたが、買主の承諾を得て、その記載を省略した。
×

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【宅建過去問】(令和02年12月問37)契約書面(37条書面)” に対して4件のコメントがあります。

  1. motti より:

    類似過去問を誤認識していないか確認するために活用させていただいています。

    肢1ですが、貸借の場合は記載不要と認識しています。問は、売買か貸借か不明で答えに迷いました。

    どうすれば解決するのでしょうか?

    1. 家坂 圭一 より:

      motti様

      ご質問ありがとうございます。

      肢1ですが、貸借の場合は記載不要と認識しています。問は、売買か貸借か不明で答えに迷いました。
      どうすれば解決するのでしょうか?

      おっしゃる通りで、「売買」か「貸借」かが分からなければ、「当事者双方が確認した事項」を「記載しなければならない」かどうか、の正誤が決まりません。
      厳密にいえば、問題文自体が不備で解答不能ということになるのかも知れません。

      ここでは、実際的な観点として、「本試験でどのように対処すべきか。」を考えてみましょう。

      (1)肢1の正誤が判断できないから正解がない→どの選択肢もマークしない。

      この人が得点することができるのは、「正解なし。全員正解。」という結論になった場合に限られます。
      それ以外は、肢1~4のいずれが正解になっても、点をもらうことができません。

      (2)肢1の正誤が判断できないから他の選択肢を選ぶ→肢2~4のどれかにマークする。

      肢2~4は、いずれも「任意的記載事項」に関するものです。
      そして、「任意的記載事項」について「定めがない場合」であるにもかかわらず、「記載しなければならない」というのはヘンです。
      また、肢2~4は、いずれもこのワンパターンのヒッカケで、どれか一つを選ぶこともできません。
      とすると、(2)はあり得ない判断ということになります。

      結論・本試験での方針

      結局、
      ・肢1にアヤシイ点はあるが、これにマークするしかない。
      という結論になります。

      これなら、もしも、(1)「正解なし」という結論になっても、他の人と同じように1点もらえます。
      損することはありません。

      このような出題、つまり、
      ・一問一答式では解答不能だが、四択の中であれば、これを選ぶしかない。
      という選択肢が、3~4年に一つは出ているように思います。
      (正確に数えたことはありませんが。)

      このような問題に出会った場合は、以上のように考えて、損のない判断をしましょう。

      1. motti より:

        早速、丁寧に回答くださり誠にありがとうございます。
        大きな勘違いをしていることもあり、認識に間違いがなく良かったです。

        もし同じようなことがあったら、先生が解説してくださった経緯のように考え、いちいち動揺せず、本試験でもやり過ごしたいと思います。

        1. 家坂 圭一 より:

          「正しい選択肢なし。全員正解」などという異常事態は滅多に起こりません。また、万一そのような状況であっても、「何もマークしない。」という選択が正解になることはありません。
          「正解は一つだけ決まる。出題者はそのように問題を作っている。」ということを信じて、一つだけマークする。対策は、これしかありません。

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