【宅建過去問】(平成07年問42)業務上の規制
宅地建物取引業者Aは、造成工事完了前の宅地を自ら売主として売却するため、他の宅地建物取引業者B(消費税免税業者)にその代理を依頼し、宅地建物取引業者Cに1億円で売却する契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。
- Aは、Cに対し宅地建物取引業法第35条の規定に基づく重要事項説明書を交付する義務はなく、Bがその義務を負う。
- BがCから契約の締結に関し300万円の報酬を受け取ったときでも、Bは、Aから600万円の代理の報酬を受け取ることができる。
- Cは、宅地建物取引業法第37条の2に規定する事務所等以外の場所において当該契約を締結したときは、同条の規定により契約を解除できる。
- Aは、Cから手付金3,000万円を受け取るときは、宅地建物取引業法第41条の規定に基づく手付金等の保全のための措置を講ずる必要はない。
正解:4
1 誤り
複数の宅建業者が関与した場合、重要事項の説明に関する義務は、全ての業者が連帯して負うことになる。
したがって、Aは売主として、Bは売主の代理業者として、それぞれ重要事項書の交付義務を負う(宅建業法35条1項)。
※相手方が宅建業者であるので、重要事項「説明」の必要はない(宅建業法35条6項)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R04-40-イ | 建物の貸主が宅地建物取引業者で、代表者が宅地建物取引士であり建物の事情に詳しいことから、その代表者が作成し、記名した重要事項説明書がこちらになります。当社の宅地建物取引士は同席しますが、説明は貸主の代表者が担当します。 | × |
2 | R01-41-2 | 宅地建物取引業者である売主は、他の宅地建物取引業者に媒介を依頼して宅地の売買契約を締結する場合、重要事項説明の義務を負わない。 | × |
3 | H19-40-4 | 宅地建物取引業者Aが売主Bと買主Cの間の建物の売買について媒介を行おうとしている。Aが、宅地建物取引業者Dと共同で媒介を行う場合、35条書面にAが調査して記入した内容に誤りがあったときは、Aだけでなく、Dも業務停止処分を受けることがある。 | ◯ |
4 | H15-37-3 | 宅地の売買について、売主A、Aの媒介業者B及び買主の媒介業者Cの三者がいずれも宅地建物取引業者である場合は、B及びCのみならず、Aも、買主に対して法第35条に規定する重要事項の説明をすべき義務を負う。 | ◯ |
5 | H10-39-1 | 宅地建物取引業者であるA及びBが、共同で宅地の売買の媒介をするため、協力して一の重要事項説明書を作成した。Aの宅地建物取引士がa、Bの宅地建物取引士がbである。AとBは、a一人を代表として、宅地の買主に対し重要事項説明書を交付して重要事項について説明させることができる。 | ◯ |
6 | H10-39-2 | 宅地建物取引業者であるA及びBが、共同で宅地の売買の媒介をするため、協力して一の重要事項説明書を作成した。Aの宅地建物取引士がa、Bの宅地建物取引士がbである。AとBは、重要事項についてaとbに分担して説明させるときでも、aが単独で記名した重要事項説明書を交付させれば足りる。 | × |
7 | H10-39-4 | 宅地建物取引業者であるA及びBが、共同で宅地の売買の媒介をするため、協力して一の重要事項説明書を作成した。Aの宅地建物取引士がa、Bの宅地建物取引士がbである。AとBは、重要事項についてaとbに分担して説明させるときでも、aが単独で記名した重要事項説明書を交付させれば足りる。 | ◯ |
8 | H07-42-1 | 宅地建物取引業者Aは、宅地を自ら売主として売却するため、他の宅地建物取引業者Bにその代理を依頼し、宅地建物取引業者Cに売却する契約を締結しようとしている。Aは、Cに対し法第35条の規定に基づく重要事項説明書を交付する義務はなく、Bがその義務を負う。 | × |
9 | H05-45-4 | 宅地建物取引業者A社は、自ら売主となって、マンションを宅地建物取引業者でない買主Bに売却する契約を締結した。宅地建物取引業者C社がA社を吸収合併した場合、C社は、A社の債権債務を承継するが、A社の宅地建物取引士が行った重要事項説明については、責任を負わない。 | × |
2 誤り
(1)買主Cから受け取る報酬(媒介)
即算式に従って計算すると、
10,000万×3%+6万=306万円
となる(報酬額告示第二)。
宅建業者Bは、消費税免税業者である。この場合、みなし仕入率を適用して4%を加算することができる。
306万×1.04=318.24万円
これがAがCから受領する報酬の限度額である。
(2)売主Aから受け取る報酬(代理)
媒介の場合の2倍を受領することができる(報酬額告示第三)。すなわち、
318.24万×2=636.48万円
これが売主Aから受領する報酬の限度額である。
(3)売主A・買主Cから受け取る報酬の合計額
売主A・買主Cの双方から報酬を受領する場合でも、その合計は媒介の場合の報酬限度額の2倍(=代理の場合の報酬限度額)を超えることができない(報酬額告示第三)。
本問の場合でいえば、売主Aと買主Cから受領する報酬の合計を636.48万円の範囲に収める必要がある。
まとめ
宅建業者Bは、(1)~(3)という3つの規制をクリアする必要がある。
しかし、本肢での受領額は、(3)を超えてしまっている。したがって、宅建業法に違反する。
限度額 | 本肢での受領額 | 宅建業法では | |
(1)買主Cから受け取る報酬(媒介) | 318.24万 | 300万 | OK |
(2)売主Aから受け取る報酬(代理) | 636.48万 | 600万 | OK |
(3)売主A・買主Cから受け取る報酬の合計額 | 636.48万 | 900万 | NG |
※報酬の限度額の規定は、業者間取引にも同様に適用される(宅建業法46条・78条2項)。業者間取引であることを考慮する必要はない。
3 誤り
宅建業者間の取引に関しては、クーリング・オフの適用はない(宅建業法37条の2、78条2項)。
したがって、事務所等以外の場所において当該契約を締結したとしても、クーリング・オフの対象とはならない。
■参照項目&類似過去問
内容を見る[共通の設定]
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として宅地建物取引業者である買主Cとの間で宅地又は建物の売買契約を締結した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R04-38-2 | 買受けの申込みをした者が宅地建物取引業者であった場合、クーリング・オフについて告げられていなくても、申込みを行った日から起算して8日を経過するまでは、書面により買受けの申込みの撤回をすることができる。 | × |
2 | H14-45-3 | Cは、建物の物件の説明をAの事務所で受けた。後日、Aの事務所近くの喫茶店で買受けを申し込むとともに売買契約を締結した場合、Cは法第37条の2の規定に基づき、売買契約を解除することができる。 | × |
3 | H08-48-4 | 宅地建物取引業者でないAが、A所有のマンションを宅地建物取引業者Bの媒介により宅地建物取引業者Cに売却し、その後Cが宅地建物取引業者Dに転売する。AC間及びCD間のそれぞれの売買契約において、「契約締結日から5日間に限り損害賠償又は違約金の支払いをすることなく契約を解除することができる」旨の特約をしても、宅地建物取引業法に違反しない。 | ◯ |
4 | H07-42-3 | Cは、宅地建物取引業法第37条の2に規定する事務所等以外の場所において当該契約を締結したときは、同条の規定により契約を解除できる。 | × |
5 | H05-41-1 | AC間の売買契約の締結が現地近くの喫茶店で行われても、Cは、当該契約を解除することができない。 | ◯ |
6 | H04-45-4 | AがCを現地に案内したところ、Cが即座に購入を決め、近くの料理屋で土地の売買契約を締結した場合、翌日Cの意思が変わっても、Cは、当該契約を法第37条の2の規定に基づいて解除することができない。 | ◯ |
4 正しい
業者間取引に関しては、手付の額の制限の規定は適用されない(宅建業法39条1項、78条2項)。
そのため、代金の3/10である3,000万円の手付金を受領しても、宅建業法に違反しない。
また、業者間取引に関しては、手付金等の保全措置の規定は適用されない(宅建業法41条、41条の2、78条2項)。
したがって、手付金等の保全のための措置を講ずる必要はない。
■参照項目&類似過去問
内容を見る[共通の設定]
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として宅地建物取引業者である買主Cとの間で宅地又は建物の売買契約を締結した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02-42-3 | Aが宅地建物取引業者Cとの間で造成工事の完了後に締結する宅地(代金3,000万円)の売買契約においては、Aは、法第41条の2に定める手付金等の保全措置を講じないで、当該宅地の引渡し前に手付金800万円を受領することができる。 | ◯ |
2 | H26-33-1 | 【建築工事完了前の建物(代金5,000万円)】 Aは、保全措置を講じずに、Cから手付金として1,000万円を受領した。 | ◯ |
3 | H20-41-4 | Aは、Cとの間で建築工事が完了した建物を1億円で販売する契約を締結し、法第41条の2に規定する手付金等の保全措置を講じずに、当該建物の引渡し前に2,500万円を手付金として受領することができる。 | ◯ |
4 | H18-38-1 | AはCと売買契約を締結し、代金の額の10分の3の金額を手付として受領した。 | ◯ |
5 | H16-40-3 | 宅地建物取引業者Aが自ら完成前の物件の売主となり、宅地建物取引業者Cに売却する場合、法第39条に基づく手付の額の制限等に関する規定が適用される。 | × |
6 | H13-42-1 | AがCから受け取る手付金の額が売買代金の2割を超える場合には、その手付金について宅地建物取引業法第41条又は第41条の2の規定による手付金等の保全措置を講じなければならない。 | × |
7 | H07-42-4 | 【造成工事完了前の宅地(代金1億円)】 Aは、Cから手付金3,000万円を受け取るときは、宅地建物取引業法第41条の規定に基づく手付金等の保全のための措置を講ずる必要はない。 | ◯ |
8 | H01-48-2 | 【宅地(代金6,000万円)】 宅地建物取引業者である買主Cが本件物件を掘出し物と考えて、契約の拘束力を高めるため、自ら手付金を3,000万円とする申し出を行った場合、Aがこの手付金を受領しても、宅地建物取引業法違反とはならない。 | ◯ |
[共通の設定]
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として宅地建物取引業者である買主Cとの間で宅地又は建物の売買契約を締結した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02-42-3 | Aが宅地建物取引業者Cとの間で造成工事の完了後に締結する宅地(代金3,000万円)の売買契約においては、Aは、法第41条の2に定める手付金等の保全措置を講じないで、当該宅地の引渡し前に手付金800万円を受領することができる。 | ◯ |
2 | H26-33-1 | 【建築工事完了前の建物(代金5,000万円)】 Aは、保全措置を講じずに、宅地建物取引業者であるCから手付金として1,000万円を受領した。 | ◯ |
3 | H25-40-3 | Aは、宅地建物取引業者である買主Cとの間で建築工事完了前の建物を5,000万円で売却する契約を締結した場合、保全措置を講じずに、当該建物の引渡前に500万円を手付金として受領することができる。 | ◯ |
4 | H20-41-4 | Aは、Cとの間で建築工事が完了した建物を1億円で販売する契約を締結し、法第41条の2に規定する手付金等の保全措置を講じずに、当該建物の引渡し前に2,500万円を手付金として受領することができる。 | ◯ |
5 | H16-40-4 | 宅地建物取引業者Aが自ら完成前の物件の売主となり、宅地建物取引業者Bに売却する場合、法第41条に基づく手付金等の保全措置に関する規定が適用される。 | × |
6 | H13-42-1 | AがCから受け取る手付金の額が売買代金の2割を超える場合には、その手付金について宅地建物取引業法第41条又は第41条の2の規定による手付金等の保全措置を講じなければならない。 | × |
7 | H07-42-4 | 【造成工事完了前の宅地(代金1億円)】 Aは、Cから手付金3,000万円を受け取るときは、宅地建物取引業法第41条の規定に基づく手付金等の保全のための措置を講ずる必要はない。 | ◯ |
8 | H06-44-4 | 宅地建物取引業者Aが自ら売主となって造成工事完了前の宅地を買主Bに分譲する契約(価額5,000万円、手付金1,000万円)を令和X年10月1日締結した。Aが同年10月1日手付金を受領する際、手付金等の保全措置を講じなかった場合において、Bが宅地建物取引業者であるとき、宅地建物取引業法の規定に違反しない。 | ◯ |
9 | H01-42-4 | 【マンション(代金1億2,000万円、手付金1,500万円、中間金4,500万円、残代金6,000万円)】 Cが宅地建物取引業者である場合、物件の建築工事完了前に契約を締結し、その引渡し及び登記の移転を中間金の支払いと同時に行うときは、Aは、手付金を受け取る前に、手付金等の保全措置を講じなければならない。 | × |
YouTubeメンバーシップを使った宅建合格作戦
メンバーの種類(レベル)は、
- 「年度別過去問」(月額1,790円)
- 「基本習得編&年度別過去問 」(月額2,390円)
- 「スリー・ステップ オールインワン 」(月額3,590円)
自分の学習状況に合わせて「レベル」を選択すれば、サブスクリプション方式で効率的に勉強が進められます。
設問2において、非課税業者でもみなし仕入れ率4%が認められるので、612万×1.04%=\6,364,800が受領できる報酬限度額ではないでしょうか?
田中様
返信が遅くなって申し訳ありません。
肢2の解説について、(1)消費税の免税業者である点を考慮し、さらに(2)解説の書き方を現在のものに合わせました。
平成07年の頃よりはだいぶ丁寧で、読みやすくなっています(自画自賛)。
肢2の解説で
306万×1.04=318.24万円
これがAがCから受領する報酬の限度額である。
ここのAは宅建業者Bの間違いかと思います。