【宅建過去問】(令和02年12月問12)借地借家法(借家)
賃貸人Aと賃借人Bとの間で締結した居住用建物の賃貸借契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。
- 当該建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらずAが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは自ら修繕をすることができる。
- BがAに無断でCに当該建物を転貸した場合であっても、Aに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除することができない。
- 賃貸借契約に期間を定め、賃貸借契約を書面によって行った場合には、AがBに対しあらかじめ契約の更新がない旨を説明していれば、賃貸借契約は期間満了により終了する。
- Bが相続人なしに死亡した場合、Bと婚姻の届出をしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Dは、Bが相続人なしに死亡したことを知った後1月以内にAに反対の意思表示をしない限り、賃借人としてのBの権利義務を承継する。
正解:3
1 正しい
以下のケースでは、賃借人が賃借物の修繕をすることができます(民法607条の2)。
- 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知or賃貸人がその旨を知った
→賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき - 急迫の事情があるとき
※賃借物の修繕は、基本的には、賃貸人の義務です(民法606条1項)。賃借人による修繕は、賃貸人が修繕しなかったり、賃貸人による修繕を待つ余裕がない場合の例外的な措置といえます。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
賃貸物の修繕(民法[26]4(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
①賃貸人による修繕 | |||
1 | R05-09-3 | Bの責めに帰すべき事由によって甲建物の修繕が必要となった場合は、Aは甲建物を修繕する義務を負わない。 | ◯ |
2 | R04-08-1 | AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、地上権である場合でも賃借権である場合でも、特約がなくても、BはAに対して、甲土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。 | × |
3 | H25-08-3 | 建物の賃貸人が必要な修繕義務を履行しない場合、賃借人は目的物の使用収益に関係なく賃料全額の支払を拒絶することができる。 | × |
4 | H25-08-4 | 建物の賃貸人が賃貸物の保存に必要な修繕をする場合、賃借人は修繕工事のため使用収益に支障が生じても、これを拒むことはできない。 | ◯ |
5 | H17-15-2 | 賃貸人と賃借人との間で別段の合意をしない限り、動産の賃貸借契約の賃貸人は、賃貸物の使用収益に必要な修繕を行う義務を負うが、建物の賃貸借契約の賃貸人は、そのような修繕を行う義務を負わない。 | × |
6 | H01-06-1 | Aは、自己所有の建物をBに賃貸した。建物が老朽化してきたため、Aが建物の保存のために必要な修繕をする場合、Bは、Aの修繕行為を拒むことはできない。 | ◯ |
②賃借人による修繕 | |||
1 | R05-09-1 | 甲建物の修繕が必要であることを、Aが知ったにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。 | ◯ |
2 | R05-09-2 | 甲建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、Aが必要な修繕を直ちにしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。 | × |
3 | R05-09-4 | 甲建物の修繕が必要である場合において、急迫の事情があるときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。 | ◯ |
4 | R02s-12-1 | 賃貸借の目的物である建物の修繕が必要である場合において、賃借人Bが賃貸人Aに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらずAが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは自ら修繕をすることができる。 | ◯ |
2 正しい
無断転貸があった場合でも、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人が賃貸借を解除することはできません(民法612条2項。最判昭28.09.25)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
無断譲渡・転貸の禁止(民法[26]5(2))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R04-06-2 | Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合について考える。Bは、①ではAの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできないが、②ではAの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる。 | ◯ |
2 | R04-08-2 | AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合について考える。CがBに無断でAから当該権原を譲り受け、甲土地を使用しているときは、①でも②でも、BはCに対して、甲土地の明渡しを請求することができる。 | ◯ |
3 | R03s-09-2 | AがBに対してA所有の甲建物を①売却又は②賃貸した。①ではBはAの承諾を得ずにCに甲建物を賃貸することができ、②ではBはAの承諾を得なければ甲建物をCに転貸することはできない。 | ◯ |
[共通の設定] A所有の甲建物につき、Bが賃貸借契約を締結している。 | |||
4 | R02s-12-2 | BがAに無断でCに当該建物を転貸した場合であっても、Aに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除することができない。 | ◯ |
5 | H27-09-2 | 賃貸人が転貸借について承諾を与えた場合には、賃貸人は、断転貸を理由としては賃貸借契約を解除することはできないが、賃借人と賃貸借契約を合意解除することは可能である。 | ◯ |
6 | H27-09-3 | 土地の賃借人が無断転貸した場合、賃貸人は、賃貸借契約を民法第612条第2項により解除できる場合とできない場合があり、土地の賃借人が賃料を支払わない場合にも、賃貸人において法定解除権を行使できる場合とできない場合がある。 | ◯ |
7 | H25-11-1 | BがAに断で甲建物をCに転貸した場合には、転貸の事情のいかんにかかわらず、AはAB間の賃貸借契約を解除することができる。 | × |
8 | H21-12-1 | BがAに無断で甲建物を転貸しても、Aに対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除できない。 | ◯ |
9 | H18-10-1 | AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない。 | ◯ |
10 | H06-12-1 | AC間の転貸借がBの承諾を得ていない場合でも、その転貸借がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Bの解除権は発生しない。 | ◯ |
3 誤り
「契約の更新がない」「賃貸借契約は期間満了により終了」という言葉から、賃貸人が定期建物賃貸借契約を締結しようとしていることが分かります.
定期建物賃貸借契約の成立要件は、以下の通りです(借地借家法38条)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
定期建物賃貸借契約の成立(書面による契約)(借地借家法[07]1(2)②)
定期建物賃貸借契約の成立(事前説明)(借地借家法[07]1(2)③)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R04-12-1 | Aは、B所有の甲建物につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。BはAに対して、本件契約締結前に、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した賃貸借契約書を交付して説明すれば、本件契約を借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約として締結することができる。 | × |
2 | R02s-12-3 | 賃貸人Aと賃借人Bとの間で居住用建物の賃貸借契約を締結した。賃貸借契約に期間を定め、賃貸借契約を書面によって行った場合には、AがBに対しあらかじめ契約の更新がない旨を説明していれば、賃貸借契約は期間満了により終了する。 | × |
3 | R01-12-1 | 建物の賃貸借契約について、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等書面によって契約すれば足りる。 | × |
4 | 26-12-1 | 定期建物賃貸借契約を締結するには、公正証書による等書面によらなければならない。 | ◯ |
5 | 24-12-3 | 定期建物賃貸借契約では、更新がない旨の特約を記載した書面を契約に先立って賃借人に交付さえしておけば当該特約は有効となる。 | × |
6 | 19-14-1 | 定期建物賃貸借契約は書面によって契約しなければ有効とならない。 | ◯ |
7 | 18-13-3 | 20年後に賃貸借契約を更新させずに終了させるという建物賃貸借契約が可能である。 | ◯ |
8 | 15-14-2 | 定期建物賃貸借契約は、公正証書でしなければ、無効である。 | × |
9 | 07-13-2 | 定期建物賃貸借契約は、公正証書でしなければならない。 | × |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R04-12-1 | Aは、B所有の甲建物につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。BはAに対して、本件契約締結前に、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した賃貸借契約書を交付して説明すれば、本件契約を借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約として締結することができる。 | × |
2 | R02s-12-3 | 賃貸人Aと賃借人Bとの間で居住用建物の賃貸借契約を締結した。賃貸借契約に期間を定め、賃貸借契約を書面によって行った場合には、AがBに対しあらかじめ契約の更新がない旨を説明していれば、賃貸借契約は期間満了により終了する。 | × |
3 | R01-12-1 | 建物の賃貸借契約について、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等書面によって契約すれば足りる。 | × |
4 | H29-12-4 | 賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借で、契約の更新がない旨を定めるものである場合、当該契約前に賃貸人が賃借人に契約の更新がなく期間の満了により終了する旨を記載した書面を交付して説明しなければ、契約の更新がない旨の約定は無効となる。 | ◯ |
5 | H26-12-3 | 定期建物賃貸借契約につき、契約書と同じ書面内に記載して説明すれば足りる。 | × |
6 | H26-12-4 | 定期建物賃貸借契約につき説明しなかったときは、契約の更新がない旨の定めは無効となる。 | ◯ |
7 | H24-12-3 | 定期建物賃貸借契約につき、書面を交付さえすれば特約は有効。 | × |
8 | H20-14-2 | 公正証書で契約を締結すれば、書面の交付・説明の必要はない。 | × |
9 | H15-14-3 | 定期建物賃貸借契約を締結する場合、書面の交付・説明が必要である。 | ◯ |
4 正しい
居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合、賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者が、建物の賃借人の権利義務を承継します(借地借家法36条1項本文)。本肢のDは、事実上の夫婦に該当するので、Bの賃借人としての権利義務を承継します。
Dが、賃貸借を承継したくないときは、Bが相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に、建物の賃貸人Aに対して、反対の意思を表示する必要があります(同項ただし書き)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
居住用建物の賃貸借の承継(借地借家法[06]6)
[共通の設定]
Aは、所有する甲建物をBに賃貸している。
[共通の設定]
Aは、所有する甲建物をBに賃貸している。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-12-4 | Bが相続人なしに死亡した場合、Bと婚姻の届出をしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Cは、Bが相続人なしに死亡したことを知った後1月以内にAに反対の意思表示をしない限り、賃借人としてのBの権利義務を承継する。 | ◯ |
2 | H11-14-2 | Bが死亡した場合で、その当時Bの相続人でない事実上の配偶者Cがこの建物で同居していたとき、Cは、当該建物の賃借権に限っては、相続人に優先してBの賃借人としての地位を承継する。 | × |
3 | H07-13-3 | Aを賃貸人、Bを賃借人とするA所有の居住用建物の賃貸借に関し、AとBとC(Bと同居する内縁の妻)の三者で「Bが相続人なくして死亡したときでも、Cは借家権を承継することができない」と定めた場合、その特約は、無効である。 | × |
4 | H02-13-4 | Bが相続人なくして死亡した場合、Bと事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Cは、その事実を知った後1月内にAに対し特段の意思表示をしないときは、BのAに対する権利義務を承継する。 | ◯ |
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- [Step.3]過去演習編で「四択問題」の解決法を学ぶ。
この3段階で、着実に合格レベルに進むことができます。
分かりやすい図解いつもありがとうございます。
3問目について質問です。
あらかじめ契約更新がない旨を説明していればと問題にあったので、あらかじめ=事前と判断して◯にしました。解説読んで理解はしたもの他の問題集では回答で契約の更新がなく、書面を交付して説明しなければならないと漠然とかいてあり、問題が誤りになる理由が理解出来てるような出来ていないような感じになっています。
なにか補足説明頂けると助かります。
よろしくお願いします。
定期建物賃貸借契約を成立させるためには、以下の要件を満たす必要があります。
しかし、この問題の肢3では、
「AがBに対しあらかじめ契約の更新がない旨を説明していれば」
とあるだけです。
説明に当たって、書面を交付しているかどうか、明らかではありません。
それにもかかわらず、本肢は、定期建物賃貸借が成立したと決め付け、「賃貸借契約は期間満了により終了する」と結論付けています。
定期建物賃貸借が成立していなければ、期間満了時に「更新」の問題が生じます。「期間満了により終了する」わけではないので、本肢は誤りです。
この点に関する詳しい講義は、以下の箇所にあります。
この機会に、[Step.1]基本習得編→[Step.2]一問一答式演習編の順で、見直しておきましょう(1.5倍速や2倍速でも構いません)。
■借地借家法[07]定期建物賃貸借
1.定期建物賃貸借
(2).定期建物賃貸借契約の成立
残念ですが、「他の問題集」にどのような記述があり、それがどのような意図に基づくのか、当社では知ることができません。
内容について質問をいただいても、責任を持った回答をすることができないのです。
「他の問題集」については、その問題集の著者さん又は出版社さんに質問するほうが、速く確実な回答が得られると思います。