【宅建過去問】(令和04年問21)農地法

農地に関する次の記述のうち、農地法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 農地の賃貸借及び使用貸借は、その登記がなくても農地の引渡しがあったときは、これをもってその後にその農地について所有権を取得した第三者に対抗することができる。
  2. 法第2条第3項の農地所有適格法人の要件を満たしていない株式会社は、耕作目的で農地を借り入れることはできない。
  3. 法第4条第1項、第5条第1項の違反について原状回復等の措置に係る命令の対象となる者(違反転用者等)には、当該規定に違反した者又はその一般承継人は含まれるが、当該違反に係る土地について工事を請け負った者は含まれない。
  4. 法の適用については、土地の面積は、登記簿の地積によることとしているが、登記簿の地積が著しく事実と相違する場合及び登記簿の地積がない場合には、実測に基づき農業委員会が認定したところによる。

正解:4

1 誤り

3条許可の必要性

賃貸借とは、賃料を払って他人の物を借りること(民法[26])をいい、使用貸借とは、賃料を支払わずに(タダで)他人の物を借りること(民法[27])です。
賃貸借契約で賃借権を設定する場合はもちろん、使用貸借契約を締結して使用借権を設定する場合にも、農地法3条の許可を受ける必要があります。

対抗要件

農地の賃貸借と使用貸借のうち、賃貸借については、賃借権の登記がない場合でも、引渡しが対抗要件となります(農地法16条)。つまり、農地の賃借人は、農地の引渡しさえ受けていれば、登記がなくても、その後に農地の所有権を取得した者に対して、賃借権を対抗することができます。

しかし、使用貸借については、農地法は、特別な対抗要件を認めていません。

※使用借権については、登記をすることも不可能です。つまり、対抗要件を備えることができないため、貸主がその農地を売却してしまえば、借主は、その買主に対して使用借権を主張する方法がありません。他人の農地をタダで使っているのですから、その程度の保護で十分、ということなのでしょう。

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農地の賃貸借(農地法[なし])
年-問-肢内容正誤
1R04-21-3農地の賃貸借及び使用貸借は、その登記がなくても農地の引渡しがあったときは、これをもってその後にその農地について所有権を取得した第三者に対抗することができる。×
2R03s-21-2農地の賃貸借の解除については、農地の所有者が、賃借人に対して一方的に解約の申入れを行う場合には、農地法第18条第1項の許可を受ける必要がない。×
3H25-21-1農地の賃貸借について法第3条第1項の許可を得て農地の引渡しを受けても、土地登記簿に登記をしなかった場合、その後、その農地について所有権を取得した第三者に対抗することができない。×
4
H22-22-4賃貸借の存続期間については、民法上は50年を超えることができないこととされているが、農地の賃貸借についても、50年までの存続期間が認められる。

2 誤り

農地所有適格法人(農地法2条3項)以外の法人が、農地を所有することはできません。
しかし、農地を借り入れるだけであれば、話は別です。農地所有適格法人以外の法人であっても要件を満たせば農地を借り入れることが可能です。

平成30年問22肢3平成28年問22肢2に続いて、一字一句同じ選択肢が3度目の出題です。

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法人による農地の利用(農地法[01]4)
年-問-肢内容正誤
1R05-21-4社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人(社会福祉法人)が、農地をその目的に係る業務の運営に必要な施設の用に供すると認められる場合、農地所有適格法人でなくても、農業委員会の許可を得て、農地の所有権を取得することができる。
2R04-21-2法第2条第3項の農地所有適格法人の要件を満たしていない株式会社は、耕作目的で農地を借り入れることはできない。×
3H30-22-3法第2条第3項の農地所有適格法人の要件を満たしていない株式会社は、耕作目的で農地を借り入れることはできない。×
4H28-22-2法第2条第3項の農地所有適格法人の要件を満たしていない株式会社は、耕作目的で農地を借り入れることはできない。×

3 誤り

知事等は、農地法4条1項や5条1項の許可なしに農地を転用した者に対して、原状回復などの是正措置を命ずることができます(農地法51条1項)。具体的な対象者(違反転用者等)は、以下の者です。

  1. 4条・5条違反者orその一般承継人
  2. 工事を請け負った者orその下請人
  3. 不正の手段により許可を受けた者
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違反転用に対する処分(農地法[03]3農地法[04]3
年-問-肢内容正誤
1R04-21-3法第4条第1項、第5条第1項の違反について原状回復等の措置に係る命令の対象となる者(違反転用者等)には、当該規定に違反した者又はその一般承継人は含まれるが、当該違反に係る土地について工事を請け負った者は含まれない。×
2H21-22-4都道府県知事等は、法第5条第1項の許可を要する農地取得について、その許可を受けずに農地の転用を行った者に対して、必要な限度において原状回復を命ずることができる。
3H14-23-4都道府県知事等は、農地法第5条の許可を要する転用について、その許可を受けずに転用を行った者に対して、原状回復を命ずることができる。

4 正しい

農地法の適用については、土地の面積として、登記簿の地積を使います。ただし、登記簿上の地積が著しく事実と相違する場合や登記簿の地積がない場合は、実測に基づき農業委員会が認定した面積が基準になります(同法56条)。


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