【宅建過去問】(令和05年問07)配偶者居住権
甲建物を所有するAが死亡し、Aの配偶者Bが甲建物の配偶者居住権を、Aの子Cが甲建物の所有権をそれぞれ取得する旨の遺産分割協議が成立した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 遺産分割協議において、Bの配偶者居住権の存続期間が定められなかった場合、配偶者居住権の存続期間は20年となる。
- Bが高齢となり、バリアフリーのマンションに転居するための資金が必要になった場合、Bは、Cの承諾を得ずに甲建物を第三者Dに賃貸することができる。
- Cには、Bに対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務がある。
- Cは、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。
正解:3
設定の確認
甲建物を所有するAが死亡し、Aの配偶者Bが甲建物の配偶者居住権を、Aの子Cが甲建物の所有権をそれぞれ取得する旨の遺産分割協議が成立した
■参照項目&類似過去問(全選択肢合わせて)
内容を見る[共通の設定]
被相続人Aの配偶者Bが、A所有の建物に相続開始の時に居住していたため、遺産分割協議によって配偶者居住権を取得した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
①配偶者居住権とは | |||
1 | R05-07-2 | Bが高齢となり、バリアフリーのマンションに転居するための資金が必要になった場合、Bは、Cの承諾を得ずに甲建物を第三者Dに賃貸することができる。 | × |
2 | R03-04-2 | Bは、配偶者居住権の存続期間内であれば、居住している建物の所有者の承諾を得ることなく、第三者に当該建物を賃貸することができる。 | × |
③存続期間 | |||
1 | R05-07-1 | 遺産分割協議において、Bの配偶者居住権の存続期間が定められなかった場合、配偶者居住権の存続期間は20年となる。 | × |
2 | R03-04-1 | 遺産分割協議でBの配偶者居住権の存続期間を20年と定めた場合、存続期間が満了した時点で配偶者居住権は消滅し、配偶者居住権の延長や更新はできない。 | ◯ |
3 | R03-04-3 | 配偶者居住権の存続期間中にBが死亡した場合、Bの相続人CはBの有していた配偶者居住権を相続する。 | × |
④対抗要件 | |||
1 | R05-07-3 | Cには、Bに対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務がある。 | ◯ |
2 | R03-04-4 | Bが配偶者居住権に基づいて居住している建物が第三者Dに売却された場合、Bは、配偶者居住権の登記がなくてもDに対抗することができる。 | × |
3 | R02-14-4 | 配偶者居住権は、登記することができる権利に含まれない。 | × |
⑤費用負担 | |||
1 | R05-07-4 | Cは、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。 | × |
1 誤り
配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間です(民法1030条本文)とする。ただし、遺産分割協議や遺言に別段の定めがあったり、家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めに従います(同条ただし書き)。
本肢では、遺産分割協議において、「配偶者居住権の存続期間が定められなかった」わけです。したがって、原則通り、配偶者居住権は、終身の間継続します。「存続期間は20年」となるわけではありません。
2 誤り
配偶者居住権は、配偶者が居住建物の全部について無償で使用収益する権利です。したがって、配偶者が居住建物を第三者(図のD)に賃貸することも可能です。ただし、居住建物を第三者に使用・収益させる場合には、居住建物の所有者の承諾を得る必要があります(民法1032条3項)。
3 正しい
配偶者居住権は登記可能な権利であり(不動産登記法3条9号)、配偶者居住権を登記すれば、配偶者は、その権利を第三者(図のE)に対抗することができます(民法1031条2項、605条)。
居住建物の所有者Cは、配偶者Bに対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います(同法1031条1項)。
4 誤り
配偶者Bは、居住建物の通常の必要費を負担します(民法1034条1項)。
居住建物の所有者Cが負担するわけではありません。