【宅建過去問】(平成05年問10)抵当権と借地権

AがBから土地を賃借して、建物を建て、その登記をした後、その建物にCの抵当権を設定して、登記をしたが、Aが弁済期に履行しなかったので、Cが抵当権を実行して、Dがその建物を競落した。この場合、民法及び借地借家法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。

  1. Cは、抵当権を実行する際、A及びBに通知しなければならない。
  2. Dは、競落により建物を取得したのであるから、土地の賃借権も当然に取得し、Bに対抗することができる。
  3. Dは、土地の賃借権の譲渡についてBの承諾を得なければならず、Bが承諾しないときは、Bに対抗する手段がない。
  4. BがDの土地の賃借権の譲渡を承諾しないときは、Dは、Bに対しその建物を時価で買い取るよう請求することができる。

正解:4

登場人物が多いので、図にまとめておく。
05-10-0

1 誤り

平成15年の法改正により、抵当権実行通知の制度は、廃止されている。したがって、Cは、通知の義務を負わない。

2 誤り

土地賃借人がその土地上に所有する建物について抵当権を設定した場合、原則として、抵当権の効力はその土地の賃借権に及ぶ(民法370条。最判昭40.05.04)。したがって、競売により、借地上の建物の所有権が移転すると、借地権も移転したことになる。ここで、借地権が土地の賃借権である場合、借地権の譲渡には、土地賃貸人の承諾が必要である(同法612条1項)。
本肢では、土地賃貸人Bの承諾がない限り、買受人Dは、借地権をBに対抗することができない。「土地の賃借権を当然に取得」できるわけではない。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
借地上の建物の譲渡(民法[26]5(1)③(a))
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
甲土地所有者AがBと締結した建物所有を目的とする賃貸借契約に基づいて、Bが甲土地上に乙建物を所有している。
117-13-1乙建物が登記されている場合には、BがCと当該建物を譲渡する旨の合意をすれば、Aの承諾の有無にかかわらず、CはAに対して甲土地の借地権を主張できる。×
207-07-2Bがその建物をCに譲渡する場合、特別の事情のない限り、Bは、Cに対する敷地の賃借権譲渡についてAの承諾を得る必要がある。
305-10-2乙建物に設定した抵当権が実行され、Dが甲建物を競落した。Dは、競落により建物を取得したのであるから、土地の賃借権も当然に取得し、Aに対抗することができる。
×
競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可(借地借家法[03]4)
年-問-肢内容正誤
1H23-11-4建物競売時の借地権譲渡の許可は、競落した第三者が申立て可能。
2H09-11-3建物競売時の借地権譲渡の許可は、競落した第三者が申立て可能。
3H06-11-2建物競売時の借地権譲渡の許可は、代金支払後2カ月以内に限り可能。
4H05-10-2借地上の建物を抵当権の目的とした場合、競売により建物を取得した者は、土地の賃借権も当然に取得し、土地所有者に対抗することができる。×
5H05-10-3土地所有者の許可がない限り、対抗手段がない。×

3 誤り

(肢2参照)競売による買受人Dが、土地の賃借権の譲渡について賃貸人Bの承諾を受けられない場合、裁判所に申し立てて、借地権設定者の承諾に代わる許可を受けることができる(借地借家法20条1項)。
したがって、「Bに対抗する手段がない」わけではない。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可(借地借家法[03]4)
年-問-肢内容正誤
1H23-11-4建物競売時の借地権譲渡の許可は、競落した第三者が申立て可能。
2H09-11-3建物競売時の借地権譲渡の許可は、競落した第三者が申立て可能。
3H06-11-2建物競売時の借地権譲渡の許可は、代金支払後2カ月以内に限り可能。
4H05-10-2借地上の建物を抵当権の目的とした場合、競売により建物を取得した者は、土地の賃借権も当然に取得し、土地所有者に対抗することができる。×
5H05-10-3土地所有者の許可がない限り、対抗手段がない。×

4 正しい

第三者が賃借権の目的である土地の上の建物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物を時価で買い取るべきことを請求することが できる(借地借家法14条)。
本肢でいえば、借地権設定者Bが、建物の買受人Dに対する賃借権の譲渡を承諾しない場合、Dは、Bに対し、建物買取請求権を行使することができることになる。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
第三者の建物買取請求権(借地借家法[02]3)
年-問-肢内容正誤
1H06-11-3[AがBの土地を賃借して建てた建物の所有権が、Cに移転]Bが賃借権の譲渡を承諾しないときは、Cは、Bに対して、借地権の価額に建物の価額を加算した金額で、建物の買取りを請求することができる。×
2H06-11-4[AがBの土地を賃借して建てた建物の所有権が、Cに移転]CがBに対して買取請求権を行使した場合、Cは、その建物を使用していても、Bが買取代金を支払うまで建物の引渡しを拒むことができ、その間の地代相当額を不当利得として返還する必要はない。×
3H05-10-4[AがBから土地を賃借して、建物を建て、その登記をした後、その建物にCの抵当権を設定して、登記をしたが、Aが弁済期に履行しなかったので、Cが抵当権を実行して、Dがその建物を競落]BがDの土地の賃借権の譲渡を承諾しないときは、Dは、Bに対しその建物を時価で買い取るよう請求することができる。

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