【宅建過去問】(平成05年問11)借地借家法(借地)

AがBのために新たに借地権を設定した場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 借地権の存続期間は、契約で25年と定めようと、35年と定めようと、いずれの場合も30年となる。
  2. 「期間満了の際、AがBに対し相当の一定額の交付さえ行えば、Aは更新を拒絶できる」と特約してもその特約は、無効である。
  3. 「地代の増減は、A・Bの協議によって定める」と約定した場合、Aは、協議を尽くさなければ、地代の増減を請求することはできない。
  4. 「借地権の設定から30年経過後に、AがBの建物を時価で買い取り、契約は更新しない」と特約しても、その特約は、無効である。

正解:2

1 誤り

借地権の存続期間は、30年であるが、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とされる(借地借家法3条)。この規定よりも、借地権者に不利な特約は無効である(同法9条)。
したがって、借地権の存続期間を25年と定めた場合は、借地権者に不利な特約であるため、その定めは無効であり、法の原則通り、存続期間は30年となる。
一方、存続期間を35年と定めた場合、借地権者に有利な特約であるから、その定めは有効である。30年となるわけではない。

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借地権の存続期間(当初の存続期間)(借地借家法[01]2(1))
年-問-肢内容正誤
1R01-11-2賃貸借契約が建物の所有を目的とする場合、公正証書で契約を締結しなければ、ケース①(期間50年)の期間は30年となり、ケース②(期間15年)の期間は15年となる。
×
2H30-11-2[AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約が居住用の建物の所有を目的とする場合には、借地権の存続期間を20年とし、かつ、契約の更新請求をしない旨を定めても、これらの規定は無効となる。
3H30-11-3[AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約において借地権の存続期間を60年と定めても、公正証書によらなければ、その期間は30年となる。
×
4H29-11-2賃借権の存続期間を10年と定めた場合、賃貸借契約が居住の用に供する建物を所有することを目的とするものであるときは存続期間が30年となる。
5H26-11-1存続期間40年と定めた場合、書面で契約を締結しなければ期間が30年となる。×
6H26-11-3期間を定めない契約を締結した場合、賃貸人が解約の申入れをしても合意がなければ契約は終了しない。
7H20-13-1建物所有目的の賃貸借契約において、賃貸借契約の期間の上限は50年である。×
8H20-13-3期間の定めがない場合、貸主は、契約開始から30年過ぎなければ、解約の申入れができない。
9H19-13-4期間の定めがない場合、貸主は、正当事由があればいつでも解約申入れできる。×
10H18-13-1小売業を行う目的で公正証書によらず賃貸借契約を締結した場合、存続期間35年という約定は有効である。
11H07-12-1期間の定めがない場合、堅固な建物については30年、非堅固な建物は20年となる。×
12H05-11-1存続期間を25年・35年のいずれと定めようと、契約期間は30年となる。×
13H01-12-1存続期間を10年と定めた場合、その約定はなかったものとみなされ、契約期間は20年となる。×

2 正しい

借地権設定者の更新拒絶に正当な事由があるかどうかは、以下の3点から判断される(借地借家法6条)。

  1. 借地権設定者・借地権者が土地の使用を必要とする事情
  2. 借地に関する従前の経過及び土地の利用状 況
  3. 借地権設定者が申し出た立退料

「一定の立退料を交付すれば更新を拒絶できる」という特約は、法の規定よりも借地権者にとって不利であるため、無効となる。

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契約の法定更新(借地借家法[01]3)
年-問-肢内容正誤
1R05-11-4本件契約が借地権者の居住のための建物を所有する目的であり契約の更新がない旨を定めていない契約であって、期間満了する場合において甲土地上に建物があり、借地権者が契約の更新を請求したとしても、借地権設定者が遅滞なく異議を述べ、その異議に更新を拒絶する正当な事由があると認められる場合は、本件契約は更新されない。
2R03s-11-2借地権の存続期間が満了する場合、借地権者が契約の更新を請求したとき、その土地上に建物が存在する限り、借地権設定者は異議を述べることができない。×
3H25-12-2借地権の存続期間が満了する際、借地権者の更新請求に対し、借地権設定者が遅滞なく異議を述べた場合には、借地契約は当然に終了する。×
4H21-11-2当初の存続期間満了時に、借地権者が更新請求し、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べたとしても、異議の理由にかかわらず、借地契約を更新したものとみなされる。×
5H20-13-2存続期間満了後に、借地権者が土地使用を継続した場合、契約更新とみなされることがある。
6H19-13-3存続期間が満了した場合でも、借地権者が、建物収去・土地明渡しを請求できない場合がある。
7H10-11-2存続期間満了時に借地権者が更新を請求し、借地権設定者が異議を述べたがその異議に正当事由がない場合、契約は更新され、その存続期間は30年である。×
8H05-11-2「期間満了の際、借地権者に対し相当の一定額の交付さえ行えば、借地権設定者は更新を拒絶できる」と特約してもその特約は、無効である。
9H04-10-2当初の存続期間内に、建物が滅失し再築しない場合、期間満了時に、借地権者が更新請求しても、借地権設定者が異議を述べたときは、契約は更新されない。
10H04-10-3存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、借地権設定者が異議を述べなければ、期間の定めのない借地権が設定されたとみなされる。×
11H01-12-2存続期間満了時に、借地権者が更新請求し、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べなければ、前の契約と同一条件で更新したものとみなされる。
12H01-12-3存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べなければ、前の契約と同一条件で更新したものとみなされる。
強行規定(借地借家法[01]5)
年-問-肢内容正誤
1R04-11-3借地上の建物が滅失し、借地権設定者の承諾を得て借地権者が新たに建物を築造するに当たり、借地権設定者が存続期間満了の際における借地の返還確保の目的で、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨の特約を借地権者と結んだとしても、この特約は無効である。
2H21-11-4借地権の当初の存続期間が満了し借地契約を更新する場合において、当事者間でその期間を更新の日から10年と定めたときは、その定めは効力を生じず、更新後の存続期間は更新の日から20年となる。
3H05-11-2「期間満了の際、借地権設定者Aが借地権者Bに対し相当の一定額の交付さえ行えば、Aは更新を拒絶できる」と特約してもその特約は、無効である。

3 誤り

地代増減請求権は、「契約の条件にかかわらず」行使できる権利である(借地借家法11条1項)。したがって、「協議で定める」旨を特約しても、その特約は無効である。
判例(最判昭56.04.20)も、旧借地法12条1項(借地借家法11条1項に相当)を強行規定であり、当事者が協議して定める旨の合意があったとしても、適用を排除することはできないとしている。したがって、当事者は、協議を尽くさなくとも、さらには協議を経なくても、地代の増減を請求することができる。

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地代等増減請求権(借地借家法[02]2)
年-問-肢内容正誤
1R05-11-1本件契約に、当初の10年間は地代を減額しない旨の特約を定めた場合、その期間内は、BはAに対して地代の減額請求をすることはできない。×
2R02-11-2A所有の甲土地につき、Bとの間で居住の用に供する建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃貸借契約が締結された。本件契約で「一定期間は借賃の額の増減を行わない」旨を定めた場合には、甲土地の借賃が近傍類似の土地の借賃と比較して不相当となったときであっても、当該期間中は、AもBも借賃の増減を請求することができない。×
3H29-11-3土地賃貸借契約が建物所有を目的として存続期間60年とし、賃料につき3年ごとに1%ずつ増額する旨を公正証書で定めたものである場合、社会情勢の変化により賃料が不相当となったときであっても、賃貸人も賃借人も期間満了まで賃料の増減額請求をすることができない。×
4H25-12-1ゴルフ場経営を目的とする土地賃貸借契約については、対象となる全ての土地について地代等の増減額請求に関する借地借家法の規定が適用される。×
5H05-11-3 「地代の増減は、借地権設定者・借地権者の協議によって定める」と約定した場合、借地権設定者は、協議を尽くさなければ、地代の増減を請求することはできない。×
6H01-12-4当事者間で借賃の増額について協議が調わない場合、借地権者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める借賃を支払えばよい。

4 誤り

借地権設定後30年以上を経過した日に、建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めた契約を建物譲渡特約付借地権という(借地借家法24条1項)。
つまり、本肢の特約は有効である。

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建物譲渡特約付借地権(借地借家法[04]1(2)④)
年-問-肢内容正誤
1R03-11-3Aは、所有している甲土地につき、Bとの間で建物所有を目的とする賃貸借契約を締結する予定である。居住の用に供する建物を所有することを目的とする場合には、借地契約を書面で行えば、借地権を消滅させるため、借地権の設定から20年が経過した日に甲土地上の建物の所有権を相当の対価でBからAに移転する旨の特約を有効に定めることができる。×
212-11-1建物譲渡特約は、必ずしも公正証書によって締結する必要はない。
312-11-2建物譲渡特約が、当事者間の合意によらずに法定更新されることはない。
412-11-3建物譲渡により賃借人の借地権が消滅した場合で、賃借人がその建物に居住しているときは、直ちに、建物を明け渡さなければならず、賃借の継続を請求することはできない。×
512-11-4土地の賃借人から建物を賃借し、土地賃借人の借地権消滅後もそこに居住している建物賃借人が、土地の賃貸人に対して賃借の継続を請求したときは、一定の場合を除き、期間の定めのない建物賃貸借がされたものとみなされる。
605-11-4「借地権の設定から30年経過後に、借地権設定者が借地権者の建物を時価で買い取り、契約は更新しない」と特約しても、その特約は、無効である。×

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