【宅建過去問】(令和05年問11)借地借家法(借地)
AがBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で期間を50年とする賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結する場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 本件契約に、当初の10年間は地代を減額しない旨の特約を定めた場合、その期間内は、BはAに対して地代の減額請求をすることはできない。
- 本件契約が甲土地上で専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的である場合、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならない。
- 本件契約に建物買取請求権を排除する旨の特約が定められていない場合、本件契約が終了したときは、その終了事由のいかんにかかわらず、BはAに対してBが甲土地上に所有している建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
- 本件契約がBの居住のための建物を所有する目的であり契約の更新がない旨を定めていない契約であって、期間満了する場合において甲土地上に建物があり、Bが契約の更新を請求したとしても、Aが遅滞なく異議を述べ、その異議に更新を拒絶する正当な事由があると認められる場合は、本件契約は更新されない。
Contents
正解:4
設定の確認
AがBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で期間を50年とする賃貸借契約を締結する
1 誤り
地代等を増額しないという特約(不増額特約)は、有効です(借地借家法11条1項ただし書き)。しかし、地代等を減額しないという特約(不減額特約)は、たとえ定めたとしても無効です(同項本文)。
本肢では、「当初の10年間は地代を減額しない旨の特約」を定めています。
しかし、「減額しない」という特約をしても、それは無効です。
したがって、特約にかかわらず、Bは、地代の減額を請求することができます。
【参考】借家の借賃増減請求権に関する特約
借地ではなく、借家に関する話であれば、定期建物賃貸借に関しては、借賃の不減額特約をすることが可能です(借地借家法38条9項)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R05-11-1 | 本件契約に、当初の10年間は地代を減額しない旨の特約を定めた場合、その期間内は、BはAに対して地代の減額請求をすることはできない。 | × |
2 | R02-11-2 | A所有の甲土地につき、Bとの間で居住の用に供する建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃貸借契約が締結された。本件契約で「一定期間は借賃の額の増減を行わない」旨を定めた場合には、甲土地の借賃が近傍類似の土地の借賃と比較して不相当となったときであっても、当該期間中は、AもBも借賃の増減を請求することができない。 | × |
3 | H29-11-3 | 土地賃貸借契約が建物所有を目的として存続期間60年とし、賃料につき3年ごとに1%ずつ増額する旨を公正証書で定めたものである場合、社会情勢の変化により賃料が不相当となったときであっても、賃貸人も賃借人も期間満了まで賃料の増減額請求をすることができない。 | × |
4 | H25-12-1 | ゴルフ場経営を目的とする土地賃貸借契約については、対象となる全ての土地について地代等の増減額請求に関する借地借家法の規定が適用される。 | × |
5 | H05-11-3 | 「地代の増減は、借地権設定者・借地権者の協議によって定める」と約定した場合、借地権設定者は、協議を尽くさなければ、地代の増減を請求することはできない。 | × |
6 | H01-12-4 | 当事者間で借賃の増額について協議が調わない場合、借地権者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める借賃を支払えばよい。 | ◯ |
2 誤り
普通借地権・定期借地権
「契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定める」というのですから、定期借地権を設定する必要があります。定期借地権以外の借地権(普通借地権)では、このような特約をすることができません。
- 普通借地権=契約更新のある借地権
- 定期借地権=契約更新のない借地権
定期借地権の種類
Bは、甲土地上に「専ら賃貸アパート事業用の建物を所有」する目的を持っています。つまり、「居住用建物」を経営しようとしているわけです。
この場合、事業用定期借地権を設定することはできません。利用可能なのは、最低50年以上の期間を確保した一般定期借地権に限られます。
そして、一般定期借地権を設定する場合、書面で契約する必要があります(借地借家法22条1項。電磁的記録による契約も、書面による契約とみなされます)。この契約は「書面」によればいいのであって、「公正証書」であることまでは要求されていません。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R05-11-2 | 本件契約が甲土地上で専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的である場合、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならない。 | × |
2 | R03-11-1 | 事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。 | ◯ |
3 | R03-11-2 | 居住の用に供する建物を所有することを目的とする場合には、公正証書によって借地契約を締結するときであっても、期間を20年とし契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を借地契約に定めることはできない。 | ◯ |
4 | R01-11-3 | 賃貸借契約が居住の用に供する建物の所有を目的とする場合、期間を50年と定めたときは契約の更新がないことを書面で定めればその特約は有効であるが、期間を15年と定めたときは契約の更新がないことを書面で定めても無効であり、期間は30年となる。 | ◯ |
5 | R01-11-4 | 賃貸借契約が専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする場合、期間を50年と定めたときは契約の更新がないことを公正証書で定めた場合に限りその特約は有効であるが、期間を15年と定めたときは契約の更新がないことを公正証書で定めても無効である。 | × |
6 | H29-11-4 | 土地の賃貸借契約が建物所有を目的としている場合、契約の更新がなく、建物の買取りの請求をしないこととする旨を定めるには、賃貸人はあらかじめ賃借人に対してその旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。 | × |
7 | H28-11-3 | Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借した。AB間の賃貸借契約を公正証書で行えば、当該契約の更新がなく期間満了により終了し、終了時にはAが甲建物を収去すべき旨を有効に規定することができる。 | × |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R05-11-2 | 本件契約が甲土地上で専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的である場合、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならない。 | × |
2 | R03-11-1 | 事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。 | ◯ |
3 | R03-11-2 | 事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。 | ◯ |
4 | R01-11-4 | 賃貸借契約が専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする場合、期間を50年と定めたときは契約の更新がないことを公正証書で定めた場合に限りその特約は有効であるが、期間を15年と定めたときは契約の更新がないことを公正証書で定めても無効である。 | × |
5 | H30-11-1 | [AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約が専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする場合には、公正証書によらなければ無効となる。 | × |
6 | H30-11-2 | [AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約が居住用の建物の所有を目的とする場合には、借地権の存続期間を20年とし、かつ、契約の更新請求をしない旨を定めても、これらの規定は無効となる。 | ◯ |
7 | H29-11-4 | 賃貸借契約が建物所有を目的としている場合、契約の更新がなく、建物の買取りの請求をしないこととする旨を定めるには、賃貸人はあらかじめ賃借人に対してその旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。 | × |
8 | H28-11-3 | [Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借]AB間の賃貸借契約を公正証書で行えば、当該契約の更新がなく期間満了により終了し、終了時にはAが甲建物を収去すべき旨を有効に規定することができる。 | × |
9 | H22-11-1 | 社宅も事業用定期借地権の対象になる。 | × |
10 | H22-11-2 | 事業用定期借地権設定契約は公正証書以外の書面で締結することができる。 | × |
11 | H18-13-2 | 居住用賃貸マンションは、事業用定期借地権の対象にならない。 | ◯ |
12 | H18-13-3 | 小売業を行う目的の土地賃貸借は、期間20年の事業用定期借地権とすることができる。 | ◯ |
13 | H14-13-1 | 事業用定期借地権を設定した場合、借主は建物買取請求権を有しない。 | ◯ |
14 | H07-12-3 | 賃貸マンションも、事業用定期借地権の対象になる。 | × |
3 誤り
建物買取請求権の仕組み
借地権の存続期間が満了し契約更新がない場合、借地権者は、借地権設定者に対し、建物を時価で買い取るように請求することができます。これが建物買取請求権です(借地借家法13条1項)。
建物買取請求権の発生
建物買取請求権が認められるのは、賃貸借契約が期間の満了によって終了する場合に限られます(借地借家法13条1項)。
賃借人の債務不履行によって契約が終了した場合、建物買取請求権は認められません(最判昭35.02.09)。
本肢は、「終了事由のいかんにかかわらず」建物買取請求権が認められるとする点が誤りです。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R05-11-3 | 本件契約に建物買取請求権を排除する旨の特約が定められていない場合、本件契約が終了したときは、その終了事由のいかんにかかわらず、BはAに対してBが甲土地上に所有している建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。 | × |
2 | R04-11-4 | 借地上の建物所有者が借地権設定者に建物買取請求権を適法に行使した場合、買取代金の支払があるまでは建物の引渡しを拒み得るとともに、これに基づく敷地の占有についても、賃料相当額を支払う必要はない。 | × |
3 | R02-11-3 | A所有の甲土地につき、Bとの間で居住の用に供する建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃貸借契約が締結された。本件契約で「Bの債務不履行により賃貸借契約が解除された場合には、BはAに対して建物買取請求権を行使することができない」旨を定めても、この合意は無効となる。 | × |
4 | H28-11-4 | [Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借]Aが地代を支払わなかったことを理由としてBが乙土地の賃貸借契約を解除した場合、契約に特段の定めがないときは、Bは甲建物を時価で買い取らなければならない。 | × |
5 | H24-11-4 | 一時使用目的の借地権にも、建物買取請求権の規定が適用される。 | × |
6 | H14-13-1 | 事業用定期借地権を設定した場合、借主は建物買取請求権を有しない。 | ◯ |
7 | H14-13-2 | 借主の債務不履行を原因とする契約終了の場合にも、建物買取請求できる。 | × |
8 | H14-13-3 | 賃貸借契約・転貸借契約がともに期間満了し更新がなければ、転借人は賃貸人に対し直接建物買取請求権を有する。 | ◯ |
9 | H14-13-4 | 借主が適法に貸主に建物買取請求権を行使すると、その所有権は直ちに借主から貸主に移転するが、借主は貸主が代金を支払うまで、建物の引渡しを拒むことができる。 | ◯ |
10 | H10-11-4 | 建物が存続期間満了前に貸主の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるとき、建物買取請求権を行使できない。 | × |
11 | H03-12-3 | 借地権者は、借地権が消滅した場合において、家屋があるときは、自らが債務不履行のときでも土地所有者に対し家屋の買取りを請求することができる。 | × |
4 正しい
借地上に建物が存在し、借地権者Bが契約の更新を請求した場合でも、借地権設定者Aは、異議を述べることができます(借地借家法5条1項ただし書き)。
Aの異議に正当事由があれば、契約は、更新されることなく終了します(借地借家法6条)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R05-11-4 | 本件契約が借地権者の居住のための建物を所有する目的であり契約の更新がない旨を定めていない契約であって、期間満了する場合において甲土地上に建物があり、借地権者が契約の更新を請求したとしても、借地権設定者が遅滞なく異議を述べ、その異議に更新を拒絶する正当な事由があると認められる場合は、本件契約は更新されない。 | ◯ |
2 | R03s-11-2 | 借地権の存続期間が満了する場合、借地権者が契約の更新を請求したとき、その土地上に建物が存在する限り、借地権設定者は異議を述べることができない。 | × |
3 | H25-12-2 | 借地権の存続期間が満了する際、借地権者の更新請求に対し、借地権設定者が遅滞なく異議を述べた場合には、借地契約は当然に終了する。 | × |
4 | H21-11-2 | 当初の存続期間満了時に、借地権者が更新請求し、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べたとしても、異議の理由にかかわらず、借地契約を更新したものとみなされる。 | × |
5 | H20-13-2 | 存続期間満了後に、借地権者が土地使用を継続した場合、契約更新とみなされることがある。 | ◯ |
6 | H19-13-3 | 存続期間が満了した場合でも、借地権者が、建物収去・土地明渡しを請求できない場合がある。 | ◯ |
7 | H10-11-2 | 存続期間満了時に借地権者が更新を請求し、借地権設定者が異議を述べたがその異議に正当事由がない場合、契約は更新され、その存続期間は30年である。 | × |
8 | H05-11-2 | 「期間満了の際、借地権者に対し相当の一定額の交付さえ行えば、借地権設定者は更新を拒絶できる」と特約してもその特約は、無効である。 | ◯ |
9 | H04-10-2 | 当初の存続期間内に、建物が滅失し再築しない場合、期間満了時に、借地権者が更新請求しても、借地権設定者が異議を述べたときは、契約は更新されない。 | ◯ |
10 | H04-10-3 | 存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、借地権設定者が異議を述べなければ、期間の定めのない借地権が設定されたとみなされる。 | × |
11 | H01-12-2 | 存続期間満了時に、借地権者が更新請求し、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べなければ、前の契約と同一条件で更新したものとみなされる。 | ◯ |
12 | H01-12-3 | 存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べなければ、前の契約と同一条件で更新したものとみなされる。 | ◯ |
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