■講義編■借地借家法[01]借地権の存続期間と更新

「借地権」というのは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権のことをいいます。
借地権を設定した場合、当初の存続期間は、30年以上としなければなりません。また、最初の更新時は20年以上、2度目以降の更新時は10年以上とする必要があります。
当事者が意識的に更新しなくても、借地借家法の規定によって自動的に更新される場合もあります(法定更新)。

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1.用語の整理

(1).借地権

建物の所有を目的とする地上権or土地の賃借権

■地上権⇒民法[11]2、賃借権⇒民法[26]
★過去の出題例★

借地権(借地借家法[01]1(1))
年-問-肢内容正誤
1H25-12-1ゴルフ場経営を目的とする土地賃貸借契約については、対象となる全ての土地について地代等の増減額請求に関する借地借家法第11条の規定が適用される。×
2H18-13-1Bが建物を建築せず駐車場用地として利用する目的で存続期間を35年として土地の賃貸借契約を締結する場合には、期間は定めなかったものとみなされる。
×
(2).借地権者・借地権設定者

 

2.借地権の存続期間

(1).当初の存続期間

最短30年


★過去の出題例★

借地権の存続期間(当初の存続期間)(借地借家法[01]2(1))
年-問-肢内容正誤
1R01-11-2賃貸借契約が建物の所有を目的とする場合、公正証書で契約を締結しなければ、ケース①(期間50年)の期間は30年となり、ケース②(期間15年)の期間は15年となる。
×
2H30-11-2[AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約が居住用の建物の所有を目的とする場合には、借地権の存続期間を20年とし、かつ、契約の更新請求をしない旨を定めても、これらの規定は無効となる。
3H30-11-3[AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約において借地権の存続期間を60年と定めても、公正証書によらなければ、その期間は30年となる。
×
4H29-11-2賃借権の存続期間を10年と定めた場合、賃貸借契約が居住の用に供する建物を所有することを目的とするものであるときは存続期間が30年となる。
5H26-11-1存続期間40年と定めた場合、書面で契約を締結しなければ期間が30年となる。×
6H26-11-3期間を定めない契約を締結した場合、賃貸人が解約の申入れをしても合意がなければ契約は終了しない。
7H20-13-1建物所有目的の賃貸借契約において、賃貸借契約の期間の上限は50年である。×
8H20-13-3期間の定めがない場合、貸主は、契約開始から30年過ぎなければ、解約の申入れができない。
9H19-13-4期間の定めがない場合、貸主は、正当事由があればいつでも解約申入れできる。×
10H18-13-1小売業を行う目的で公正証書によらず賃貸借契約を締結した場合、存続期間35年という約定は有効である。
11H07-12-1期間の定めがない場合、堅固な建物については30年、非堅固な建物は20年となる。×
12H05-11-1存続期間を25年・35年のいずれと定めようと、契約期間は30年となる。×
13H01-12-1存続期間を10年と定めた場合、その約定はなかったものとみなされ、契約期間は20年となる。×
(2).更新後の存続期間


★過去の出題例★

借地権の存続期間(更新後の存続期間)(借地借家法[01]2(2))
年-問-肢内容正誤
1R03s-11-1借地権の存続期間を契約で30年と定めた場合には、当事者が借地契約を更新する際、その期間を更新の日から30年以下に定めることはできない。
×
2R02-11-4A所有の甲土地につき、Bとの間で居住の用に供する建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃貸借契約が締結された。AとBとが期間満了に当たり本件契約を最初に更新する場合、更新後の存続期間を15年と定めても、20年となる。
3H21-11-4当初の存続期間が満了し契約更新する場合、契約期間を10年と定めたときは、その定めは無効で契約期間は20年となる。
4H10-11-2存続期間満了時に借地権者が更新を請求し、借地権設定者が異議を述べたがその異議に正当事由がない場合、契約は更新され、その存続期間は30年である。×
5H04-10-3存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、借地権設定者が異議を述べなければ、期間の定めのない借地権が設定されたとみなされる。×

3.契約の法定更新

(1).法定更新が生じる場合

(2).借地権設定者が法定更新を拒む方法
①異議を述べること

遅滞なく異議を述べることが必要

②正当事由があること

以下の要素を考慮し、総合的に判断

(3).まとめ

(4).法定更新後の借地権
①存続期間

②存続期間以外

従前契約と同一条件
★過去の出題例★

契約の法定更新(借地借家法[01]3)
年-問-肢内容正誤
1R05-11-4本件契約が借地権者の居住のための建物を所有する目的であり契約の更新がない旨を定めていない契約であって、期間満了する場合において甲土地上に建物があり、借地権者が契約の更新を請求したとしても、借地権設定者が遅滞なく異議を述べ、その異議に更新を拒絶する正当な事由があると認められる場合は、本件契約は更新されない。
2R03s-11-2借地権の存続期間が満了する場合、借地権者が契約の更新を請求したとき、その土地上に建物が存在する限り、借地権設定者は異議を述べることができない。×
3H25-12-2借地権の存続期間が満了する際、借地権者の更新請求に対し、借地権設定者が遅滞なく異議を述べた場合には、借地契約は当然に終了する。×
4H21-11-2当初の存続期間満了時に、借地権者が更新請求し、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べたとしても、異議の理由にかかわらず、借地契約を更新したものとみなされる。×
5H20-13-2存続期間満了後に、借地権者が土地使用を継続した場合、契約更新とみなされることがある。
6H19-13-3存続期間が満了した場合でも、借地権者が、建物収去・土地明渡しを請求できない場合がある。
7H10-11-2存続期間満了時に借地権者が更新を請求し、借地権設定者が異議を述べたがその異議に正当事由がない場合、契約は更新され、その存続期間は30年である。×
8H05-11-2「期間満了の際、借地権者に対し相当の一定額の交付さえ行えば、借地権設定者は更新を拒絶できる」と特約してもその特約は、無効である。
9H04-10-2当初の存続期間内に、建物が滅失し再築しない場合、期間満了時に、借地権者が更新請求しても、借地権設定者が異議を述べたときは、契約は更新されない。
10H04-10-3存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、借地権設定者が異議を述べなければ、期間の定めのない借地権が設定されたとみなされる。×
11H01-12-2存続期間満了時に、借地権者が更新請求し、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べなければ、前の契約と同一条件で更新したものとみなされる。
12H01-12-3存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べなければ、前の契約と同一条件で更新したものとみなされる。

4.建物の滅失・取壊し

(1).当初の存続期間中の滅失・取壊し

30年の契約期間のうち、20年経過した時点で建物が滅失した場合

①借地権は存続

一方的な関係解消×

②残存期間を超えて存続する建物の再築

借地権設定者の承諾の有無にかかわらず◯

③借地権設定者の承諾がある場合

(a).借地権の期間の延長
借地権は、承諾日又は建物築造日のいずれか早い日から20年間存続

(b).承諾とは
・借地権設定者の承諾
・みなし承諾(借地権者からの通知に対し、借地権設定者が2か月以内に異議を述べない)

④借地権設定者の承諾がない場合

当初の存続期間満了時に法定更新(⇒3)の判断


★過去の出題例★

当初の契約期間中の滅失・取壊し(借地借家法[01]4(1))
年-問-肢内容正誤
1R04-11-1借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が借地権の残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造することにつき借地権設定者の承諾がない場合でも、借地権の期間の延長の効果が生ずる。×
2R04-11-2転借地権が設定されている場合において、転借地上の建物が滅失したときは、転借地権は消滅し、転借地権者(転借人)は建物を再築することができない。×
3R04-11-3借地上の建物が滅失し、借地権設定者の承諾を得て借地権者が新たに建物を築造するに当たり、借地権設定者が存続期間満了の際における借地の返還確保の目的で、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨の特約を借地権者と結んだとしても、この特約は無効である。
4H25-12-4借地権の存続期間満了前に建物が滅失し、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を建築した場合、借地権設定者が異議を述べない限り、借地権は築造日から当然に20年間存続する。×
5H21-11-1当初の存続期間内に建物が滅失し、借地権者が借地権設定者の承諾を得ずに残存期間を超えて存続すべき建物を築造→借地権設定者は解約の申入れが可能。×
6H21-11-3借地権の当初の存続期間中に借地上の建物の滅失があった場合、借地権者は地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。×
7H10-11-1当初の存続期間内に、借地権者が、借地権設定者に通知することなく、建物を取壊し残存期間を超えて存続すべき建物を築造→借地権設定者は契約の解除が可能。×
8H04-10-1木造建物の所有を目的とする借地契約において、期間満了前に借地権者が鉄筋コンクリート造りの建物を無断で増築した場合、借地権設定者が遅滞なく異議を述べなければ、借地権の存続期間は、増築のときから20年となる。×
9H04-10-4期間満了前に建物が火災により滅失し、借地権者が同等の建物を再築した場合、土地所有者が遅滞なく異議を述べなければ、借地権の存続期間は、建物滅失の日から20年となる。×
10H03-12-1借地権者は、家屋が火災により減失したときは、新築することができ、その建物が借地権の残存期間を超えて存続するものであっても、土地所有者は異議を述べることができない。×
11H02-12-3建物の所有を目的とする土地の賃貸借において、当該建物が借地人の失火により滅失したときは、賃貸人は、解約の申入れをすることができる。×
12H02-12-4建物の所有を目的とする土地の賃貸借において、当初の存続期間中に当該建物が滅失したときであっても、当該賃貸借は終了しない。
(2).契約更新後の滅失・取壊し

20年の契約期間のうち、15年経過した時点で建物が滅失した場合

①借地権は存続

借地権者から、一方的に離脱◯
(地上権放棄or賃貸借の解約の申入れ)

②残存期間を超えて存続する建物の再築

以下のいずれかが必要

  1. 借地権設定者の承諾
  2. 裁判所の許可(⇒[03]2
③承諾・許可がある場合

借地権の期間の延長(⇒(1)③(a)と同じ)

④借地権設定者の承諾がない場合

借地権者が残存期間を超えて存続する建物を築造
→借地権設定者から、関係の解消◯
(地上権消滅請求or賃貸借の解約の申入れ)
★過去の出題例★

契約更新後の滅失・取壊し(借地借家法[01]4(2))
年-問-肢内容正誤
1H10-11-3借地権者が、契約の更新後に、現存する建物を取り壊し、残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造した場合で、借地権設定者の承諾もそれに代わる裁判所の許可もないとき、借地権設定者は、土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。

5.強行規定

借地権者に不利な特約
→無効
★過去の出題例★

強行規定(借地借家法[01]5)
年-問-肢内容正誤
1R04-11-3借地上の建物が滅失し、借地権設定者の承諾を得て借地権者が新たに建物を築造するに当たり、借地権設定者が存続期間満了の際における借地の返還確保の目的で、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨の特約を借地権者と結んだとしても、この特約は無効である。
2H21-11-4借地権の当初の存続期間が満了し借地契約を更新する場合において、当事者間でその期間を更新の日から10年と定めたときは、その定めは効力を生じず、更新後の存続期間は更新の日から20年となる。
3H05-11-2「期間満了の際、借地権設定者Aが借地権者Bに対し相当の一定額の交付さえ行えば、Aは更新を拒絶できる」と特約してもその特約は、無効である。

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■講義編■借地借家法[01]借地権の存続期間と更新” に対して6件のコメントがあります。

  1. T510 より:

    当初の存続期間中に建物が滅失し、借地権者の承諾なく再築した場合は、30年目に法定更新のチェックを受けることになる、と解説されています。
    借地権設定者としては、無断で再築したことを正当事由として更新しないことはできるのですか?
    承諾なしに再築できることからして、無理だとは思うのですが…。
    また、承諾なしに再築した方が結果的に存続期間が延びることになり、不合理では?

    1. 家坂 圭一 より:

      T510様

      御質問ありがとうございます。

      >借地権設定者としては、無断で再築したことを正当事由として更新しないことはできるのですか?
      >承諾なしに再築できることからして、無理だとは思うのですが…。


      借地権が存続しているのですから、建物を再築するのは、借地権者の当然の権利です。借地権設定者の承諾を得る必要はありません。
      「無断で」とおっしゃいますが、再築する行為は、違法でも何でもないのです。
      これを理由に法定更新を拒絶することはできません。

      >また、承諾なしに再築した方が結果的に存続期間が延びることになり、不合理では?

      「再築した方が結果的に存続期間が延びる」
      ということはありません。

      (1)承諾なしに再築した場合
      当初の存続期間の終了時に法定更新の可否が判断されます。
      更新を受けることができなければ、当初の存続期間終了時点で契約関係は終了します。

      (2)承諾を受けて再築した場合
      再築について借地権設定者の承諾を得ておけば、承諾日又は建物築造日のいずれか早い日から20年間、借地権が存続します。つまり、当初の存続期間が延長されるわけです。
      この期間、借地権者は、安定的に借地を利用することができます。更新できるかどうか、気にする必要がありません。

      (3)まとめ
      (1)と(2)を比較すると、借地権設定者の承諾を受けておくほうが借地権者にとって有利であることが分かります。
      借地借家法の規定に、特に不合理な点はありません。

      1. T510 より:

        承諾なしに再築した方が「結果的に存続期間が延びるのでは…」と考えたのは、次のように考えたからです。
        (1) 承諾を得た場合の存続期間 = 25年 + 20年 = 45年
           (承諾日又は建物増築日を25年目とした場合)
        (2) 承諾を得なかった場合の存続期間 = 30年 + 20年 = 50年
        (法定更新が認められた場合)
        やはり、何か考え方がおかしいのでしょうか?

        1. 家坂 圭一 より:

          T510さんの考えかたでは、(1)と(2)で、比較の対象が違っています。
          (1)では「当初の存続期間」、(2)では「1回法定更新を経た後の期間」、となっているからです。
          正しくは、以下のように比較する必要があります。

          【A】当初の存続期間を比較する場合
          (1)借地権設定者の承諾を得たことにより、「45年」に延長されます。
          (2)当初の契約通り「30年」です。

          【B】一回法定更新された場合の存続期間を比較する場合
          (1)45年+20年=65年です。
          (2)30年+20年=50年です。

          【C】まとめ
          【A】【B】いずれの場合も、(1)>(2)となっています。不合理な点はありません。
          T510さんは、(1)については【A】、(2)については【B】を取り出して比較しているため、不合理なように見えているのです。

        2. T510 より:

          ご丁寧なご回答を頂き、誠にありがとうございました。
          とてもよく理解できました。

        3. 家坂 圭一 より:

          安心しました。
          引き続き頑張っていきましょう!

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