【宅建過去問】(令和07年問01)対抗問題

所有者AがBに甲土地を売却し、その後にBがCに甲土地を売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、この問において、Cは背信的悪意者ではないものとする。

  1. 甲土地の所有権登記がAの名義のままであったとしても、Bは、Cに甲土地を売却した後は、Aに対して自己に甲土地の所有権移転登記をするよう請求することはできない。
  2. Cは、甲土地の所有権移転登記を備えなければ、Aに対して自己が所有者であることを主張することができない。
  3. AB間の売買契約が、BC間の売買契約締結よりも前にAにより解除されていた場合、又は、BC間の売買契約締結後にAにより解除された場合のいずれの場合であっても、Cは、甲土地の所有権移転登記を備えれば、Aに対して自己の所有権を主張することができる。
  4. AB間の売買契約が、BC間の売買契約よりも前にBの強迫を理由として取り消されていた場合、又は、BC間の売買契約締結後にBの強迫を理由として取り消された場合のいずれの場合であっても、Cは、Bの強迫につき善意でかつ過失がなければ、Aに対して自己の所有権を主張することができる。

正解:3

設定の確認

所有者AがBに甲土地を売却し、その後にBがCに甲土地を売却した。
Cは背信的悪意者ではない。

対抗問題・対抗要件とは

対抗問題や対抗要件を考える場合、二重譲渡をイメージすると理解が速まります。
例えば、Aが自分の所有する土地を①5月1日にBに売却し、②5月4日にCにも売却したケースについて考えてみましょう。
この土地の所有者は、Bなのか、それともCか。この両立しない関係が対抗関係です。
対抗問題が発生している場合、対抗要件を先に備えたほうが勝負に勝ちます。土地や建物のケースでいえば、所有権移転登記を受けたほうが勝負に勝つわけです。

1 誤り

甲土地の所有権は、AからB、BからCへと順次に移転しているだけです。3人の間に対抗問題は起こっていません。

売主A・買主Bという売買契約で、売主であるAは、Bに対して、対抗要件(登記など)を備えさせる義務を負っています(民法560条)。
Bは、Aにこの義務の履行を求めるために、Aに対して自己に甲土地の所有権移転登記をするよう請求することができます。
BがCに甲土地を売却した後でも結論は同じです。また、A→B→Cと所有権の移転登記をすることで、所有権の移転状況を正確に記録することができます。

■参照項目&類似過去問
内容を見る

対抗問題にならないケース(民法[07]1(2))
年-問-肢内容正誤
1R07-01-1所有者AがBに甲土地を売却し、その後にBがCに甲土地を売却した。甲土地の所有権登記がAの名義のままであったとしても、Bは、Cに甲土地を売却した後は、Aに対して自己に甲土地の所有権移転登記をするよう請求することはできない。×
2R07-01-2所有者AがBに甲土地を売却し、その後にBがCに甲土地を売却した。Cは、甲土地の所有権移転登記を備えなければ、Aに対して自己が所有者であることを主張することができない。×
3R03s-06-1不動産の所有権がAからB、BからC、CからDと転々譲渡された場合、Aは、Dと対抗関係にある第三者に該当する。×
4R01-01-3[Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。]Bが甲土地の所有権移転登記を備えないまま甲土地をEに売却した場合、Eは、甲土地の所有権移転登記なくして、Aに対して甲土地の所有権を主張することができる。
5H16-03-4F→A→Bと所有権が移転した場合、BはFに対し、登記がなくても所有権を対抗できる。
6H13-25-3[A所有の宅地甲地をBが取得]甲地にA所有の住宅が建っているとき、BがAに対してこれを除却するよう求めるためには、Bは、甲地の所有権移転登記を完了していなければならない。×
7H08-03-1代金全額を支払ったとしても、所有権移転登記を完了していない場合には、買主は売主に所有権の移転を主張できない。×

2 誤り

甲土地の所有権は、AからB、BからCへと順次に移転しているだけです。3人の間に対抗問題は起こっていません。
したがって、Cは、登記を備えなくても、Aに対して自己の所有権を主張することができます。

■参照項目&類似過去問
内容を見る

対抗問題にならないケース(民法[07]1(2))
年-問-肢内容正誤
1R07-01-1所有者AがBに甲土地を売却し、その後にBがCに甲土地を売却した。甲土地の所有権登記がAの名義のままであったとしても、Bは、Cに甲土地を売却した後は、Aに対して自己に甲土地の所有権移転登記をするよう請求することはできない。×
2R07-01-2所有者AがBに甲土地を売却し、その後にBがCに甲土地を売却した。Cは、甲土地の所有権移転登記を備えなければ、Aに対して自己が所有者であることを主張することができない。×
3R03s-06-1不動産の所有権がAからB、BからC、CからDと転々譲渡された場合、Aは、Dと対抗関係にある第三者に該当する。×
4R01-01-3[Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。]Bが甲土地の所有権移転登記を備えないまま甲土地をEに売却した場合、Eは、甲土地の所有権移転登記なくして、Aに対して甲土地の所有権を主張することができる。
5H16-03-4F→A→Bと所有権が移転した場合、BはFに対し、登記がなくても所有権を対抗できる。
6H13-25-3[A所有の宅地甲地をBが取得]甲地にA所有の住宅が建っているとき、BがAに対してこれを除却するよう求めるためには、Bは、甲地の所有権移転登記を完了していなければならない。×
7H08-03-1代金全額を支払ったとしても、所有権移転登記を完了していない場合には、買主は売主に所有権の移転を主張できない。×

3 正しい

■解除後の第三者

「AB間の売買契約が、BC間の売買契約締結よりも前にAにより解除されていた場合」、第三者Cは、解除「後」の第三者です。

この場合、B→Aの所有権復帰とB→Cの物権変動が対抗関係に立ちます(最判昭35.11.29)。つまり、Cは、対抗要件である所有権移転登記を備えれば、Aに対して所有権を主張することができます(民法177条)。

■解除前の第三者

「AB間の売買契約が、⋯BC間の売買契約締結後にAにより解除された場合」、第三者Cは、解除「前」の第三者です。
Aは、解除に伴う原状回復の際に、第三者Cの権利を害することはできません(民法545条1項ただし書き)。ただし、第三者Cが保護を受けるためには、所有権移転登記を備えておく必要があります(最判昭33.06.14)。

解除前の第三者(民法[07]2(3)②
■まとめ

Cが、解除「後」の第三者の場合でも、解除「前」の第三者の場合でも、甲土地の所有権移転登記を備えれば、Aに対して自己の所有権を主張することができます。

■参照項目&類似過去問
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対抗問題:解除後の第三者(民法[07]2(3)①)
解除:解除後の第三者(民法[23]4(3)①)
年-問-肢内容正誤
1R07-01-3所有者AがBに甲土地を売却し、その後にBがCに甲土地を売却した。AB間の売買契約が、BC間の売買契約締結よりも前にAにより解除されていた場合、又は、BC間の売買契約締結後にAにより解除された場合のいずれの場合であっても、Cは、甲土地の所有権移転登記を備えれば、Aに対して自己の所有権を主張することができる。
2H20-02-3復帰的物権変動につき未登記の売主は、解除後の第三者に、所有権を主張できる。×
3H19-06-2復帰的物権変動につき未登記の売主は、登記を経た解除後の第三者に、所有権を対抗できない。
4H16-09-4復帰的物権変動につき未登記の売主は、解除後に物権を賃借し対抗要件を備えた賃借人に対し、賃借権の消滅を主張できる。×
5H13-05-3解除後に解除につき善意で物件を購入し登記を経た第三者は、復帰的物権変動につき未登記の売主に対し、所有権を対抗できる。
6H08-05-4解除後に解除につき悪意で物件を購入し登記を経た第三者は、復帰的物権変動につき未登記の売主に対し、所有権を対抗できない。×

対抗問題:解除前の第三者(民法[07]2(3)②)
解除:解除前の第三者(民法[23]4(3)②)
年-問-肢内容正誤
1R07-01-3所有者AがBに甲土地を売却し、その後にBがCに甲土地を売却した。
AB間の売買契約が、BC間の売買契約締結よりも前にAにより解除されていた場合、又は、BC間の売買契約締結後にAにより解除された場合のいずれの場合であっても、Cは、甲土地の所有権移転登記を備えれば、Aに対して自己の所有権を主張することができる。
2H21-08-1解除前の第三者が登記を備えている場合、その第三者が悪意であっても、売主は所有権を主張できない。
3H16-09-1建物の買主がその債権者と抵当権設定契約を締結し登記をした後で、売主が売買契約を解除しても、売主は抵当権の消滅を主張できない。
4H16-09-2建物の買主がその建物を賃貸し引渡しを終えた後で、売主が売買契約を解除した場合、売主は賃借権の消滅を主張できる。×
5H16-09-3建物の買主がその債権者と抵当権設定契約を締結したが、登記をする前に、売主が売買契約を解除した場合、抵当権設定契約は無効となる。×
6H14-08-4買主が土地を転売した後、売買契約を解除しても、未登記の第三者の土地を取得する権利を害することはできない。×
7H13-05-2買主が土地を転売した後、売買契約を解除した場合、登記を受けた第三者は、所有権を売主に対抗できる。
8H08-05-3解除前の第三者が登記を備えていても、その第三者が解除原因につき悪意であった場合には、売主に対し所有権を対抗できない。×
9H03-04-2解除前の第三者が登記を備えていても、売主は第三者に対し所有権を対抗できる。×
10H01-03-3売主が買主の債務不履行を理由に売買契約を解除した場合、売主は、その解除を、解除前に転売を受け、解除原因について悪意ではあるが、所有権の移転登記を備えている第三者に対抗することができる。×

4 誤り

■強迫による取消し後の第三者

「AB間の売買契約が、BC間の売買契約よりも前にBの強迫を理由として取り消されていた場合」、第三者Cは、強迫による取消し「後」の第三者です。

強迫:取消し後の第三者(民法[02]6(3)②

この場合、B→Aの所有権復帰とB→Cの物権変動が対抗関係に立ちます。つまり、Cは、所有権移転の登記をしない限り、Aに対して所有権を主張することができません(民法177条)。

登記さえあれば対抗要件として十分です。たとえCがBの強迫について悪意であったとしても、Cは、所有権の主張が可能です。逆に登記がなければ、強迫につき善意無過失であっても、所有権を主張することができません。
対抗要件はあくまで「登記」です。善意悪意や過失の有無は、結論と無関係です。

強迫:取消し後の第三者に対する効果(民法[02]6(3)②
■強迫による取消し前の第三者

「AB間の売買契約が、⋯BC間の売買契約締結後にBの強迫を理由として取り消された場合」、第三者Cは、強迫による取消し「前」の第三者です。
この場合、強迫の被害に遭ったAが常に優先します。第三者Cは、たとえ善意無過失であったとしても、Aに対して所有権を主張することはできません。

取消し前の第三者(強迫の場合)(民法[07]2(1)③
第三者が第三者への対抗
善意無過失
有過失
悪意
強迫:取消し前の第三者に対する効果(民法[02]6(3)①
■まとめ

Cが取消し「後」の第三者であれば、甲土地の所有権移転登記を備えることで、Aに対して自己の所有権を主張することができます。
一方、取消し「前」の第三者である場合は、Aに対抗しようがないわけです。
いずれの場合も、「Cは、Bの強迫につき善意でかつ過失がなければ、Aに対して自己の所有権を主張することができる」わけではありません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る

強迫の効果(民法[02]6(2)(3))
年-問-肢内容正誤
当事者間の効果
1R06-01-3詐欺による意思表示は取り消すことによって初めから無効であったとみなされるのに対し、強迫による意思表示は取り消すまでもなく無効である。×
2H29-02-4AがBに甲土地を売却したが、AがBの強迫を理由に売買契約を取り消した場合、甲土地の所有権はAに復帰し、初めからBに移転しなかったことになる。
第三者に対する効果
[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。Bは、甲土地をCに売却した。
1R07-01-4AB間の売買契約が、BC間の売買契約よりも前にBの強迫を理由として取り消されていた場合、又は、BC間の売買契約締結後にBの強迫を理由として取り消された場合のいずれの場合であっても、Cは、Bの強迫につき善意でかつ過失がなければ、Aに対して自己の所有権を主張することができる。×
2H23-01-4BがCに甲土地を転売した後に、AがBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合には、CがBによる強迫につき知らず、かつ、知ることができなかったときであっても、AはCから甲土地を取り戻すことができる。
3H22-04-2甲土地はAからB、BからCと売却されており、AB間の売買契約がBの強迫により締結されたことを理由として取り消された場合には、BC間の売買契約締結の時期にかかわらず、Aは登記がなくてもCに対して所有権を主張することができる。
×
4H20-02-4CはBとの間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、その後AはBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合、CがBによる強迫を知っていたときに限り、Aは所有者であることをCに対して主張できる。
×
5H10-07-2AのBに対する売却の意思表示がBの強迫によって行われた場合、Aは、売却の意思表示を取り消すことができるが、その取消しをもって、Bからその取消し前に当該土地を買い受けた善意無過失のDには対抗できない。
×
6H03-02-全Cが、Bからその土地を購入した後、AがBの強迫を理由としてAB間の売買契約を取り消した場合、Cは、Aによる土地の明渡しの請求を拒むことができない。
7H01-03-4Aは、Bに強迫されて土地を売ったので、その売買契約を取り消した場合、そのことをBからその取消し前に当該土地を買い受けた善意無過失のCに対し対抗することができる。


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