【宅建過去問】(平成10年問07)意思表示
Aが、A所有の土地をBに売却する契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- AのBに対する売却の意思表示がCの詐欺によって行われた場合で、BがそのCによる詐欺の事実を知っていたとき、Aは、売却の意思表示を取り消すことができる。
- AのBに対する売却の意思表示がBの強迫によって行われた場合、Aは、売却の意思表示を取り消すことができるが、その取消しをもって、Bからその取消し前に当該土地を買い受けた善意無過失のDには対抗できない。
- Aが、自分の真意ではないと認識しながらBに対する売却の意思表示を行った場合で、BがそのAの真意ではないことを知っていたとき、Aは、売却の意思表示の無効を主張できる。
- AのBに対する売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があった場合、Aは、売却の意思表示の取り消すことができるが、Aに重大な過失があったときは、取り消すことができない。
正解:2
1 正しい
第三者による詐欺のケースである。
この場合、相手方が詐欺の事実を知り、又は知ることができたときに限り、意思表示を取り消すことができる(民法96条2項)。
本肢では、第三者Cが売主Aをだましたことについて、買主Bが知っている。したがって、Aは、詐欺を理由に、売却の意思表示を取り消すことができる。
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第三者による詐欺(民法[02]5(4))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 30-01-1 | [AがBに甲土地を売却した。]甲土地につき売買代金の支払と登記の移転がなされた後、第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、原状回復のため、BはAに登記を移転する義務を、AはBに代金を返還する義務を負い、各義務は同時履行の関係となる。 | ◯ |
2 | 30-01-4 | [AがBに甲土地を売却した。]Aが第三者の詐欺によってBに甲土地を売却し、その後BがCに甲土地を転売した場合、Bが第三者の詐欺の事実を知らず、かつ、知ることができなかったとしても、Cが第三者の詐欺の事実を知っていれば、Aは詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。 | × |
3 | 23-01-2 | 第三者の詐欺の場合、相手方が知っていたとしても、取消不可。 | × |
4 | 16-01-3 | 第三者の詐欺の場合、相手方の知不知に関わらず、取消不可。 | × |
5 | 14-01-1 | 第三者の詐欺の場合、相手方が知り、又は知ることができたときでないと、取消不可。 | ◯ |
6 | 10-07-1 | 第三者の詐欺の場合、相手方が知っているときは、取消可能。 | ◯ |
7 | 04-02-3 | 代理人が第三者に騙された場合、相手方が善意無過失でも、本人から取消可能。 | × |
8 | 04-02-4 | 代理人が第三者に騙された場合、相手方が善意無過失であれば、本人から取消不可。 | ◯ |
2 誤り
- 買主Bが売主Aを強迫
- 売主Aが買主Bに売却
- 買主Bが第三者Dに売却
- 売主Aが強迫により取消し
というプロセスを経ており、売却を受けた第三者Eは強迫による取消前の第三者にあたる。
この場合、売主は、契約の取消しを第三者の善意悪意を問わず対抗することができる(民法96条3項の反対解釈)。
本肢では、買主Bが売主Aを強迫したことについて、転得者Dは善意無過失である。しかし、この場合でも、Aは、取消しをDに対抗することができる。
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強迫の効果(民法[02]6(2)(3))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
当事者間の効果 | |||
1 | R06-01-3 | 詐欺による意思表示は取り消すことによって初めから無効であったとみなされるのに対し、強迫による意思表示は取り消すまでもなく無効である。 | × |
2 | H29-02-4 | AがBに甲土地を売却したが、AがBの強迫を理由に売買契約を取り消した場合、甲土地の所有権はAに復帰し、初めからBに移転しなかったことになる。 | ◯ |
第三者に対する効果 |
|||
[共通の前提] AがBにAの所有する甲土地を売却した。Bは、甲土地をCに売却した。 |
|||
1 | H23-01-4 | BがCに甲土地を転売した後に、AがBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合には、CがBによる強迫につき知らず、かつ、知ることができなかったときであっても、AはCから甲土地を取り戻すことができる。 | ◯ |
2 | H22-04-2 | 甲土地はAからB、BからCと売却されており、AB間の売買契約がBの強迫により締結されたことを理由として取り消された場合には、BC間の売買契約締結の時期にかかわらず、Aは登記がなくてもCに対して所有権を主張することができる。 | × |
3 | H20-02-4 | CはBとの間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、その後AはBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合、CがBによる強迫を知っていたときに限り、Aは所有者であることをCに対して主張できる。 | × |
4 | H10-07-2 | AのBに対する売却の意思表示がBの強迫によって行われた場合、Aは、売却の意思表示を取り消すことができるが、その取消しをもって、Bからその取消し前に当該土地を買い受けた善意無過失のDには対抗できない。 | × |
5 | H03-02-全 | Cが、Bからその土地を購入した後、AがBの強迫を理由としてAB間の売買契約を取り消した場合、Cは、Aによる土地の明渡しの請求を拒むことができない。 | ◯ |
6 | H01-03-4 | Aは、Bに強迫されて土地を売ったので、その売買契約を取り消した場合、そのことをBからその取消し前に当該土地を買い受けた善意無過失のCに対し対抗することができる。 | ◯ |
3 正しい
真意でないAの意思表示は心裡留保である。
心裡留保による意思表示は原則として有効であるが、相手方が表意者の真意ではないことを知っているか、または知ることができたときは、無効である(民法93条1項)。
本肢ではBがAの真意ではないことを知っているのだから、AB間の売買契約は無効である。
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心裡留保(民法[02]2)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H19-01-1 | Aは甲土地を「1,000万円で売却する」という意思表示を行ったが当該意思表示はAの真意ではなく、Bもその旨を知っていた。この場合、Bが「1,000万円で購入する」という意思表示をすれば、AB間の売買契約は有効に成立する。 | × |
2 | H16-01-1 | Aの売渡し申込みの意思は真意ではなく、BもAの意思が真意ではないことを知っていた場合、AとBとの意思は合致しているので、売買契約は有効である。 | × |
3 | H10-07-3 | Aが、自分の真意ではないと認識しながらBに対する売却の意思表示を行った場合で、BがそのAの真意を知っていたとき、Aは、売却の意思表示の無効を主張できる。 | ◯ |
4 正しい
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、取り消すことができる(民法95条1項)。
しかし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、意思表示を取り消すことができない(同条3項)。
本肢では、売主Aの買主Bに対する意思表示に要素の錯誤があったが、Aに重大な過失があったというのである。Aは、錯誤を理由に意思表示を取り消すことができない。
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【例外1】重要な錯誤(要素の錯誤)でないとき(民法[02]4(2)②)
[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。
【例外2】表意者の重過失があるとき(民法[02]4(2)②)
[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。
[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-07-4 | 本件契約が、Aの重大な過失による錯誤に基づくものであり、その錯誤が重要なものであるときは、Aは本件契約の無効を主張することができる。 | ◯ |
2 | R01-02-3 | Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aの錯誤について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けたときは、Aに重大な過失がなければ、AはBに対する意思表示を錯誤を理由に取消し、Cに対して、その取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | ◯ |
3 | R01-02-4 | Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | × |
4 | H17-02-1 | 錯誤が、売却の意思表示の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである場合であっても、この売却の意思表示を取り消すことはできない。 | × |
5 | H13-02-1 | Bが、Aや媒介業者の説明をよく聞き、自分でもよく調べて、これなら住宅が建てられると信じて買ったが、地下に予見できない空洞(古い防空壕)があり、建築するためには著しく巨額の費用が必要であることが判明した場合、Bは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことができる。 | ◯ |
6 | H10-07-4 | AのBに対する売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があった場合、Aは、売却の意思表示の取り消すことができるが、Aに重大な過失があったときは、取り消すことができない。 | ◯ |
7 | H02-04-3 | AのBに対する売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があった場合、Aは、重大な過失がないときは、AB間の契約を取り消すことはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。 | ◯ |
[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-07-4 | 本件契約が、Aの重大な過失による錯誤に基づくものであり、その錯誤が重要なものであるときは、Aは本件契約の無効を主張することができる。 | × |
2 | R02-06-1 | Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合 | × |
3 | R02-06-4 | Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合 | × |
4 | R01-02-3 | Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aの錯誤について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けたときは、Aに重大な過失がなければ、AはBに対する意思表示を錯誤を理由に取消し、Cに対して、その取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | ◯ |
5 | R01-02-4 | Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | × |
6 | H30-01-2 | Aが甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって取消しを主張することができない場合は、BもAの錯誤を理由として取消しを主張することはできない。 | ◯ |
7 | H21-01-1 | 意思表示をなすに当たり、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその意思表示を取り消すことができない。 | ◯ |
8 | H17-02-3 | 売却の意思表示に錯誤がある場合であっても、意思表示者であるAに重過失があるときは、Aは、この売却の意思表示を取り消すことはできない。 | ◯ |
9 | H13-02-1 | Bが、Aや媒介業者の説明をよく聞き、自分でもよく調べて、これなら住宅が建てられると信じて買ったが、地下に予見できない空洞(古い防空壕)があり、建築するためには著しく巨額の費用が必要であることが判明した場合、Bは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことができる。 | ◯ |
10 | H13-02-4 | Bは、代金をローンで支払うと定めて契約したが、Bの重大な過失によりローン融資を受けることができない場合、Bは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことはできない。 | ◯ |
11 | H10-07-4 | AのBに対する売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があった場合、Aは、売却の意思表示の取り消すことができるが、Aに重大な過失があったときは、取り消すことができない。 | ◯ |
12 | H06-02-2 | Aは、無過失のときに限り、法律行為の要素に錯誤があるとして、その契約を取り消すことができる。 | × |
13 | H02-04-3 | Aが要素の錯誤により契約をした場合、Aは、重大な過失がないときは、AB間の契約の取り消すことはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。 | ◯ |
例外の例外 | |||
14 | R02-06-3 | Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合、Aは、Bに対し、錯誤による取消しができる。 | ◯ |