【宅建過去問】(平成02年問04)行為能力・意思表示
A所有の土地が、AからB、Bから善意無過失のCへと売り渡され、移転登記もなされている。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
- Aが成年被後見人の場合、Aは、契約の際完全な意思能力を有していてもAB間の契約を取り消し、Cに対して所有権を主張することができる。
- Aが未成年者の場合、Aは、法定代理人の同意を得ずに契約をしていても成年に達すれば、AB間の契約を取り消すことができなくなる。
- Aが要素の錯誤により契約をした場合、Aは、重大な過失がないときは、AB間の契約を取り消すことはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。
- Aが差押えを免れるため、Bと通謀して登記名義をBに移した場合、Aは、AB間の契約の無効を主張することはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。
正解:2
1 正しい
成年被後見人の法律行為は取り消すことができる(民法9条)。これは、その時点の成年被後見人が意思能力(同法3条の2)を有している場合でも、同じである。したがって、Aは、AB間の契約を取り消すことができる。
そして、行為能力の制限による取消しには、詐欺(同法96条3項)の場合と違って、第三者を保護する規定が存在しない。
したがって、Aは、Bだけでなく、Cに対しても取消しの効力や所有権を主張することができる。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 26-09-1 | 成年被後見人が建物の贈与を受ける契約をした場合、成年後見人は、取り消すことができない。 | × |
2 | 26-09-4 | 成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。 | ◯ |
3 | 20-01-1 | 成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。 | ◯ |
4 | 18-12-1 | 成年者Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況になった場合、Aの推定相続人はAの法定代理人となる。 | × |
5 | 15-01-3 | 成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。 | ◯ |
6 | 02-04-1 | 成年被後見人は、契約の際完全な意思能力を有していても契約を取り消すことができる。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03-05-4 | 意思能力を有しないときに行った不動産の売買契約は、後見開始の審判を受けているか否かにかかわらず効力を有しない。 | ◯ |
2 | H30-03-4 | AとBとの間で、A所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した。本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、Bは、本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。 | ◯ |
3 | H24-03-1 | 意思能力を欠く状態での意思表示は、無効である。 | ◯ |
4 | H20-01-1 | 成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。 | ◯ |
5 | H19-01-4 | A所有の甲土地についてのAB間の売買契約が、Aが泥酔して意思無能力である間になされたものである場合、Aは、酔いから覚めて売買契約を追認するまではいつでも売買契約を取り消すことができ、追認を拒絶すれば、その時点から売買契約は効となる。 | × |
6 | H17-01-2 | 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方である買主Bが意思無能力者であった場合、Bは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。 | × |
7 | H15-01-1 | 意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合、その親族が当該意思表示を取り消せば、取消しの時点から将来に向かって無効となる。 | × |
8 | H02-04-1 | A所有の土地が、AからBへと売り渡された。Aが成年被後見人の場合、Aは、契約の際完全な意思能力を有していてもAB間の契約を取り消し、Cに対して所有権を主張することができる。 | ◯ |
2 誤り
取消権が時効によって消滅するのは、
- 追認できる時から5年間行使しないとき
- 行為の時から20年経過したとき
のいずれかである(民法126条)。
したがって、「成年に達」しただけで契約の取消しができなくなるわけではない。取消しの期限は、「成年に達してから5年間行使しないとき」である。
■類似過去問
内容を見る3 正しい
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、取り消すことができる(民法95条1項)。ただし、表意者に重大な過失があったときは、取り消すことができない(同条2項)。
本肢のAは、「要素の錯誤により契約」をしており、また、「重大な過失がない」。したがって、Aは、AB間の契約を取り消すことができる。
しかし、この取消しは、善意無過失の第三者に対抗することができない(同条3項)。
■類似過去問
内容を見る[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-07-4 | 本件契約が、Aの重大な過失による錯誤に基づくものであり、その錯誤が重要なものであるときは、Aは本件契約の無効を主張することができる。 | ◯ |
2 | R01-02-3 | Aの売却の意思表示に要素の錯誤がある場合、Aの錯誤について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けたときは、Aに重大な過失がなければ、AはBに対する意思表示を錯誤を理由に取消し、Cに対して、その取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | ◯ |
3 | R01-02-4 | Aの売却の意思表示に要素の錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | × |
4 | H17-02-1 | 錯誤が、売却の意思表示の内容の重要な部分に関するものであり、法律行為の要素の錯誤と認められる場合であっても、この売却の意思表示を取り消すことはできない。 | × |
5 | H13-02-1 | Bが、Aや媒介業者の説明をよく聞き、自分でもよく調べて、これなら住宅が建てられると信じて買ったが、地下に予見できない空洞(古い防空壕)があり、建築するためには著しく巨額の費用が必要であることが判明した場合、Bは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことができる。 | ◯ |
6 | H10-07-4 | AのBに対する売却の意思表示につき法律行為の要素に錯誤があった場合、Aは、売却の意思表示の取り消すことができるが、Aに重大な過失があったときは、取り消すことができない。 | ◯ |
7 | H02-04-3 | 売主Aが要素の錯誤により契約をした場合、Aは、重大な過失がないときは、AB間の契約を取り消すことはできるが、Bからの転得者でAの錯誤について善意無過失のCに対して所有権を主張することはできない。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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[共通の前提] AがBにAの所有する甲土地を売却した。 |
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1 | R02s-07-4 | 本件契約が、Aの重大な過失による錯誤に基づくものであり、その錯誤が重要なものであるときは、Aは本件契約の無効を主張することができる。 | × |
2 | R02-06-1 | Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合、AがBに対し、錯誤による取消しができる。 | × |
3 | R02-06-4 | Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合、AがBに対し、錯誤による取消しができる。 | × |
4 | R01-02-3 | Aの売却の意思表示に要素の錯誤がある場合、Aの錯誤について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けたときは、Aに重大な過失がなければ、AはBに対する意思表示を錯誤を理由に取消し、Cに対して、その取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | ◯ |
5 | R01-02-4 | Aの売却の意思表示に要素の錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | × |
6 | 30-01-2 | Aが甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって取消しを主張することができない場合は、BもAの錯誤を理由として取消しを主張することはできない。 | ◯ |
7 | 21-01-1 | 意思表示をなすに当たり、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその意思表示を取り消すことができない。 | ◯ |
8 | 17-02-3 | 売却の意思表示に錯誤がある場合であっても、意思表示者であるAに重過失があるときは、Aは、この売却の意思表示を取り消すことはできない。 | ◯ |
9 | 13-02-1 | Bが、Aや媒介業者の説明をよく聞き、自分でもよく調べて、これなら住宅が建てられると信じて買ったが、地下に予見できない空洞(古い防空壕)があり、建築するためには著しく巨額の費用が必要であることが判明した場合、Bは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことができる。 | ◯ |
10 | 13-02-4 | Bは、代金をローンで支払うと定めて契約したが、Bの重大な過失によりローン融資を受けることができない場合、Bは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことはできない。 | ◯ |
11 | 10-07-4 | AのBに対する売却の意思表示につき法律行為の要素に錯誤があった場合、Aは、売却の意思表示の取り消すことができるが、Aに重大な過失があったときは、取り消すことができない。 | ◯ |
12 | 06-02-2 | Aは、無過失のときに限り、法律行為の要素に錯誤があるとして、その契約を取り消すことができる。 | × |
13 | 02-04-3 | 売主Aが要素の錯誤により契約をした場合、Aは、重大な過失がないときは、AB間の契約を取り消すことはできるが、Bからの転得者でAの錯誤について善意無過失のCに対して所有権を主張することはできない。 | ◯ |
例外の例外 | |||
14 | R02-06-3 | Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合、AがBに対し、錯誤による取消しができる。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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[共通の前提] AがBにAの所有する甲土地を売却した。 |
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1 | R01-02-3 | Aの売却の意思表示に要素の錯誤がある場合、Aの錯誤について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けたときは、Aに重大な過失がなければ、AはBに対する意思表示を錯誤を理由に取消し、Cに対して、その取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | ◯ |
2 | 02-04-3 | 売主Aが要素の錯誤により契約をした場合、Aは、重大な過失がないときは、AB間の契約を取り消すことはできるが、Bからの転得者でAの錯誤について善意無過失のCに対して所有権を主張することはできない。 | ◯ |
4 正しい
通謀虚偽表示による契約は、当事者間(AB間)では無効である(民法94条1項)。しかし、この無効は、善意の第三者に主張することができない(同法94条2項)。
したがって、Aは、AB間の契約の無効をBに対して主張することはできる。しかし、通謀虚偽表示につき、善意無過失であるCに対しては、契約の無効や所有権を主張することができない。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 19-01-2 | 仮装の売買契約でも、売主の動機が債権者の差押えを逃れることにあると買主が知っていた場合、契約は有効に成立する。 | × |
2 | 16-01-2 | 強制執行を逃れるため、売り渡す意思がないのに売買契約を装った場合、契約は無効である。 | ◯ |
3 | 12-04-1 | 通謀虚偽表示の買主が登記を受けていても、売主は、買主に対し、契約の無効を主張できる。 | ◯ |
4 | 09-07-4 | 税金逃れのために土地の所有名義を移転することは、不法原因給付に当たるので、売主は、買主に対し、登記抹消と土地返還を求めることはできない。 | × |
5 | 02-04-4 | 通謀虚偽表示は当事者間では無効だが、善意無過失の転得者には所有権を主張できない。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 30-01-3 | [AがBに甲土地を売却した。]AB間の売買契約が仮装譲渡であり、その後BがCに甲土地を転売した場合、Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができない。 | ◯ |
2 | 27-02-1 | 善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない 。 | ◯ |
3 | 27-02-2 | 善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない 。 | × |
4 | 27-02-3 | Bの債権者である善意のCが、甲土地を差し押さえた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない 。 | ◯ |
5 | 27-02-4 | 甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない 。 | ◯ |
6 | 24-01-1 | Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、B名義の甲土地を差し押さえたBの債権者Cは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。 | ◯ |
7 | 24-01-2 | Aが所有する甲土地につき、AとBの間には債権債務関係がないにもかかわらず、両者が通謀の上でBのために抵当権を設定し、その旨の登記がなされた場合に、Bに対する貸付債権を担保するためにBから転抵当権の設定を受けた債権者Cは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。 | ◯ |
8 | 24-01-3 | Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、Bが甲土地の所有権を有しているものと信じてBに対して金銭を貸し付けたCは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。 | × |
9 | 24-01-4 | AとBが通謀の上で、Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約を仮装した場合に、当該仮装債権をAから譲り受けたCは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。 | ◯ |
10 | 22-04-4 | 第三者は、善意悪意によらず、所有権を主張できない。 | × |
11 | 20-02-2 | 仮装売買の売主→虚偽表示に善意無過失だが登記を備えていない第三者|対抗できる。 | × |
12 | 15-03-4 | 土地の買主B(未登記)→Bと二重譲渡の関係に立ち登記を有する仮想譲渡の買主F|土地所有権を主張できる。 | ◯ |
13 | 12-04-2 | 善意無過失で未登記の第三者→売主|対抗できる。 | ◯ |
14 | 12-04-3 | (Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡) DがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Dは、Bに対して、その所有権を主張することができる。 | ◯ |
15 | 12-04-4 | (Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡) Eが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受け、所有権移転登記を受けていない場合で、Aがこの土地をFに譲渡したとき、Eは、Fに対して、その所有権を主張することができる。 | × |
16 | 07-02-1 | 土地の買主B→Bと二重譲渡の関係に立ち登記を有する仮想譲渡の買主C|登記がなければ土地所有権を主張できない。 | × |
17 | 07-04-1 | 仮想譲渡の売主→悪意の抵当権設定者|抵当権設定の無効を主張できる。 | ◯ |
18 | 07-04-2 | 仮想譲渡の売主→善意有過失の転得者|所有権を主張できる。 | × |
19 | 07-04-4 | 仮想譲渡の売主→悪意の転得者|対抗可、 仮想譲渡の売主→悪意の転得者から取得した善意の転得者|対抗不可。 | ◯ |
20 | 05-03-1 | 売主→善意の第三者に対抗可。 | × |
21 | 05-03-2 | 売主の善意の債権者→善意の転得者に対抗可。 | × |
22 | 05-03-3 | 売主→善意で未登記の第三者に対抗可。 | × |
23 | 05-03-4 | 善意の転得者→売主に対抗可。 | ◯ |
24 | 03-04-3 | Aの所有地にFがAに無断でF名義の所有権移転登記をし、Aがこれを知りながら放置していたところ、FがF所有地として善意無過失のGに売り渡し、GがG名義の所有権移転登記をした場合、Aは、その所有権をGに対抗することができない。 | ◯ |
25 | 02-04-4 | 通謀虚偽表示は当事者間では無効だが、善意無過失の転得者には所有権を主張できない。 | ◯ |
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