【宅建過去問】(平成18年問08)弁済の提供・債務不履行

AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行することとした。決済約定日に、Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので、Aは履行を拒否した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. Bは、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。
  2. Aは、一旦履行の提供をしているので、これを継続しなくても、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。
  3. Aは、一旦履行の提供をしているので、Bに対して代金の支払を求める訴えを提起した場合、引換給付判決ではなく、無条件の給付判決がなされる。
  4. Bが、改めて代金債務を履行するとして、自分振出しの小切手をAの所に持参しても、債務の本旨に従った弁済の提供とはならない。

正解:3

18-08-0

1 正しい

Bは、決済約定日に代金債務につき弁済の提供をしていないので、履行遅滞となる。したがって、遅延損害金の支払債務を負うことになる(民法415条)。

※弁済の提供をしてさえいれば、例えば債権者の協力が得られないため弁済が完了しなかったとしても、それは債務者の責任とはいえない。債務者は、債務不履行責任を免れることができる。本問でいえば、Aは、債務の履行の提供をしているから、その後は、債務不履行責任を負わない。

  弁済の提供 債務不履行責任
売主A ×
買主B ×
■参照項目&類似過去問
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履行期と履行遅滞(民法[15]2(1))
年-問-肢内容正誤
1R02s-04-1債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限が到来したことを知らなくても、期限到来後に履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
218-08-1AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行することとした。決済約定日に、Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので、Aは履行を拒否した。この場合、Bは、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。
308-09-1Bが、A所有の建物を代金8,000万円で買い受け、即日3,000万円を支払った。Bは、履行期前でも、Aに代金を提供して甲建物の所有権移転登記及び引渡しを請求し、Aがこれに応じない場合、売買契約を解除することができる。
×
弁済の提供(民法[20]2(1)(2))
年-問-肢内容正誤
効果
118-08-1代金債務につき弁済の提供をしないと、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。
方法
118-08-4自分振出しの小切手を持参しても、債務の本旨に従った弁済の提供とはならない。
217-07-3自分振出しの小切手を提供すれば、債務の本旨に従った適法な弁済の提供となる。×
316-04-4売主が残代金の受領を拒絶することを明確にしている場合であっても、買主は売買代金を現実に提供しなければ、履行遅滞の責任を負う。×
404-11-1賃借人が家賃を支払おうとしても、賃貸人がこれを受領せず、以後の家賃の受領を明確に拒んだ場合においても、賃借人は、家賃を供託しないと、履行遅滞になる。×

2 正しい

Bは既に履行遅滞に陥っている(民法415条)。したがって、Aは履行の催告をした上で、契約を解除することができる(同法541条)。
この場合、Aは一旦履行の提供をしているので、履行の提供を継続しなくとも構わない(最判昭36.06.22

■参照項目&類似過去問
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催告による解除(民法[23]2(1))
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Bが、A所有の甲建物を買い受け、代金は3カ月後所有権移転登記及び引渡しと引換えに支払う旨の約定がある。
1R03-07-3Bが引渡しを受けた甲建物に契約の内容に適合しない欠陥があることが判明したときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。×
2R02-03-1土地の売買契約において、売主が負担した当該土地の税金相当額を買主が償還する付随的義務が定められ、買主が売買代金を支払っただけで税金相当額を償還しなかった場合、特段の事情がない限り、売主は当該売買契約の解除をすることができない。
3R02-03-2債務者が債務を履行しない場合であっても、債務不履行について債務者の責めに帰すべき事由がないときは付随的義務の不履行となり、特段の事情がない限り、債権者は契約の解除をすることができない。×
4R02-03-3債務不履行に対して債権者が相当の期間を定めて履行を催告してその期間内に履行がなされない場合であっても、催告期間が経過した時における債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、債権者は契約の解除をすることができない。
522-12-2賃貸借契約において、借主が貸主との間の信頼関係を破壊し、契約の継続を著しく困難にした場合であっても、貸主が契約解除するためには、催告が必要である。×
618-08-2Aは、一旦履行の提供をしているので、これを継続しなくても、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBが履行しないときは土地の売買契約を解除できる。
710-08-1Aが定められた履行期に引渡しをしない場合、Bは、代金支払いの提供をしないで、Aに対して履行の催告をしたうえ契約を解除できる。
×
808-09-1Bは、履行期前でも、Aに代金を提供して甲建物の所有権移転登記及び引渡しを請求し、Aがこれに応じない場合、売買契約を解除することができる。
×
908-09-3Aが、Bの代金支払いの受領を拒否してはいないが、履行期になっても建物の所有権移転登記及び引渡しをしない場合、Bは、Aに催告するだけで売買契約を解除することができる。
×
1005-07-1支払期日にAが履行の提供をしたにもかかわらず、Bが代金を支払わない場合、Aは、Bに対し相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内にBの履行がないときは、その契約を解除し、あわせて損害賠償の請求をすることができる。
1105-07-2支払期日にAが履行の提供をしたにもかかわらず、Bが代金を支払わないため、AがBに対し履行を催告した場合において、その催告期間が不相当に短いときでも、催告の時より起算して客観的に相当の期間を経過して、Bの履行がないときは、Aは、改めて催告しなくても、その契約を解除することができる。
1205-07-4支払期日にAが履行の提供をしたにもかかわらず、Bが代金を支払わないため、AがBに対し相当の期間を定めて履行を催告した際、あわせて「催告期間内に履行がないときは、改めて解除の意思表示をしなくても、契約を解除する」との意思表示をし、かつ、その期間内にBの履行がない場合でも、Aがその契約を解除するには、改めて解除の意思表示をする必要がある。×
1304-08-2買主が支払期日に代金を支払わない場合、売主は、不動産の引渡しについて履行の提供をしなくても、催告をすれば、当該契約を解除することができる。×

3 誤り

【用語の整理】
給付判決とは「BはAに対して、代金を支払え」という判決である。さらに、以下の2つに分類できる。

引換給付判決 「Aの移転登記手続と引換に代金を支払え」
無条件の給付判決 「(Aが登記に協力しようとしまいと無条件に)代金を支払え」

【本肢について】
「Aが一旦履行の提供をした」という事実は、あくまで「Aは履行遅滞とならない」という効果を持つに過ぎない。
Aの登記移転義務とBの代金支払義務も引き続き存続し、両者は同時履行の関係に立つ(民法533条)。
したがって、Aが代金の支払を求める場合には、登記移転義務を果たさねばならず、判決は引換給付の判決となる。

4 正しい

銀行の自己宛小切手
銀行が支払保証した小切手
自分振出の小切手 ×

銀行の自己宛小切手や銀行の支払保証のある小切手は、取引界で現金同様に取り扱われている。したがって、それらの提供は、債務の本旨にしたがった弁済の提供と扱われる(最判昭37.09.21)。一方、自分振出しの小切手では不渡り等の危険がある。これを提供したとしても、債務の本旨にしたがった弁済の提供ということはできない(民法493条。最判昭35.11.22)。

■参照項目&類似過去問
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弁済の提供(民法[20]2(1)(2))
年-問-肢内容正誤
効果
118-08-1代金債務につき弁済の提供をしないと、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。
方法
118-08-4自分振出しの小切手を持参しても、債務の本旨に従った弁済の提供とはならない。
217-07-3自分振出しの小切手を提供すれば、債務の本旨に従った適法な弁済の提供となる。×
316-04-4売主が残代金の受領を拒絶することを明確にしている場合であっても、買主は売買代金を現実に提供しなければ、履行遅滞の責任を負う。×
404-11-1賃借人が家賃を支払おうとしても、賃貸人がこれを受領せず、以後の家賃の受領を明確に拒んだ場合においても、賃借人は、家賃を供託しないと、履行遅滞になる。×

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