■講義編■民法[02]意思表示
「土地を買う意思がないのに、『買う』と表示(発言)した。」というように、意思と表示が一致していない場合、その意思表示や契約をどう扱うべきでしょうか?また、だまされたり、脅された結果、意思表示をする場合は、どうでしょうか?
そのような意思と表示を巡るトラブルについて勉強します。
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1.意思と表示の関係
(1).意思と表示の一致
(2).意思と表示の不一致
(3).意思表示の瑕疵(かし)
2.心裡留保
(1).心裡留保とは
表意者がその真意ではないことを知ってした意思表示
(2).当事者間の効果
①原則
有効
②例外
無効
相手方が、表意者の真意でないことを知り、又は知ることができたとき
(悪意or善意有過失)
★過去の出題例★
心裡留保(民法[02]2)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H19-01-1 | Aは甲土地を「1,000万円で売却する」という意思表示を行ったが当該意思表示はAの真意ではなく、Bもその旨を知っていた。この場合、Bが「1,000万円で購入する」という意思表示をすれば、AB間の売買契約は有効に成立する。 | × |
2 | H16-01-1 | Aの売渡し申込みの意思は真意ではなく、BもAの意思が真意ではないことを知っていた場合、AとBとの意思は合致しているので、売買契約は有効である。 | × |
3 | H10-07-3 | Aが、自分の真意ではないと認識しながらBに対する売却の意思表示を行った場合で、BがそのAの真意を知っていたとき、Aは、売却の意思表示の無効を主張できる。 | ◯ |
(3).第三者に対する効果
3.虚偽表示
(1).虚偽表示とは
(2).当事者間の効果
無効
虚偽表示:当事者間の効果(民法[02]3(2))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H19-01-2 | AB間の売買契約が、AとBとで意を通じた仮装のものであったとしても、Aの売買契約の動機が債権者からの差押えを逃れるというものであることをBが知っていた場合には、AB間の売買契約は有効に成立する。 | × |
2 | H16-01-2 | Aが、強制執行を逃れるために、実際には売り渡す意思はないのにBと通じて売買契約の締結をしたかのように装った場合、売買契約は無効である。 | ◯ |
3 | H12-04-1 | Aが、債権者の差押えを免れるため、Bと通謀して、A所有地をBに仮装譲渡する契約をした。BがAから所有権移転登記を受けていた場合でも、Aは、Bに対して、AB間の契約の無効を主張することができる。 | ◯ |
4 | H09-07-4 | 土地を購入したAが、その購入資金の出所を税務署から追及されることをおそれて、Bの所有名義に登記し土地を引き渡した場合は不法原因給付であるから、Aは、Bに対しその登記の抹消と土地の返還を求めることはできない。 | × |
5 | H02-04-4 | A所有の土地が、AからB、Bから善意無過失のCへと売り渡され、移転登記もなされている。Aが差押えを免れるため、Bと通謀して登記名義をBに移した場合、Aは、AB間の契約の無効を主張することはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。 | ◯ |
(3).第三者に対する効果
虚偽表示:第三者に対する効果(民法[02]3(3))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
[Q1-8共通の設定] Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。 | |||
1 | H30-01-3 | AがBに甲土地を売却した。AB間の売買契約が仮装譲渡であり、その後BがCに甲土地を転売した場合、Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができない。 | ◯ |
2 | H27-02-1 | 善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。 | ◯ |
3 | H27-02-2 | 善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。 | × |
4 | H27-02-3 | Bの債権者である善意のCが、甲土地を差し押さえた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。 | ◯ |
5 | H27-02-4 | 甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。 | ◯ |
6 | H24-01-1 | Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、B名義の甲土地を差し押さえたBの債権者Cは、民法第94条第2項の「第三者」に該当する。 | ◯ |
7 | H24-01-2 | Aが所有する甲土地につき、AとBの間には債権債務関係がないにもかかわらず、両者が通謀の上でBのために抵当権を設定し、その旨の登記がなされた場合に、Bに対する貸付債権を担保するためにBから転抵当権の設定を受けた債権者Cは、民法第94条第2項の「第三者」に該当する。 | ◯ |
8 | H24-01-3 | Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、Bが甲土地の所有権を有しているものと信じてBに対して金銭を貸し付けたCは、民法第94条第2項の「第三者」に該当する。 | × |
9 | H24-01-4 | AとBが通謀の上で、Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約を仮装した場合に、当該仮装債権をAから譲り受けたCは、民法第94条第2項の「第三者」に該当する。 | ◯ |
10 | H22-04-4 | Aは債権者の追及を逃れるために売買契約の実態はないのに登記だけBに移し、Bがそれに乗じてCとの間で売買契約を締結した場合には、AB間の売買契約が存在しない以上、Cは所有権を主張することができない。 | × |
11 | H20-02-2 | 所有権がAからBに移転している旨が登記されている甲土地について、CはBとの間で売買契約を締結したが、AB間の所有権移転登記はAとBが通じてした仮装の売買契約に基づくものであった場合、CがAB間の売買契約が仮装であることを知らず、知らないことに無過失であっても、Cが所有権移転登記を備えていなければ、Aは所有者であることをCに対して主張できる。 | × |
12 | H15-03-4 | Aは、自己所有の甲地をBに売却し引き渡したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。AとCが、通謀して甲地をAからCに仮装譲渡し、所有権移転登記を得た場合、Bは登記がなくとも、Cに対して甲地の所有権を主張することができる。 | ◯ |
13 | H12-04-2 | Cが、AB間の契約の事情につき善意無過失で、Bからこの土地の譲渡を受けた場合は、所有権移転登記を受けていないときでも、Cは、Aに対して、その所有権を主張することができる。 | ◯ |
14 | H12-04-3 | CがAからこの土地の譲渡を受けた場合には、所有権移転登記を受けていないときでも、Cは、Bに対して、その所有権を主張することができる。 | ◯ |
15 | H12-04-4 | Cが、AB間の契約の事情につき善意過失で、Bからこの土地の譲渡を受け、所有権移転登記を受けていない場合で、Aがこの土地をDに譲渡したとき、Cは、Dに対して、その所有権を主張することができる。 | × |
16 | H07-02-1 | Aの所有する土地をBが取得した後、Bが移転登記をする前に、CがAから登記を移転した。BがAから購入した後、AがCに仮装譲渡し、登記をC名義に移転した場合、BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できない。 | × |
17 | H07-04-1 | Bがこの土地にCに対する抵当権を設定し、その登記をした場合で、CがAB間の契約の事情を知っていたときは、Aは、Cに対して抵当権設定行為の無効を主張することができる。 | ◯ |
18 | H07-04-2 | Bがこの土地をCに売却し、所有権移転登記をした場合で、CがAB間の契約の事情を知らなかったことについて過失があるときは、Aは、Cに対してこの土地の所有権を主張することができる。 | × |
19 | H07-04-4 | BがCに、さらにCがDに、それぞれこの土地を売却し、所有権移転登記をした場合で、AB間の契約の事情について、Cは知っていたが、Dが知らなかったとき、Dは、Aに対しこの土地の取得を主張することができる。 | ◯ |
[Q20-23共通の設定] Aが、その所有地について、債権者Xの差押えを免れるため、Bと通謀して、登記名義をBに移転したところ、Bは、その土地をCに譲渡した。 | |||
20 | H05-03-1 | AB間の契約は無効であるから、Aは、Cが善意であっても、Cに対し所有権を主張することができる。 | × |
21 | H05-03-2 | Cが善意であっても、Xが善意であれば、Xは、Cに対し売買契約の無効を主張することができる。 | × |
22 | H05-03-3 | Cが善意であっても、Cが所有権移転の登記をしていないときは、Aは、Cに対し所有権を主張することができる。 | × |
23 | H05-03-4 | Cがその土地をDに譲渡した場合、Dは、Cの善意悪意にかかわらず、Dが善意であれば、Aに対し所有権を主張することができる。 | ◯ |
24 | H03-04-3 | Aの所有地にBがAに無断でB名義の所有権移転登記をし、Aがこれを知りながら放置していたところ、BがB所有地として善意無過失のCに売り渡し、CがC名義の所有権移転登記をした場合、Aは、その所有権をCに対抗することができない。 | ◯ |
25 | H02-04-4 | A所有の土地が、AからB、Bから善意無過失のCへと売り渡され、移転登記もなされている。Aが差押えを免れるため、Bと通謀して登記名義をBに移した場合、Aは、AB間の契約の無効を主張することはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。 | ◯ |
4.錯誤
(1).錯誤のイメージ(表示の錯誤)
表意者の意思と表示が違っており、そのことにつき表意者が知らないケース
(2).錯誤の類型
①表示の錯誤
意思表示に対応する意思を欠く錯誤
②動機の錯誤
法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
★過去の出題例★
動機の錯誤(民法[02]4(2)②)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02-06-2 | Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言ったところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合 | × |
2 | R02-06-3 | Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合 | ◯ |
3 | H28-03-4 | AB間の売買契約が、Bが意思表示の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。 | × |
4 | H23-01-1 | A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された。Bは、甲土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、意思表示の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。 | × |
5 | H21-01-3 | 意思表示をなすについての動機を表意者が当該意思表示の基礎とし、かつ、その旨を相手方に明示的に表示した場合は、表意者は、意思表示を取り消すことができる。 | ◯ |
6 | H21-01-4 | 意思表示をなすについての動機を表意者が当該意思表示の基礎としたが、その旨を相手方に黙示的に表示したにとどまる場合は、表意者は、意思表示を取り消すことができない。 | × |
7 | H17-02-2 | AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。錯誤が、法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤であり、その事情をAがBに対して法律行為の基礎として表示した場合であっても、Aは、この売却の意思表示を取り消すことができない。 | × |
8 | H13-02-3 | Aが、Bに住宅用地を売却した。Aが、今なら課税されないと信じていたが、これをBに話さないで売却した場合、後に課税されたとしても、Aは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことはできない。 | ◯ |
(3).当事者間の効果
①原則
取消し◯
★過去の出題例★
当事者間の効果(民法[02]4(2)①)
[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。
[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-07-4 | 本件契約が、Aの重大な過失による錯誤に基づくものであり、その錯誤が重要なものであるときは、Aは本件契約の無効を主張することができる。 | × |
2 | H28-03-4 | AB間の売買契約が、Bが意思表示の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。 | × |
3 | H25-01-1 | 意思表示に法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があった場合、表意者は取り消すことができる。 | ◯ |
4 | H23-01-1 | Bは、甲土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、意思表示の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。 | × |
②【例外1】重要な錯誤でないとき
錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものでないとき
→取消し×
【例外1】重要な錯誤(要素の錯誤)でないとき(民法[02]4(2)②)
[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。
[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-07-4 | 本件契約が、Aの重大な過失による錯誤に基づくものであり、その錯誤が重要なものであるときは、Aは本件契約の無効を主張することができる。 | ◯ |
2 | R01-02-3 | Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aの錯誤について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けたときは、Aに重大な過失がなければ、AはBに対する意思表示を錯誤を理由に取消し、Cに対して、その取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | ◯ |
3 | R01-02-4 | Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | × |
4 | H17-02-1 | 錯誤が、売却の意思表示の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである場合であっても、この売却の意思表示を取り消すことはできない。 | × |
5 | H13-02-1 | Bが、Aや媒介業者の説明をよく聞き、自分でもよく調べて、これなら住宅が建てられると信じて買ったが、地下に予見できない空洞(古い防空壕)があり、建築するためには著しく巨額の費用が必要であることが判明した場合、Bは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことができる。 | ◯ |
6 | H10-07-4 | AのBに対する売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があった場合、Aは、売却の意思表示の取り消すことができるが、Aに重大な過失があったときは、取り消すことができない。 | ◯ |
7 | H02-04-3 | AのBに対する売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があった場合、Aは、重大な過失がないときは、AB間の契約を取り消すことはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。 | ◯ |
③【例外2】表意者の重過失があるとき
(a).表意者の重過失
錯誤が表意者の重大な過失(重過失)による場合
→取消し×
(b).例外の例外
表意者に重過失があっても、以下のケースでは、取消し◯
★過去の出題例★
【例外2】表意者の重過失があるとき(民法[02]4(2)②)
[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。
[共通の前提]
AがBにAの所有する甲土地を売却した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-07-4 | 本件契約が、Aの重大な過失による錯誤に基づくものであり、その錯誤が重要なものであるときは、Aは本件契約の無効を主張することができる。 | × |
2 | R02-06-1 | Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合 | × |
3 | R02-06-4 | Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合 | × |
4 | R01-02-3 | Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aの錯誤について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けたときは、Aに重大な過失がなければ、AはBに対する意思表示を錯誤を理由に取消し、Cに対して、その取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | ◯ |
5 | R01-02-4 | Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aに重大な過失があったとしても、AはBに対して、錯誤による当該意思表示の取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | × |
6 | H30-01-2 | Aが甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって取消しを主張することができない場合は、BもAの錯誤を理由として取消しを主張することはできない。 | ◯ |
7 | H21-01-1 | 意思表示をなすに当たり、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその意思表示を取り消すことができない。 | ◯ |
8 | H17-02-3 | 売却の意思表示に錯誤がある場合であっても、意思表示者であるAに重過失があるときは、Aは、この売却の意思表示を取り消すことはできない。 | ◯ |
9 | H13-02-1 | Bが、Aや媒介業者の説明をよく聞き、自分でもよく調べて、これなら住宅が建てられると信じて買ったが、地下に予見できない空洞(古い防空壕)があり、建築するためには著しく巨額の費用が必要であることが判明した場合、Bは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことができる。 | ◯ |
10 | H13-02-4 | Bは、代金をローンで支払うと定めて契約したが、Bの重大な過失によりローン融資を受けることができない場合、Bは、錯誤を理由に売買契約を取り消すことはできない。 | ◯ |
11 | H10-07-4 | AのBに対する売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があった場合、Aは、売却の意思表示の取り消すことができるが、Aに重大な過失があったときは、取り消すことができない。 | ◯ |
12 | H06-02-2 | Aは、無過失のときに限り、法律行為の要素に錯誤があるとして、その契約を取り消すことができる。 | × |
13 | H02-04-3 | Aが要素の錯誤により契約をした場合、Aは、重大な過失がないときは、AB間の契約の取り消すことはできるが、Cに対して所有権を主張することはできない。 | ◯ |
例外の例外 | |||
14 | R02-06-3 | Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合、Aは、Bに対し、錯誤による取消しができる。 | ◯ |
(4).第三者に対する効果
①取消し前の第三者
②取消し後の第三者
第三者への対抗(民法[02]4)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R01-02-3 | AがBに甲土地を売却した。Aの売却の意思表示につき、その目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤がある場合、Aの錯誤について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けたときは、Aに重大な過失がなければ、AはBに対する意思表示を錯誤を理由に取消し、Cに対して、その取消しを主張して、甲土地の返還を請求することができる。 | ◯ |
2 | H02-04-3 | A所有の土地が、AからB、BからCへと売り渡され、移転登記もなされている。Aが売却の意思表示の目的及び取引上の社会通念に照らして重要な錯誤により契約をした場合、Aは、重大な過失がないときは、AB間の契約を取り消すことができるが、Aの錯誤について善意無過失のCに対して所有権を主張することはできない。 | ◯ |
(5).表意者以外による取消し主張
①表意者が錯誤を認めていない
②表意者に無効主張の意思がない
→表意者以外による主張×
★過去の出題例★
表意者以外による取消し主張(民法[02]4(5))
[共通の前提]
Aが、Bに甲土地を売却した。
[共通の前提]
Aが、Bに甲土地を売却した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H30-01-2 | AがBに甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって取消しを主張することができない場合は、BもAの錯誤を理由として取消しを主張することはできない。 | ◯ |
2 | H28-03-4 | AB間の売買契約が、Bが意思表示の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。 | × |
3 | H21-01-2 | 表意者自身において、その意思表示に瑕疵を認めず、民法第95条に基づく意思表示の取消しを主張する意思がない場合は、第三者がその意思表示の取消しを主張することはできない。 | ◯ |
4 | H17-02-4 | AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが、その意思表示は錯誤によるものであった。錯誤を理由としてこの売却の意思表示を取り消すことができる場合、意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは、Bはこの売却の意思表示を取り消すことができる。 | × |
5 | H13-02-2 | 売買契約に重要な錯誤があった場合は、Bに代金を貸し付けたCは、Bがその錯誤を認めず、売買契約を取り消す意思がないときでも、Aに対し、Bに代位して、売買契約を取り消すことができる。 | × |
5.詐欺
(1).詐欺とは
(2).当事者間の効果
(3).第三者に対する効果
①取消し前の第三者
詐欺による取消し前の第三者(民法[02]5(3)①、民法[07]2(1)②))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
|
---|---|---|---|
1 | R01-02-2 | [AがBに甲土地を売却し、Bが所有権移転登記を備えた。]AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消す前に、Bの詐欺について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えていた場合、AはCに対して、甲土地の返還を請求することができる。 | ◯ |
2 | 28-03-2 | 売主Aが買主Bの詐欺を理由に甲土地の売却の意思表示を取り消しても、取消しより前にBが甲土地をDに売却し、Dが所有権移転登記を備えた場合には、DがBの詐欺の事実を知っていたか否かにかかわらず、AはDに対して甲土地の所有権を主張することができない。 | × |
3 | 14-01-4 | 買主が建物を、詐欺について善意無過失の第三者に転売して所有権移転登記を済ませても、売主は詐欺による取消しをして、第三者から建物の返還を求めることができる。 | × |
4 | 08-05-1 | 第三者が移転登記を受ける際に、売買契約が買主の詐欺に基づくものであることを知らず、かつ、知ることができなかった場合で、当該登記の後に売主により売主・買主間の売買契約が、取り消されたとき、第三者は、売主に対して土地の所有権を対抗できる。 | ◯ |
5 | 01-03-1 | A所有の土地が、AからB、BからCへと売り渡され、移転登記も完了している場合、Aが、Bにだまされて土地を売ったので、その売買契約を取り消したときは、そのことを善意無過失のCに対し対抗することができる。 | × |
②取消し後の第三者
詐欺による取消し後の第三者(民法[02]5(3)②)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
|
---|---|---|---|
1 | R01-02-1 | [AがBに甲土地を売却し、Bが所有権移転登記を備えた。]AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消した後、CがBから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えた場合、AC間の関係は対抗問題となり、Aは、いわゆる背信的悪意者ではないCに対して、登記なくして甲土地の返還を請求することができない。 | ◯ |
2 | 23-01-3 | A所有の甲土地につき、AとBとの間で売買契約が締結された。 AがBにだまされたとして詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消した後、Bが甲土地をAに返還せずにDに転売してDが所有権移転登記を備えても、AはDから甲土地を取り戻すことができる。 | × |
3 | 19-06-1 | 不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に、売主が当該契約に係る意思表示を詐欺によるものとして適法に取り消した場合、売主は、その旨の登記をしなければ、当該取消後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。 | ◯ |
4 | 09-06-1 | Aが、Bに土地を譲渡して登記を移転した後、詐欺を理由に売買契約を取り消した場合で、Aの取消し後に、BがCにその土地を譲渡して登記を移転したとき、Aは、登記なしにCに対して土地の所有権を主張できる。 | × |
(4).第三者による詐欺
第三者による詐欺(民法[02]5(4))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 30-01-1 | [AがBに甲土地を売却した。]甲土地につき売買代金の支払と登記の移転がなされた後、第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、原状回復のため、BはAに登記を移転する義務を、AはBに代金を返還する義務を負い、各義務は同時履行の関係となる。 | ◯ |
2 | 30-01-4 | [AがBに甲土地を売却した。]Aが第三者の詐欺によってBに甲土地を売却し、その後BがCに甲土地を転売した場合、Bが第三者の詐欺の事実を知らず、かつ、知ることができなかったとしても、Cが第三者の詐欺の事実を知っていれば、Aは詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。 | × |
3 | 23-01-2 | 第三者の詐欺の場合、相手方が知っていたとしても、取消不可。 | × |
4 | 16-01-3 | 第三者の詐欺の場合、相手方の知不知に関わらず、取消不可。 | × |
5 | 14-01-1 | 第三者の詐欺の場合、相手方が知り、又は知ることができたときでないと、取消不可。 | ◯ |
6 | 10-07-1 | 第三者の詐欺の場合、相手方が知っているときは、取消可能。 | ◯ |
7 | 04-02-3 | 代理人が第三者に騙された場合、相手方が善意無過失でも、本人から取消可能。 | × |
8 | 04-02-4 | 代理人が第三者に騙された場合、相手方が善意無過失であれば、本人から取消不可。 | ◯ |
6.強迫
(1).強迫とは
(2).当事者間の効果
(3).第三者に対する効果
①取消し前の第三者
②取消し後の第三者
強迫の効果(民法[02]6(2)(3))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
当事者間の効果 | |||
1 | R06-01-3 | 詐欺による意思表示は取り消すことによって初めから無効であったとみなされるのに対し、強迫による意思表示は取り消すまでもなく無効である。 | × |
2 | H29-02-4 | AがBに甲土地を売却したが、AがBの強迫を理由に売買契約を取り消した場合、甲土地の所有権はAに復帰し、初めからBに移転しなかったことになる。 | ◯ |
第三者に対する効果 |
|||
[共通の前提] AがBにAの所有する甲土地を売却した。Bは、甲土地をCに売却した。 |
|||
1 | H23-01-4 | BがCに甲土地を転売した後に、AがBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合には、CがBによる強迫につき知らず、かつ、知ることができなかったときであっても、AはCから甲土地を取り戻すことができる。 | ◯ |
2 | H22-04-2 | 甲土地はAからB、BからCと売却されており、AB間の売買契約がBの強迫により締結されたことを理由として取り消された場合には、BC間の売買契約締結の時期にかかわらず、Aは登記がなくてもCに対して所有権を主張することができる。 | × |
3 | H20-02-4 | CはBとの間で売買契約を締結して所有権移転登記をしたが、その後AはBの強迫を理由にAB間の売買契約を取り消した場合、CがBによる強迫を知っていたときに限り、Aは所有者であることをCに対して主張できる。 | × |
4 | H10-07-2 | AのBに対する売却の意思表示がBの強迫によって行われた場合、Aは、売却の意思表示を取り消すことができるが、その取消しをもって、Bからその取消し前に当該土地を買い受けた善意無過失のDには対抗できない。 | × |
5 | H03-02-全 | Cが、Bからその土地を購入した後、AがBの強迫を理由としてAB間の売買契約を取り消した場合、Cは、Aによる土地の明渡しの請求を拒むことができない。 | ◯ |
6 | H01-03-4 | Aは、Bに強迫されて土地を売ったので、その売買契約を取り消した場合、そのことをBからその取消し前に当該土地を買い受けた善意無過失のCに対し対抗することができる。 | ◯ |
(4).第三者による強迫
第三者による強迫(民法[02]6(4))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 19-01-3 | 第三者の強迫による意思表示は、強迫を相手方が知っていたかどうかにかかわらず、取消可能である。 | ◯ |
2 | 16-01-4 | Aが、Cの強迫によってBとの間で売買契約を締結した場合、Cの強迫をBが知らず、かつ、知ることができなかったときでなければ、Aは売買契約を取り消すことができない。 | × |
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一問一答編では、選択肢単位に分解・整理した過去問を実際に解き、その後に、(1)基本知識の確認、(2)正誤を見極める方法、の講義を視聴します。この繰返しにより、「本試験でどんなヒッカケが出るのか?」「どうやってヒッカケを乗り越えるのか?」という実戦対応能力を身につけます。
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先生のサイトをいつも参照させて頂いています。1つ質問がございます。ご承知の通り、錯誤取消前後の第三者に関する民法規定は、2020年4月施行の改定民法から以下のように変更になったと思います。
「錯誤取消の前後に関わらず善意無過失の第三者が常に保護される(民法95条4項)」
本頁の講義内容は改訂される時間がないまま今に至っていることと存じますが、有料の宅建講座の方には改訂内容は反映されておりますでしょうか?
そのような条文は、存在しません。
民法95条4項は、以下の内容です。
これは、詐欺に関する民法96条3項と同様の規定になっています。
そして、両者の効果も同様です。
つまり、これらの規定は、「取消し前の第三者」を保護するためのものです。
一方、「取消し後の第三者」については、「対抗問題」として考えます。
つまり、「登記の有無」が勝敗を決定するわけです。
これは、「錯誤」や「詐欺」にとどまらず、「強迫」であっても同様です。
以上については、令和2年の民法改正以来、有料講座どころか無料公開講座でも、正しい内容の講義をしています。
つまり、ここで解説しているとおりです。
4錯誤
(5).表意者以外による取消し主張
①表意者が錯誤を認めていない
②表意者に無効主張の意思がない
→表意者以外による主張×
の説明で、上記以外の場面では表意者以外でも取消しを主張できると
理解したのですが、
30-01-2 表意者Aが甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、
Aに重大な過失があって取消しを主張することができない場合は、
BもAの錯誤を理由として取消しを主張することはできない。
こちらの過去問の答えは○でした。
Aに取消しの意思があればBが取消しを主張できると思ったのですが、
どのように理解すればよいでしょうか。
いちの様
久しぶりの質問、ありがとうございます。
平成30年問01肢2
この選択肢には、2つの誤りがあります。
(1)Aが取消しできるか
この問題では、表意者Aに「重大な過失」があります。
そのため、Aからであっても、意思表示を取り消すことができません。
(2)Bが取り消しできるか。
もしも、Aに重過失がなければ、Aから意思表示を取り消すことは可能です。
では、意思表示の相手方であるBから、取消しを主張できるでしょうか。
錯誤による意思表示の取消しは、表意者を保護するための制度です。
したがって、取消権を持つのも表意者に限られます。
錯誤による意思表示の相手方など、上記以外の人から、取消しを主張することは不可能です。
本問でいえば、Aに取消権が認められる場合であっても、Bが取消しを主張することはできません。
(3)参照過去問
このことについては、この問題の解説動画で詳しく説明しています。
以上をヒントに、もう一度見直しておきましょう。
9月2日の一日一問一答の解説を読んでいて、モヤモヤが出てきました。
心裡留保と虚偽表示について、教えてください。
善意の第三者には抵抗することができない、とありますが、これは、過失の有無に無関係なく、たとえ第三者が善意有過失でも対抗することは不可能、という理解であっていますか。
ご理解の通りです。
心裡留保と虚偽表示による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができません。
(第三者の過失の有無は、問われません。)