【宅建過去問】(令和02年12月問02)代理

AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を授与した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. Bが自己又は第三者の利益を図る目的で、Aの代理人として甲土地をDに売却した場合、Dがその目的を知り、又は知ることができたときは、Bの代理行為は無権代理とみなされる。
  2. BがCの代理人も引き受け、AC双方の代理人として甲土地に係るAC間の売買契約を締結した場合、Aに損害が発生しなければ、Bの代理行為は無権代理とはみなされない。
  3. AがBに授与した代理権が消滅した後、BがAの代理人と称して、甲土地をEに売却した場合、AがEに対して甲土地を引き渡す責任を負うことはない。
  4. Bが、Aから代理権を授与されていないA所有の乙土地の売却につき、Aの代理人としてFと売買契約を締結した場合、AがFに対して追認の意思表示をすれば、Bの代理行為は追認の時からAに対して効力を生ずる。

正解:1

設定の確認

1 正しい

代理人Bは、表面的には、代理権の範囲内の行為(甲土地の売却)をしています。しかし、実際には、自己又は第三者の利益を図る目的(例えば、売買代金を着服する目的)で代理行為を行っているわけです。このようなケースを代理権の濫用といいます。
代理権の濫用があった場合、相手方がその目的について悪意又は善意でも過失があるときは、無権代理行為とみなされます(民法107条)。
本肢では、買主Dが「その目的を知り、又は知ることができた」とあります。したがって、Bの行為は、無権代理とみなされます。

■参照項目&類似過去問
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代理権の濫用(民法[03]6)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
甲土地の所有者Aの代理人Bが、買主Cとの間で甲土地の売買契約を締結する。
1R03s-05-1BがAの代理人として第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、相手方Cがその目的を知っていたとしても、BC間の法律行為の効果はAに帰属する。
×
2R02s-02-1Bが自己又は第三者の利益を図る目的で、Aの代理人としてA所有の甲土地をCに売却した場合、Cがその目的を知り、又は知ることができたときは、Bの代理行為は無権代理とみなされる。
330-02-1Bが売買代金を着服する意図で本件契約を締結し、Cが本件契約の締結時点でこのことを知っていた場合であっても、本件契約の効果は当然にAに帰属する。
×

2 誤り

Aの代理人であるBが、相手方Cの代理人にもなっています。つまり、双方代理の問題です。

双方代理は、原則として、無権代理行為とみなされます(民法108条1項本文)。例外的に有効となるのは、以下の場合に限られます(同項ただし書き)。

  1. 本人があらかじめ許諾した行為
  2. 債務の履行

本肢は、「Aに損害が発生しなければ」としていますが、これは、結論に全く関係がありません。損害があろうがなかろうが、Bの行為は、無権代理行為です。

■参照項目&類似過去問
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双方代理(民法[03]5(2)(3))
年-問-肢内容正誤
1R02s-02-2AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を授与した。BがCの代理人も引き受け、AC双方の代理人として甲土地に係るAC間の売買契約を締結した場合、Aに損害が発生しなければ、Bの代理行為は無権代理とはみなされない。×
230-02-3[Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約を締結した。]BがCの代理人にもなって本件契約を成立させた場合、Aの許諾の有無にかかわらず、本件契約は無効となる。
×
324-02-3売主・買主の承諾があれば、双方代理は有効。
422-02-4売主・買主の承諾があれば、双方代理は有効。
521-02-4売主に損失が発生しなければ、売主・買主双方の代理が可能。×
620-03-2売主から書面で代理権を与えられていれば、売主・買主双方の代理が可能。×
708-02-1登記申請について、買主の同意があれば、売主の代理人が、売主・買主双方を代理できる。
803-03-4本人・相手方の同意があれば、双方代理が可能。
902-05-2売主の代理人が売主に隠れて当該土地の売買について買主からも代理権を与えられていた場合は、当該契約は効力を生じない。

3 誤り

代理権が消滅した後であっても、相手方が善意無過失であれば、表見代理が成立します(民法112条1項)。つまり、AE間の売買契約は、有効になるわけです。もちろん、有効な売買契約に基づいて、Aは、Eに対して甲土地を引き渡す責任を負います。

このような可能性があるにもかかわらず、「AがEに対して甲土地を引き渡す責任を負うことはない」と言い切る本肢は誤りです。

■参照項目&類似過去問
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表見代理(民法[04]5)

[共通の設定]
A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した。
年-問-肢内容正誤
権限外の行為の表見代理
1H26-02-イ不動産を担保に金員を借り入れる代理権を与えられた代理人が、本人の名において不動産を売却した場合、相手方において本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由があるときは、表見代理の規定を類推適用できる。
2H18-02-2AがBに対し、甲土地に抵当権を設定する代理権を与えているが、Bの売買契約締結行為は権限外の行為となる場合、甲土地を売り渡す具体的な代理権がBにあるとCが信ずべき正当な理由があるときは、AC間の本件売買契約は有効となる。
3H16-02-1AとBとが夫婦であり契約に関して何ら取り決めのない場合には、不動産売買はAB夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内にないとCが考えていた場合も、本件売買契約は有効である。
×
4H14-02-2Aが、BにA所有土地を担保として、借金をすることしか頼んでいない場合、CがBに土地売却の代理権があると信じ、それに正当の事由があっても、AC間に売買契約は成立しない。
×
5H11-07-3Aが、甲土地についてBに賃料の徴収の代理をさせていた。Bによる甲土地の売却をAが追認しない場合でも、CがBに代理権があると信じ、そう信じることについて正当な理由があるとき、Cは、直接Aに対して所有権移転登記の請求をすることができる。
6H08-02-2BがAから抵当権設定の代理権を与えられ、土地の登記済証、実印、印鑑証明書の交付を受けていた場合で、CがAC間の売買契約についてBに代理権ありと過失なく信じたとき、Cは、Aに対して土地の引渡しを求めることができる。
7H06-04-2AがBに抵当権設定の代理権しか与えていなかったにかかわらず、Bが売買契約を締結した場合、Aは、Cが善意無過失であっても、その売買契約を取り消すことができる。
×
代理権消滅後の表見代理
1R03s-05-4AがBに与えた代理権が消滅した後にBが行った代理権の範囲内の行為について、相手方Cが過失によって代理権消滅の事実を知らなかった場合でも、Aはその責任を負わなければならない。
×
2R02s-02-3AがBに授与した代理権が消滅した後、BがAの代理人と称して、甲土地をCに売却した場合、AがCに対して甲土地を引き渡す責任を負うことはない。
×
3H17-03-イAが従前Bに与えていた代理権が消滅した後であっても、Cが代理権の消滅について善意無過失であれば、当該売買契約によりCは甲土地を取得することができる。
4H08-02-4Bが、Aから土地売買の委任状を受領した後、破産手続開始の決定を受けたのに、Cに当該委任状を示して売買契約を締結した場合、Cは、Bが破産手続開始の決定を受けたことを知っていたときでも、Aに対して土地の引渡しを求めることができる。
×
5H06-04-4Bが代理権を与えられた後売買契約締結前に破産すると、Bの代理権は消滅するが、Bの代理権が消滅しても、Cが善意無過失であれば、その売買契約は有効である。
代理権授与の表示による表見代理
1R03s-05-2AがBに代理権を与えていないにもかかわらず代理権を与えた旨をCに表示し、Bが当該代理権の範囲内の行為をした場合、CがBに代理権がないことを知っていたとしても、Aはその責任を負わなければならない。
×
2H18-02-1AがCに対し、Bは甲土地の売却に関する代理人であると表示していた場合、Bに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことをCが過失により知らなかったときは、AC間の本件売買契約は有効となる。
×
表見代理が成立しないケース
1R03s-05-3BがAから何ら代理権を与えられていないにもかかわらずAの代理人と詐称してCとの間で法律行為をし、CがBにAの代理権があると信じた場合であっても、原則としてその法律行為の効果はAに帰属しない。
2H04-03-1Aの所有する不動産について、Bが無断でAの委任状を作成して、Aの代理人と称して、善意無過失の第三者Cに売却し、所有権移転登記を終えた。Cが善意無過失であるから、AC間の契約は、有効である。
×

4 誤り

Bが持っているのは、甲土地売却に関する代理権です。乙土地の売却を代理するのは、無権代理行為ということになります。
無権代理行為は、原則として無効です。しかし、本人がその有効性を認めるのであれば、追認することが可能です(民法113条1項)。

無権代理行為の追認は、契約の時にさかのぼってその効力を生じます(同法116条本文)。
本肢は、「追認の時からAに対して効力を生ずる」とする点が誤りです。

■参照項目&類似過去問
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無権代理:本人の権限(追認権・追認拒絶権)(民法[04]2(1))
年-問-肢内容正誤
1R02s-02-4AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を授与した。Bが、Aから代理権を授与されていないA所有の乙土地の売却につき、Aの代理人としてFと売買契約を締結した場合、AがFに対して追認の意思表示をすれば、Bの代理行為は追認の時からAに対して効力を生ずる。×
2R01-05-1本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合、その後は本人であっても無権代理行為を追認して有効な行為とすることはできない。
3R01-05-3無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
426-02-ア無権代理行為を本人が追認する場合、契約の効力は、追認をした時から将来に向かって生ずる。×
524-04-1無権代理行為を本人が追認した場合、売買契約は有効となる。
617-03-ウ無権代理行為を本人が追認した場合、売買契約は有効となる。
714-02-4[Aが、Bの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結する。]AがBに無断でCと売買契約をしたが、Bがそれを知らないでDに売却して移転登記をした後でも、BがAの行為を追認すれば、DはCに所有権取得を対抗できなくなる。×
811-07-1本人は無権代理行為を相手方に対して追認することができる。
909-01-1無権代理行為を本人または相手方が追認した場合、売買契約は有効となる。×
1006-04-3本人の追認により契約は有効となるが、その追認は相手方に対して直接行うことを要し、無権代理人に対して行ったときは、相手方がその事実を知ったとしても、契約の効力を生じない。×
1104-03-4無権代理行為は無効であるが、本人が追認すれば、新たな契約がなされたとみなされる。×

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