【宅建過去問】(平成08年問07)根抵当権
貸付金債権を担保するための根抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- 根抵当権は、債権者が債務者に対して将来有することとなる不特定の貸付金債権であっても、それが一定の種類の取引によって生ずるものに限定されているときは、その極度額の限度において担保するために設定することができる。
- 登記された極度額が1億円で、貸付金債権の元本も1億円で確定した場合、根抵当権者は、1億円と満期となった最後の2年分の利息及び損害金の額の合計額について、根抵当権に基づく優先弁済権を主張することができる。
- 貸付金債権の元本が確定した場合、根抵当権者は、確定期日の被担保債権額のほか、確定期日後に生じた利息及び損害金についても、登記された極度額に達するまで、根抵当権に基づく優先弁済権を主張することができる。
- 貸付金債権の元本の確定期日を定めなかった場合で根抵当権設定時より3年を経過したとき、根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定を請求でき、請求の時より2週間後に担保すべき元本が確定する。
正解:2
最初に、根抵当権と普通抵当権(根抵当権以外の抵当権)を比較しておこう。この表がヒッカケの元となっている選択肢は、数多い。
根抵当権 | 普通抵当権 | |
被担保債権の特定 | 不要 | 必要 |
付従性 | なし | あり |
随伴性 | なし | あり |
被担保債権の範囲 | 極度額 | 元本+最後の2年分の利息 |
1 正しい
根抵当権は「一定の範囲に属する不特定の債権をその極度額の限度」内で担保するものである(民法398条の2第1項)。よって、被担保債権の特定は不要であり、一定の種類の取引によって生ずるものに限定されていれば十分である。
※普通抵当権では設定契約を締結するためには、被担保債権を特定することが必要である。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H26-04-1 | 普通抵当権では被担保債権の特定が必要だが、根抵当権ではあらゆる範囲の不特定の債権を極度額の限度で被担保債権にできる。 | × |
2 | H15-06-1 | 普通抵当権でも、根抵当権でも、被担保債権の特定が必要である。 | × |
3 | H15-06-2 | 普通抵当権でも、根抵当権でも、現在は発生しておらず、将来発生する可能性がある債権を被担保債権とすることができる。 | ◯ |
4 | H12-05-1 | 根抵当権は、根抵当権者が債務者に対して有する現在及び将来の債権をすべて担保するという内容で、設定することができる。 | × |
5 | H08-07-1 | 根抵当権は、将来有することとなる不特定の貸付金債権であっても、一定の種類の取引によって生ずるものに限定されているときは、設定することができる。 | ◯ |
6 | H03-07-2 | 不動産を目的とする担保物権の中には、被担保債権が将来のものであっても存在するものがある。 | ◯ |
2 誤り
根抵当権では、極度額の範囲内であれば、元本や利息等の全部が担保される(民法398条の3第1項)。しかし、逆に、極度額を超えた部分については、例え「最後の2年分の金利」であっても担保されない。
したがって、本肢のような「確定元本が極度額以下で、最後の2年分の約定金利を加えると極度額を超える」ケースでは、元本+金利のうち、極度額の範囲内の部分が担保されるのみである。極度額を超える部分について根抵当権を行使することはできない。
※普通抵当権では、遅延損害金について、最後の2年分を超えない利息の範囲内でしか担保されない(同法375条)。本問はこの知識とのヒッカケ。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 23-04-1 | 極度額の範囲内でも、遅延損害金として満期となった最後の2年分の利息しか請求できない。 | × |
2 | 19-08-3 | 極度額を超えても、遅延損害金として満期となった最後の2年分の利息を請求できる。 | × |
3 | 19-08-4 | (Aは、自己所有の甲不動産につき、B信用金庫に対し、極度額を3,000万円、被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」とする第1順位の根抵当権を設定し、その旨の登記をした。)Aが友人CのためにB信用金庫との間で保証契約を締結し保証債務を負担した場合、B信用金庫のAに対するこの保証債権は、「信用金庫取引による債権」に含まれ、この根抵当権で担保される。 | ◯ |
4 | 15-06-4 | 普通抵当権でも、根抵当権でも、遅延損害金は最後の2年分の利息の範囲内に限られる。 | × |
5 | 12-05-3 | 極度額が1億円の場合、根抵当権者は、元本1億円とそれに対する最後の2年分の利息及び損害金の合計額につき、優先弁済を主張できる。 | × |
6 | 08-07-2 | 極度額に加え、遅延損害金として満期となった最後の2年分の利息を請求できる。 | × |
7 | 08-07-3 | 確定期日後の利息・損害金も極度額の範囲で優先弁済される。 | ◯ |
3 正しい
根抵当権の「確定」とは、根抵当権が担保する「元本」の範囲を確定するものである。確定後に発生する元本は、担保の対象外である。
「確定」とは、あくまで「元本」の範囲を決するものに過ぎない。したがって、確定された元本から発生する利息・損害金は、根抵当権の担保する範囲に含まれる。
※利息や損害金も含めた限度額が、極度額である。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 23-04-1 | 極度額の範囲内でも、遅延損害金として満期となった最後の2年分の利息しか請求できない。 | × |
2 | 19-08-3 | 極度額を超えても、遅延損害金として満期となった最後の2年分の利息を請求できる。 | × |
3 | 19-08-4 | (Aは、自己所有の甲不動産につき、B信用金庫に対し、極度額を3,000万円、被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」とする第1順位の根抵当権を設定し、その旨の登記をした。)Aが友人CのためにB信用金庫との間で保証契約を締結し保証債務を負担した場合、B信用金庫のAに対するこの保証債権は、「信用金庫取引による債権」に含まれ、この根抵当権で担保される。 | ◯ |
4 | 15-06-4 | 普通抵当権でも、根抵当権でも、遅延損害金は最後の2年分の利息の範囲内に限られる。 | × |
5 | 12-05-3 | 極度額が1億円の場合、根抵当権者は、元本1億円とそれに対する最後の2年分の利息及び損害金の合計額につき、優先弁済を主張できる。 | × |
6 | 08-07-2 | 極度額に加え、遅延損害金として満期となった最後の2年分の利息を請求できる。 | × |
7 | 08-07-3 | 確定期日後の利息・損害金も極度額の範囲で優先弁済される。 | ◯ |
4 正しい
根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定する(民法398条の19第1項)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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元本の確定請求 | |||
1 | 23-04-3 | 根抵当権設定者は、元本の確定請求ができない。 | × |
2 | 08-07-4 | 根抵当権設定者は、設定時より3年経過すれば元本確定請求が可能。請求の2週間後に確定。 | ◯ |
極度額の減額請求 | |||
1 | 23-04-4 | 根抵当権設定者は、元本の確定後であっても、極度額の減額を請求できない。 | × |