【宅建過去問】(平成17年問03) 代理・無権代理・表見代理

買主Aが、Bの代理人Cとの間でB所有の甲地の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

  • ア CがBの代理人であることをAに告げていなくても、Aがその旨を知っていれば、当該売買契約によりAは甲地を取得することができる。
  • イ Bが従前Cに与えていた代理権が消滅した後であっても、Aが代理権の消滅について善意無過失であれば、当該売買契約によりAは甲地を取得することができる。
  • ウ CがBから何らの代理権を与えられていない場合であっても、当該売買契約の締結後に、Bが当該売買契約をAに対して追認すれば、Aは甲地を取得することができる。
  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. なし

正解:3

ア 正しい

代理人は、意思表示の際、相手方に対して、自らが代理人である旨を表示しなければならない(「顕名」という)。そして、代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示(顕名のない意思表示)は、代理人自身のためにしたものとみなされる(民法100条本文。左図)。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、または知ることができたときは、有効な代理行為とされる(同条ただし書き、99条1項。右図)。

17-03-a-1 17-03-a-2

本肢では、CがBの代理人であることを相手方Aが知っている。したがって、Cの意思表示は、本人に対して直接効力を生ずる。BA間の売買契約は有効であり、Aは甲地を取得することができる。

■参照項目&類似過去問
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顕名がなかった場合(民法[03]3(1)①)
年-問-肢内容正誤
121-02-1代理人が顕名を怠り自らの名を本人として表示した場合、相手方がこのことを知っていても、契約は代理人・相手方間に成立する。×
217-03-ア顕名がなくても、相手方が知っていれば、代理による契約が成立する。
313-08-1代理人が顕名せずに契約を締結した場合、相手方が真の売主を知っていても、契約は代理人・相手方間に成立する。×

イ 正しい

17-03-i代理権が消滅した後であっても、代理権の消滅について相手方が善意無過失の場合には、表見代理が成立する(民法112条)。つまり、有効な代理行為があったものとされる。したがって、BA間の売買契約は有効であり、Aは甲地を取得することができる。


■参照項目&類似過去問
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表見代理(民法[04]5)

[共通の設定]
A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した。
年-問-肢内容正誤
権限外の行為の表見代理
1H26-02-イ不動産を担保に金員を借り入れる代理権を与えられた代理人が、本人の名において不動産を売却した場合、相手方において本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由があるときは、表見代理の規定を類推適用できる。
2H18-02-2AがBに対し、甲土地に抵当権を設定する代理権を与えているが、Bの売買契約締結行為は権限外の行為となる場合、甲土地を売り渡す具体的な代理権がBにあるとCが信ずべき正当な理由があるときは、AC間の本件売買契約は有効となる。
3H16-02-1AとBとが夫婦であり契約に関して何ら取り決めのない場合には、不動産売買はAB夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内にないとCが考えていた場合も、本件売買契約は有効である。
×
4H14-02-2Aが、BにA所有土地を担保として、借金をすることしか頼んでいない場合、CがBに土地売却の代理権があると信じ、それに正当の事由があっても、AC間に売買契約は成立しない。
×
5H11-07-3Aが、甲土地についてBに賃料の徴収の代理をさせていた。Bによる甲土地の売却をAが追認しない場合でも、CがBに代理権があると信じ、そう信じることについて正当な理由があるとき、Cは、直接Aに対して所有権移転登記の請求をすることができる。
6H08-02-2BがAから抵当権設定の代理権を与えられ、土地の登記済証、実印、印鑑証明書の交付を受けていた場合で、CがAC間の売買契約についてBに代理権ありと過失なく信じたとき、Cは、Aに対して土地の引渡しを求めることができる。
7H06-04-2AがBに抵当権設定の代理権しか与えていなかったにかかわらず、Bが売買契約を締結した場合、Aは、Cが善意無過失であっても、その売買契約を取り消すことができる。
×
代理権消滅後の表見代理
1R03s-05-4AがBに与えた代理権が消滅した後にBが行った代理権の範囲内の行為について、相手方Cが過失によって代理権消滅の事実を知らなかった場合でも、Aはその責任を負わなければならない。
×
2R02s-02-3AがBに授与した代理権が消滅した後、BがAの代理人と称して、甲土地をCに売却した場合、AがCに対して甲土地を引き渡す責任を負うことはない。
×
3H17-03-イAが従前Bに与えていた代理権が消滅した後であっても、Cが代理権の消滅について善意無過失であれば、当該売買契約によりCは甲土地を取得することができる。
4H08-02-4Bが、Aから土地売買の委任状を受領した後、破産手続開始の決定を受けたのに、Cに当該委任状を示して売買契約を締結した場合、Cは、Bが破産手続開始の決定を受けたことを知っていたときでも、Aに対して土地の引渡しを求めることができる。
×
5H06-04-4Bが代理権を与えられた後売買契約締結前に破産すると、Bの代理権は消滅するが、Bの代理権が消滅しても、Cが善意無過失であれば、その売買契約は有効である。
代理権授与の表示による表見代理
1R03s-05-2AがBに代理権を与えていないにもかかわらず代理権を与えた旨をCに表示し、Bが当該代理権の範囲内の行為をした場合、CがBに代理権がないことを知っていたとしても、Aはその責任を負わなければならない。
×
2H18-02-1AがCに対し、Bは甲土地の売却に関する代理人であると表示していた場合、Bに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことをCが過失により知らなかったときは、AC間の本件売買契約は有効となる。
×
表見代理が成立しないケース
1R03s-05-3BがAから何ら代理権を与えられていないにもかかわらずAの代理人と詐称してCとの間で法律行為をし、CがBにAの代理権があると信じた場合であっても、原則としてその法律行為の効果はAに帰属しない。
2H04-03-1Aの所有する不動産について、Bが無断でAの委任状を作成して、Aの代理人と称して、善意無過失の第三者Cに売却し、所有権移転登記を終えた。Cが善意無過失であるから、AC間の契約は、有効である。
×

ウ 正しい

17-03-u無権代理による契約の効果は本人に帰属しないのが原則である。しかし、本人が追認すると、当初より有効な代理行為があったものとされ、その効果は本人に帰属する(民法113条1項)。


■参照項目&類似過去問
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無権代理:本人の権限(追認権・追認拒絶権)(民法[04]2(1))
年-問-肢内容正誤
1R02s-02-4AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を授与した。Bが、Aから代理権を授与されていないA所有の乙土地の売却につき、Aの代理人としてFと売買契約を締結した場合、AがFに対して追認の意思表示をすれば、Bの代理行為は追認の時からAに対して効力を生ずる。×
2R01-05-1本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合、その後は本人であっても無権代理行為を追認して有効な行為とすることはできない。
3R01-05-3無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
426-02-ア無権代理行為を本人が追認する場合、契約の効力は、追認をした時から将来に向かって生ずる。×
524-04-1無権代理行為を本人が追認した場合、売買契約は有効となる。
617-03-ウ無権代理行為を本人が追認した場合、売買契約は有効となる。
714-02-4[Aが、Bの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結する。]AがBに無断でCと売買契約をしたが、Bがそれを知らないでDに売却して移転登記をした後でも、BがAの行為を追認すれば、DはCに所有権取得を対抗できなくなる。×
811-07-1本人は無権代理行為を相手方に対して追認することができる。
909-01-1無権代理行為を本人または相手方が追認した場合、売買契約は有効となる。×
1006-04-3本人の追認により契約は有効となるが、その追認は相手方に対して直接行うことを要し、無権代理人に対して行ったときは、相手方がその事実を知ったとしても、契約の効力を生じない。×
1104-03-4無権代理行為は無効であるが、本人が追認すれば、新たな契約がなされたとみなされる。×

まとめ

ア、イ、ウのいずれも正しく、正解は3となる。


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【宅建過去問】(平成17年問03) 代理・無権代理・表見代理” に対して2件のコメントがあります。

  1. ミサカ妹 より:

    ミサカ妹です
    いつも ご丁寧な 返信
    ありがとう ございます。

    あの~っ
    今日は
    提案なのですが…
    解説を 認 識 視 野
    ぱっ と 見て 意味がわかる
    範囲内で
    改行
    するのは どうでしょうか?
    過去問は
    問題数が多く
    復習するのに
    大変な時間を 要します
    問題を解くにあたって
    ミサカは
    毎回 必ず 解説を
    見るようにしています
    でも
    横に長いと読むのが面倒くさくなり、黙読でなく視読をしてしまい、結局何が書いてあったんだ?
    また 読み直し!と なることがあります。

    体験例 なのですが…
    本肢ア の 解説です

    ■ミサカVer.
    代理人は、
    意思表示の際、
    相手方に対して、
    自らが代理人である旨を
    表示 しなければならない
    (「顕名」という)。
    そして、
    代理人が
    本人のためにすることを
    示さないでした 意思表示は、
    (顕名のない意思表示)
    代理人自身のために
    したものとみなされる
    (民法100条本文。左図)。
    ただし、
    相手方が、
    代理人が 本人のために
    することを知り、
    または
    知ることが できたときは、
    有効な 代理行為 とされる
    (同条但書、99条1項。右図)。

    ■先生Ver.
    代理人は、意思表示の際、相手方に対して、自らが代理人である旨を表示しなければならない(「顕名」という)。そして、代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示(顕名のない意思表示)は、代理人自身のためにしたものとみなされる(民法100条本文。左図)。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、または知ることができたときは、有効な代理行為とされる(同条但書、99条1項。右図)。

    どうでしょうか?
    ミサカVer.の方が
    速く読めて
    わかりやすく ないですか?
    と ミサカは 問いかけます

    ミサカVer.の
    過去問 解説は
    この世に存在しません
    名前が 似ている
    先生だから
    先生のみに!
    この 当たり前で 画期的な
    提案を してみました!

    でも
    無理に
    ミサカVer.に
    する必要は ありません

    結局 めんどくさがり屋な
    ダメダメ 人間
    と いうだけなので
    聞き流して下さい

    ミサカ妹
    m(_ _)m

    1. 家坂 圭一 より:

      ミサカ妹様

      申し訳ないのですが、
      歌詞カードみたいで、
      解説っぽくないな、
      としか感じません。

      わがままかも
      知れませんが、
      今までの
      やりかたで
      続けさせて
      ください。

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