【宅建過去問】(平成19年問11)契約不適合担保責任
宅地建物取引業者でも事業者でもないAB間の不動産売買契約における売主Aの責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 売買契約に、不動産が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合であってもAがその不適合を担保すべき責任を全部免責する旨の特約が規定されていても、Aがその不適合を知りながらBに告げなかったときは、Aは担保責任を負わなければならない。
- Bが不動産が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを知った場合でも、その不適合により売買契約をした目的を達成することができないとまではいえないときは、Aはその不適合を担保すべき責任を負わない。
- Bが契約時に不動産に欠陥があることを知っていた場合には、Aはその欠陥を担保すべき責任を負わない。
- 売買契約に、不動産が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を追及できる期間について特約を設けていない場合、BがAの担保責任を追及するときは、その不適合を知った時から1年以内に当該不適合についてAに通知しなければならない。
正解:2
1 正しい
民法上、契約不適合担保責任に関する特約は、制限されていない。したがって、「売主の担保責任を全部免責する」という特約も民法上有効である。
しかし、このような特約をしたときであっても、売主が知りながら告げなかった事実については、担保責任を免れることができない(民法572条)。
※宅建業法のルールは異なるので注意(同法40条)。宅建業者が自ら売主となる宅地・建物の売買契約に関する契約不適合担保責任について、民法に比べて買主に不利となる特約を禁止している。唯一の例外は、売主の担保責任を追及するために不適合について買主が売主に通知するまでの期間を「引渡しの日から2年以上」と定める場合である(宅建業法40条1項)。これ以外の特約は、無効とされる(同条2項)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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[共通の設定] Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。甲土地には、品質に関して契約の内容に適合しない箇所(本件不適合)があった。 | |||
1 | R01-03-1 | Aは甲土地引渡しから3か月に限り担保責任を負う旨の特約を付けたが、売買契約締結時点において本件不適合が存在しており、Aはそのことを知っていたがBに告げず、Bはそのことを知らなかった。Bが本件不適合を建物引渡しから1年が経過した時に知ったとしても、本件不適合を知った時から2年後にその旨をAに通知すれば、BはAに対して担保責任を追及することができる。 | ◯ |
2 | 20-09-4 | 売買契約で、甲土地が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合、Aは甲土地の引渡しの日から2年以内にその不適合についてBから通知を受けた場合に限って担保責任を負う旨を合意したとしても、Aがその不適合を知っていたのにBに告げなかったときは、担保責任に基づく損害賠償請求権が時効で消減するまで、Bは当該損害賠償を請求できる。 | ◯ |
3 | 19-11-1 | 売買契約に、不動産が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合であってもAがその不適合を担保すべき責任を全部免責する旨の特約が規定されていても、Aがその不適合を知りながらBに告げなかったときは、Aは担保責任を負わなければならない。 | ◯ |
2 誤り
目的物に契約不適合があれば、売主は、担保責任を負う。
この責任を負うのが「売買契約をした目的を達成することができない」場合に限られるわけではない。
※令和2年の民法改正により大きく変わった点です。注意しましょう。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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[共通の設定] Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約を締結した。甲建物には、品質に関して契約の内容に適合しない箇所(本件不適合)があった。 | |||
1 | R03-07-3 | Bが引渡しを受けた甲建物に契約の内容に適合しない欠陥があることが判明したときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。 | × |
2 | R01-03-2 | 建物の構造耐力上主要な部分の不適合については、契約の目的を達成することができない場合でなければ、Bは本件不適合を理由に売買契約を解除することができない。 | × |
3 | R01-03-3 | Bが本件不適合を理由にAに対して損害賠償請求をすることができるのは、本件不適合を理由に売買契約を解除することができない場合に限られる。 | × |
4 | 19-11-2 | Bが本件不適合を知った場合でも、その不適合により売買契約をした目的を達成することができないとまではいえないときは、Aはその不適合を担保すべき責任を負わない。 | × |
5 | 15-10-2 | Bが、本件不適合を知らないまま契約を締結した場合、この欠陥が存在するために契約を行った目的を達成することができるか否かにかかわらず、Bは、Aの担保責任を追及して契約の解除を行うことができる。 | ◯ |
6 | 14-09-2 | Bは、本件不適合がこの売買契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である場合は、この売買契約を解除できないが、この欠陥により受けた損害につき、Aに対し賠償請求できる。 | ◯ |
7 | 14-09-4 | Bは、本件不適合が存在するために、この売買契約を締結した目的を達することができるか否かにかかわらず、この売買契約を解除できる。 | ◯ |
8 | 08-08-4 | 売買契約の目的物である土地の8割が都市計画街路の区域内にあることが容易に分からない状況にあったため、買主がそのことを知らなかった場合は、このため契約の目的を達することができるか否かにかかわらず、買主は、売主に対して契約を解除することができる。 | ◯ |
9 | 04-08-1 | 購入した建物の引渡し後に欠陥が発見された場合、その欠陥が軽微であり居住の用に支障がなくても、買主は、当該契約を解除することができる。 | × |
10 | 03-11-3 | 売買の目的物に物理的な欠陥があり、契約目的を達成できない場合、買主の善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。 | × |
11 | 01-04-2 | 売買の目的物である土地に欠陥があって、買主がそのことを知らなかったときは、買主は、その事実を知ったとき、欠陥の程度に関係なく、契約を解除することができる。 | × |
3 正しい
買主が売主の担保責任を追及することができるのは、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に限られる(民法562条、563条)。
本肢の売買契約において、買主Bは、不動産に欠陥があることを知っていた。つまり、Bは、欠陥のある不動産を購入するという売買契約を締結したのである。この場合、目的物が「契約の内容に適合しない」という評価はできない。BがAの担保責任を追及することは不可能である。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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[共通の設定] Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。 | |||
1 | 26-06-1 | Bは、売買契約の締結の当時、甲土地に欠陥があることを知っていた場合であっても、その欠陥の存在を知ってから1年以内に本件欠陥についてAに通知していれば、Aに対して売買契約に基づく担保責任を追及することができる。 | × |
2 | 19-11-3 | Bが契約時に甲土地に欠陥があることを知っていた場合には、Aはその欠陥を担保すべき責任を負わない。 | ◯ |
3 | 16-10-1 | Bは住宅建設用に甲土地を購入したが、都市計画法上の制約により当該土地に住宅を建築することができない場合には、そのことを知っていたBは、Aに対し土地売主の担保責任を追及することができない。 | ◯ |
4 | 15-10-1 | Bが、甲土地の欠陥の存在を知って契約を締結した場合、BはAの担保責任を追及して契約を解除することはできないが、Aに対して担保責任に基づき損害賠償請求を行うことができる。 | × |
4 正しい
契約不適合担保責任を追及する場合、買主は、不適合を知った時から1年以内に売主に通知する必要がある(民法566条本文)。
※通知により権利を保存しておけば、消滅時効が成立するまでの間、担保責任を追及することができる。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R03s-04-4 | 売主Aと買主Bとの間で締結した売買契約に関し、目的物の引渡しの時点で目的物が品質に関して契約の内容に適合しないことをAが知っていた場合には、当該不適合に関する請求権が消滅時効にかかっていない限り、BはAの担保責任を追及することができる。 | ◯ |
2 | R02s-07-1 | Aを売主、Bを買主として、甲土地の売買契約が締結された。甲土地の実際の面積が本件契約の売買代金の基礎とした面積より少なかった場合、Bはそのことを知った時から2年以内にその旨をAに通知しなければ、代金の減額を請求することができない。 | × |
[共通の設定] Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約を締結した。甲建物には、品質に関して契約の内容に適合しない箇所(本件不適合)があった。 | |||
3 | R01-03-1 | Aは本件不適合を知っていたがBに告げず、Bはそのことを知らなかった。Bが本件不適合を建物引渡しから1年が経過した時に知ったとしても、本件不適合を知った時から2年後にその旨をAに通知すれば、BはAに対して担保責任を追及することができる。 | ◯ |
4 | 20-09-3 | 甲建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に、BがAの担保責任を追及するときには、Bは、その不適合を知った時から1年以内にその不適合をAに通知すればよく、1年以内に担保責任を追及するまでの必要はない。 | ◯ |
5 | 19-11-4 | 売買契約に、目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を追及できる期間について特約を設けていない場合、BがAの担保責任を追及するときは、その不適合を知った時から1年以内に当該不適合についてAに通知しなければならない。 | ◯ |
6 | 15-10-3 | Bが、本件不適合の存在を知らないまま契約を締結した場合、契約締結から1年以内に担保責任の追及を行わなければ、BはAに対して担保責任を追及することができなくなる。 | × |
7 | 14-09-3 | Bが、Aに対し、本件不適合に基づき行使できる権利を行使するためには、Bが欠陥を知った時から1年以内にその旨をAに通知しなければならない。 | ◯ |
消滅時効との関係 | |||
8 | 26-03-3 | 売買契約の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の買主の売主に対する担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行する。 | ◯ |
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法改正対応済みで、『誤っているのはどれか』の設問であったので、とけました。分かりやすい解説で、ありがたかったです。
「分かりやすい解説」とのご評価をいただき、ありがとうございました。
これからも、「分かりやすくてハイレベル」な解説を心がけます。
引き続きよろしくお願いします。
初めまして。いつも拝見して勉強させていただいています。試験直前になって混乱しているところがあり質問させていただきます。肢3についてです。
民法改正対応済の問題集で「宅建業者でも事業者でもない間の売買契約:買主が不動産に契約内容と不適合な事実があることを契約時に知っていた、もしくは過失により気づかず引き渡しをけてから瑕疵があることを知った場合にも売主は契約不適合責任を負う」という問いに対し➡答え「〇」。契約内容と不適合な状態があれば契約不適合責任は追及可。買主が知りながら受け取ったとしても売主は契約不適合責任を負う。と解説がありました。
肢3の解説から考えると「×」だと思ったのですが何が違うのでしょうか。担保責任と契約不適合責任との違いということでしょうか。
すっきり理解したいです。教えていただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。
アーモンドフィッシュ様
ご質問ありがとうございます。
回答が遅くなり、大変申し訳ありません。
■売主の担保責任と悪意の買主
という記事にも書きましたが、民法改正により、売主が負う責任は「契約不適合」に関するものとなりました。
改正以前のような
「◯◯について善意だから◯◯できる。」
「××について悪意だから××できない。」
という単純な構造にはなっていません。
善意・悪意が要件でないことに気を付けましょう。
基準は、あくまで「契約内容」です。
買主に引き渡した物が「契約内容」に適合していなければ、売主は、それを担保する責任を負うわけです。
買主が欠陥について悪意、つまり、キズモノであることを知っていて買った以上、通常、契約内容は『キズモノを買う。』というものであると考えられます。
この場合、売主の義務は、「そのキズモノを引き渡す。」ことに尽きるわけです。キズモノだから修補するなどの責任を負わせるのは理不尽です。
なお、ご指摘の「民法改正対応済の問題集」は、当社が刊行したものではありません。
この点については、出版社様又は著者のかたにご確認ください。
民法改正後は2番も正という事でしょうか。
もち様
ご質問ありがとうございます。
解説にある通り、肢2は「誤り」です。
このサイトに掲載している過去問は、すべて法改正に合わせて修正済みです。
選択肢の正誤や解説も、すべて改正後の民法に合わせて説明しています。