【宅建過去問】(平成21年問14)不動産登記法

不動産の表示に関する登記についての次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  1. 土地の地目について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から1月以内に、当該地目に関する変更の登記を申請しなければならない。
  2. 表題部所有者について住所の変更があったときは、当該表題部所有者は、その変更があった日から1月以内に、当該住所についての変更の登記を申請しなければならない。
  3. 表題登記がない建物(区分建物を除く。)の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。
  4. 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

正解:2

はじめに

本問は、不動産の表示に関する登記に関する出題です。
最初に、権利に関する登記と比較しながら、表示に関する登記の特徴をまとめておきましょう。

両者の比較

物理的状況の変化に関する登記というのは、具体的には、以下の事項に関する登記のことを指します。

表示に関する登記

1 正しい

(「はじめに」参照。)
地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から1か月以内に、変更の登記を申請する必要があります(不動産登記法37条1項)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
地目又は地積の変更の登記の申請(不動産登記法[02]2(1))
年-問-肢内容正誤
1H21-14-1土地の地目について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から1月以内に、当該地目に関する変更の登記を申請しなければならない。
2H08-15-2共有名義の土地の地目変更の登記は、共有者全員で申請しなければならない。×
3H02-15-1一筆の土地の一部について地目の変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、土地の分筆の登記及び表示の変更の登記を申請しなければならない。

2 誤り

表題部所有者というのは、「所有権の登記がない不動産の登記記録の表題部に、所有者として記録されている者」という意味です(不動産登記法2条10号)。これは、「不動産の物理的状態を公示」する表示に関する登記の中では異質な項目であり、実際にも、所有権の保存の登記がなされた後は、抹消される運命にあります。
このような性質上、表題部所有者の住所の変更について、変更の登記の申請期限に関する定めは存在しません(同法31条参照)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
表示に関する登記の通則(不動産登記法[02])
年-問-肢内容正誤
1R02s-14-1表題部所有者が表示に関する登記の申請人となることができる場合において、当該表題部所有者について相続があったときは、その相続人は、当該表示に関する登記を申請することができる。
2H25-14-1所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請人となることができる場合において、当該登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該表示に関する登記を申請することができる。
3H21-14-2表題部所有者について住所の変更があったときは、当該表題部所有者は、その変更があった日から1月以内に、当該住所についての変更の登記を申請しなければならない。×
4H08-15-3不動産の所有者と当該不動産の表題部所有者とが異なる場合においてする当該表題部所有者についての更正の登記は、当該不動産の所有者以外の者は、申請することができず、申請にあたっては、表題部所有者の承諾が必要である。

3 正しい

(「はじめに」参照。)
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1か月以内に、表題登記を申請する必要があります(不動産登記法47条1項)。

表題登記の申請(区分建物以外)

■参照項目&類似過去問
内容を見る
建物の表題登記の申請(不動産登記法[02]2(1))
年-問-肢内容正誤
1H28-14-1新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、所有権の保存の登記を申請しなければならない。×
2H24-14-3区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる。
3H21-14-3表題登記がない建物(区分建物を除く。)の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1月以内に、表題登記を申請しなければならない。
4H13-14-1表題登記がされていない区分建物を建築者から取得した者は、当該区分建物の表題登記を申請する義務はない。
5H09-14-1建物を新築した場合、当該建物の所有者は、新築工事が完了した時から1ヵ月以内に、建物の所有権の保存の登記の申請をしなければならない。×

4 正しい

(「はじめに」参照。)
建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、滅失の日から1か月以内に、滅失の登記を申請する必要があります(不動産登記法57条)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
建物の滅失の登記の申請(不動産登記法[02]2(1))
年-問-肢内容正誤
1R05-14-1建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1か月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
2H28-14-3建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
3H21-14-4建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
4H09-14-4建物が取壊しにより滅失した場合、表題部に記載された所有者又は所有権の登記名義人は、当該建物が滅失した時から1ヵ月以内に、建物の滅失の登記の申請をしなければならない。
5H08-15-4抵当権の設定の登記がされている建物の滅失の登記は、その抵当権の登記を抹消した後でなければ申請することができない。×
6H03-16-4建物の滅失の登記は、登記官の職権によってすることができる。
7H01-15-2建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に建物の滅失の登記を申請しなければならない。

>>年度目次に戻る

LINEアカウントで質問・相談

家坂講師に気軽に受験相談や質問ができるLINEアカウントを運営しています。
お気軽に「友だち追加」してください。
友だち追加
PCの場合は、「友だち検索」でID"@e-takken"を検索してください。

【宅建過去問】(平成21年問14)不動産登記法” に対して4件のコメントがあります。

  1. めいしゃん より:

    家坂先生
    いつもお世話になって勉強させていただいております。ありがとうございます。先生の解説が理路整然としていて何よりわかり易くてたすけていただいてます。

    肢2 で「表題部所有者の登記」が「保存登記」がなされた後は抹消される、と言う解説で腑に落ちました。ずっと、表題部登記と保存登記は2つ存在してなんか意味が分かりませんでした。

    だから住所の変更登記をする必要がないのか!と初めて納得出来ました。
    ありがとうございます!

    1. 家坂 圭一 より:

      「理路整然」「腑に落ちました」とおほめいただき、ありがとうございます。
      今後の励みになります。

      「表題部所有者又は所有権の登記名義人」と並んで書かれることが多いので、「似たようなもの」と誤解している人も多いようです。

      しかし、そもそも、「表題部所有者」とは、「所有権の登記がない不動産の登記記録の表題部に、所有者として記録されている者」のことです。所有権の登記がされてしまえば、さほどの必要性がありません。

      この辺のイメージがつかめると、「腑に落ちる」話も多いと思います。

      「登記のイメージ」については、以下のところで説明しています。
      この機会に復習をお勧めします。

      ■講義編■不動産登記法[01]登記

      1. めいしゃん より:

        家坂先生
        ご丁寧なお返事をありがとうございます。
        先生の過去問解説は周辺知識にも要所で触れてくださっていて、無料で利用させていただいて申し訳ないと思っちゃうレベルだと本心から思ってます。感謝しかありません!
        そして、「え〜そうなんだぁ〜」って感動しちゃった事をコメントしただけなのに、それに対してもとても丁寧なお返事で再び感動しました!
        時間に合格して先生に嬉しさをご報告出来るよう、頑張ります。
        ありがとうございます!

        1. 家坂 圭一 より:

          当社の宅建講座は「スリー・ステップ学習法」というメソッドに従っています。
          「過去問解説」は、そのうち、[Step.3]過去問演習編に当たる部分です。

          「過去問演習」というと、「その1問が解ければいい」という解説しかしない教材が多いようです。しかし、その方法では、本試験のルール、つまり、「初見の問題に対して、自力で正解する。」という力が身に付きません。

          そこで、「解ければいい」最低限の知識や条文番号だけでなく、「[Step.1]基本習得編で勉強した基本知識を確認する。」部分まで解説に入れているわけです。

          「そんな基本的な知識は、もう覚えている。」という人は、その部分を読み飛ばせばいいことです。
          しかし、「解説に書いていないこと」を調べ始めると、テキストや問題集を探したり、ネットで検索したり、と無駄な時間がかかってしまいます。

          そこで、当社の教材では、以下のような工夫をしています。

          • 解説の中でも、基礎知識の必要部分を繰返し説明する。
          • 各選択肢ごとに「■参照項目&類似過去問」を設け、[Step.1]基本習得編や[Step.2]一問一答編を確認できるようにする。

          「スリー・ステップ学習法」や「教材の使い方」については、以下のところで解説しています。
          【スリー・ステップ学習】学習方法と教材のご紹介

          また、「スリー・ステップ学習」を具体的に体験できる【無料公開講座】も開講しています。
          【無料公開講座】スリー・ステップ学習法

          これらを活用し、効率的に合格されることをお祈りしております。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です