【宅建過去問】(令和02年10月問14)不動産登記法

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不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 敷地権付き区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者は、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければ、当該区分建物に係る所有権の保存の登記を申請することができない。
  2. 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合であっても、その承諾を得ることなく、申請することができる。
  3. 債権者Aが債務者Bに代位して所有権の登記名義人CからBへの所有権の移転の登記を申請した場合において、当該登記を完了したときは、登記官は、Aに対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。
  4. 配偶者居住権は、登記することができる権利に含まれない。

正解:1

1 正しい

区分建物については、表題部所有者に加えて、表題部所有者から所有権を取得した者も、所有権の保存の登記を申請することができます(不動産登記法74条2項前段)。
その建物が敷地権付き区分建物であるときは、敷地権の登記名義人の承諾を得る必要があります(同項後段)。

■参照項目&類似過去問
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区分建物の所有権保存の登記(不動産登記法[04]3(2))
年-問-肢内容正誤
1R05-14-4区分建物の所有権の保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請することができる。
2R02-14-1敷地権付き区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者は、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければ、当該区分建物に係る所有権の保存の登記を申請することができない。
3H28-14-4区分建物の所有権の保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請することができる。
4H25-14-3敷地権付き区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者は、当該敷地権の登記名義人の承諾を得ることなく、当該区分建物に係る所有権の保存の登記を申請することができる。×
5H12-14-41棟の建物を区分した建物の登記簿の表題部所有者から所有権を取得したことを証明できる者は、直接自己名義に当該建物の所有権の保存の登記を申請することができる。
6H08-16-2区分建物の所有権の保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請することができる。
7H01-16-3区分建物の所有権の保存の登記は、表題部所有者から所有権を取得した者も、申請することができる。

2 誤り

所有権に関する仮登記に基づく本登記を申請する場合、登記上の利害関係を有する第三者があるときは、その第三者の承諾を得る必要があります(不動産登記法109条1項)。

仮登記に基づく本登記

図の例で説明しましょう。A所有の土地について、①Bが所有権移転の仮登記をした後に、②Cが所有権移転の本登記を受けたとします。この場合、Bは、③本登記を申請するに当たり、④利害関係者であるCの承諾を受ける必要があります。

 

※利害関係者の承諾が必要になるのは、所有権に関する仮登記の場合に限られます。所有権以外、例えば、抵当権の仮登記の場合、承諾を受ける必要はありません。

■参照項目&類似過去問
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仮登記に基づく本登記(不動産登記法[05]3)
年-問-肢内容正誤
1R02-14-2所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合であっても、その承諾を得ることなく、申請することができる。×
2H25-14-4所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
3H20-16-1所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
4H10-15-3抵当権設定の仮登記に基づき本登記を申請する場合に、その本登記について登記上利害関係を有する第三者があるときは、申請情報と併せてその者の承諾情報を提供しなければ、当該本登記を申請することができない。×
5H06-16-3A名義の所有権の登記がされている土地について、B名義への所有権移転の仮登記がされた後、A名義からC名義への売買による所有権移転登記がされている場合には、Bは、Cの登記が抹消されるまでは、仮登記に基づく本登記をすることはできない。×
6H02-16-2仮登記に基づく本登記は、登記記録中あらかじめ設けられている仮登記の次の余白に記録される。
7H02-16-4所有権に関する仮登記をした後、本登記を申請する場合においては、その仮登記後第三者に所有権移転の登記がされているときでも、申請情報と併せて、その者の承諾を証する情報又はこれに対抗することのできる裁判があったことを証する情報を提供することを要しない。×

3 誤り

登記移転請求権を債権者が代位して行使するというややこしい事例です。「AがBに対して貸金債権を有している」という想定で図示すると、以下のようになります。

登記申請人に対して、登記識別情報が通知されるのは、「申請者自らが登記名義人となる場合」に限られます(不動産登記法21条本文)。
本肢でいえば、Bが自ら登記を申請したのであれば、Bに対して、登記識別情報が通知されます。しかし、実際に登記を申請したのは、Aです。Aは、登記名義人になるわけではありません。登記官は、Aに対して、登記識別情報を通知する必要がありません。

※債権者代位権については、民法[16]債権者代位権を確認してください。

4 誤り

配偶者居住権とは、配偶者が居住建物の全部について無償で使用収益する権利のことをいいます(民法1028条1項本文)。配偶者居住権を登記すれば、配偶者は、その権利を第三者に対抗することができます(同法1031条2項、605条)。ここまでは、民法で勉強した知識です。
そして、当然のことながら、不動産登記法でも、登記することができる権利のリストに配偶者居住権を挙げています(同法3条9号)。

※配偶者居住権については、民法[31]相続の6.配偶者の居住の権利を確認してください。

■参照項目&類似過去問
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配偶者の居住の権利(民法[31]6)
[共通の設定]
被相続人Aの配偶者Bが、A所有の建物に相続開始の時に居住していたため、遺産分割協議によって配偶者居住権を取得した。
年-問-肢内容正誤
①配偶者居住権とは
1R05-07-2Bが高齢となり、バリアフリーのマンションに転居するための資金が必要になった場合、Bは、Cの承諾を得ずに甲建物を第三者Dに賃貸することができる。×
2R03-04-2Bは、配偶者居住権の存続期間内であれば、居住している建物の所有者の承諾を得ることなく、第三者に当該建物を賃貸することができる。×
③存続期間
1R05-07-1遺産分割協議において、Bの配偶者居住権の存続期間が定められなかった場合、配偶者居住権の存続期間は20年となる。×
2R03-04-1遺産分割協議でBの配偶者居住権の存続期間を20年と定めた場合、存続期間が満了した時点で配偶者居住権は消滅し、配偶者居住権の延長や更新はできない。
3R03-04-3配偶者居住権の存続期間中にBが死亡した場合、Bの相続人CはBの有していた配偶者居住権を相続する。×
④対抗要件
1R05-07-3Cには、Bに対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務がある。
2R03-04-4Bが配偶者居住権に基づいて居住している建物が第三者Dに売却された場合、Bは、配偶者居住権の登記がなくてもDに対抗することができる。×
3R02-14-4配偶者居住権は、登記することができる権利に含まれない。
×
⑤費用負担
1R05-07-4Cは、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。×

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【宅建過去問】(令和02年10月問14)不動産登記法” に対して4件のコメントがあります。

  1. 裸ノ大将 より:

    ご丁寧な解説ありがとうございます。

    1. 家坂 圭一 より:

      どういたしまして。
      疑問が解決できてよかったです。

  2. 裸ノ大将 より:

    2. について質問させて下さい。

    ①登記上の利害関係を有する第三者が本登記の承諾をしない場合には、利害関係人である第三者に対抗できる裁判があった旨の謄本を添付して申請すれば、登記官の職権により第三者の登記は抹消される
    のではないでしょうか?

    ①が正しいとするなら、登記上の利害関係を有する第三者がある場合であっても、その承諾を得ることなく、申請することができている。
    ので、この選択肢は正しいということに結論付けられると考えるのですがいかがでしょうか?

    1. 家坂 圭一 より:

      ご質問ありがとうございます。

      ■不動産登記法109条1項について
      不動産登記法109条1項は、以下のように定めています。

      所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(中略)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。

      それにも関わらず、肢2は、「その承諾を得ることなく、申請することができる」としています。
      これは、条文と反する記述ですから、本肢は「誤り」ということになります。

      ■「第三者の承諾」が得られない場合
      もちろん、「第三者の承諾」が受けられないケースも考えられます。
      そのようなときには、訴訟をすることになるでしょう。
      そして、その裁判に基づき、本登記する場合も考えられます。

      しかし、この場合でも、
      裁判が第三者の承諾の代替である
      と考えているように思います。

      つまり、判決に基づいて本登記をした場合でも、
      それは判決という第三者の承諾に替わるものがあったのであり、
      条文にある「第三者の承諾があるとき」に該当すると考えるわけです。

      したがって、
      裁判による登記のケースもあるから、肢2は正しい
      とはいえないと思います。

      ■過去問での扱い
      肢2については、正誤こそ違うものの全く同じ論点を聞いた過去問が2回出題されています。
      ・平成25年問14肢4
      ・平成20年問16肢1
      そして、いずれについても、条文通りに答えることが正解とされています。

      ■四択の中での正解
      肢2が「正しい」と考える場合、肢1を「誤り」とする必要が生じます。
      こちらについても、「登記名義人の承諾を得られない場合」を想定するのでしょうか?
      しかし、わざわざそのような複雑な操作をしなくても、「条文通り」に考えればいいと思います。

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