【宅建過去問】(令和03年12月問04)売買契約
いずれも宅地建物取引業者ではない売主Aと買主Bとの間で締結した売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- BがAに対して手付を交付した場合、Aは、目的物を引き渡すまではいつでも、手付の倍額を現実に提供して売買契約を解除することができる。
- 売買契約の締結と同時に、Aが目的物を買い戻すことができる旨の特約をする場合、買戻しについての期間の合意をしなければ、買戻しの特約自体が無効となる。
- Bが購入した目的物が第三者Cの所有物であり、Aが売買契約締結時点でそのことを知らなかった場合には、Aは損害を賠償せずに売買契約を解除することができる。
- 目的物の引渡しの時点で目的物が品質に関して契約の内容に適合しないことをAが知っていた場合には、当該不適合に関する請求権が消滅時効にかかっていない限り、BはAの担保責任を追及することができる。
正解:4
設定の確認
「売主Aと買主Bとの間で締結した売買契約」というだけで、目的物が土地なのか、建物なのか、それとも動産なのか、まるで分かりません。肢2の買戻しは、目的物が不動産のときにしか使えないのに、その点への言及もなし。ちょっと雑な設定です。
1 誤り
解約手付が交付されている場合、買主はその手付金を放棄し、売主はその倍額を現実に提供すれば、契約を解除することができます(民法557条1項本文)。ただし、相手方が契約の履行に着手した後は、この方法による解除は不可能です(同項ただし書き)。
本肢のケースでいうと、売主Aが手付解除することができるのは、「買主Bが履行に着手するまで」の期間に限られます。「目的物を引き渡すまではいつでも」解除できるわけではありません。
Aが目的物を引き渡す前でも、例えば、Bが中間金を支払うなどBに履行の着手があれば、その後は、Aから手付解除することはできなくなります。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03s-04-1 | 売主Aと買主Bとの間で締結した売買契約に関し、BがAに対して手付を交付した場合、Aは、目的物を引き渡すまではいつでも、手付の倍額を現実に提供して売買契約を解除することができる。 | × |
2 | R02-09-1 | Aがその所有する甲建物について、Bとの間で、Aを売主、Bを買主とする売買契約を締結した。Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。 | × |
3 | 29-05-3 | Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは当該自動車をCに100万円で売却した。売買契約が締結された際に、Cが解約手付として手付金10万円をAに支払っている場合には、Aはいつでも20万円を償還して売買契約を解除することができる。 | × |
4 | 21-10-2 | 売主が履行に着手していなくても、買主が履行に着手していれば、買主は契約を解除できない。 | × |
5 | 17-09-4 | 売主は、自らが履行に着手するまでは、買主が履行に着手していても、契約を解除できる。 | × |
6 | 16-04-2 | 売主が履行に着手した場合、買主が履行に着手したかどうかにかかわらず、売主は契約を解除できない。 | × |
7 | 12-07-2 | 買主が履行に着手した場合、売主が履行に着手していないときでも、買主は契約を解除できない。 | × |
8 | 06-06-2 | 買主は、売主が履行に着手するまでは、自らが履行に着手していても、契約を解除できる。 | ◯ |
9 | 04-07-3 | 買主は、自らが履行に着手していても、売主が履行に着手していなければ、契約を解除できる。 | ◯ |
2 誤り
■買戻しとは
不動産の売買契約をする際、その契約と同時に買戻しの特約をすることができます。この特約は、売主Aが買主Bの支払った代金と契約費用をBに返還すれば、売買契約が解除され、その不動産の所有権がAに復帰するというものです(民法579条)。所有権がAに復帰するので、買戻しと呼ぶわけです。
実際の使われ方としては、例えば、地方公共団体Aが所有地をBに売却する際に、「いついつまでに、このような建物を建築すること。建築しない場合は、買い戻す。」という特約を付けることがあります。
■買戻しの期間
買戻しの期間を定める場合、10年が限度です(民法580条1項)。また、当初定めた買戻しの期間を後になって伸長することはできません(同条2項)。
買戻しの期間を合意しなかった場合は、5年以内に買戻しをする必要があります(同条3項)。
本肢は、「買戻しの特約自体が無効」とする点が誤りです。
※買戻しについては、平成03年問08で1問丸ごと問われて以来、30年ぶりの出題。その前の出題も、平成02年08肢1だけです。また、今度重要になるとも考えられません。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03s-04-2 | 売主Aと買主Bとの間で締結した売買契約に関し、売買契約の締結と同時に、Aが目的物を買い戻すことができる旨の特約をする場合、買戻しについての期間の合意をしなければ、買戻しの特約自体が無効となる。 | × |
2 | 03-08-1 | 買戻しをするには、買主の支払った代金及び契約費用を返還すればよいが、必要費及び有益費を支払わなければ買戻しをなし得ない旨の特約があれば、その特約に従うことになる。 | ◯ |
3 | 03-08-2 | 買戻しの期間は、10年を超えることができない。 | ◯ |
4 | 03-08-3 | 買戻しの期間は、後日これを伸長することができない。 | ◯ |
5 | 03-08-4 | 買戻しの特約は、売買の登記後においても登記することができ、登記をすれば第三者に対抗することができる。 | × |
6 | 02-08-1 | 不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約によって、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、その売買契約を解除することができる。 | ◯ |
3 誤り
Cの所有物を、AがBに売却するようなケースを他人物売買といいます。民法は、このような契約も契約として有効と扱っています。この契約に基づいて、Aは、Cから目的物の所有権を取得して、Bに移転する義務を負います(同法561条)。
Aがこの義務を果たすことができなければ(例えば、Cから所有権移転を拒絶されたような場合)、AのBに対する債務は、履行不能です。このため、Aには、Bに対する債務不履行責任が発生します。Bは、契約の解除が可能になるわけです(同法541条、542条)。目的物がCの所有物(他人物)であることをAが知っていても知らなくても、結論に違いはありません。
これに対し、本肢は、売主である「Aは…売買契約を解除することができる」としています。しかし、解除権を持つのは、買主Bです。債務不履行をしたAのほうから解除することはできません。
※令和2年施行の民法改正前には、「他人の権利の売買における善意の売主の解除権」という制度がありました(改正前の民法562条)。既に存在しない制度を説明しても、受験生の皆さんが混乱するばかりなので、無視します。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03s-04-3 | 売主Aと買主Bとの間で締結した売買契約に関し、Bが購入した目的物が第三者Cの所有物であり、Aが売買契約締結時点でそのことを知らなかった場合には、Aは損害を賠償せずに売買契約を解除することができる。 | × |
2 | 11-10-2 | (AからBが建物を買い受ける契約を締結した。)Aが、この建物がAの所有に属しないことを知らず、それを取得してBに移転できない場合は、BがAの所有に属しないことを知っていたときでも、Aは、Bの受けた損害を賠償しなければ、AB間の契約を解除することができない。 | × |
3 | 02-08-2 | 売主が契約の当時その売却した権利が自己に属しないことを知らない場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、契約を解除することができない。 | ◯ |
4 正しい
買主Bが売主Aの契約不適合担保責任を追及できる期間について問われています。これに関しては、消滅時効期間と通知期間の両方を検討する必要があります。
■債権の消滅時効
契約不適合担保責任は、債務不履行責任の一種です。
したがって、買主が売主の責任を追及することができるのは、債権の消滅時効期間内に限られます。具体的には、以下の期間です(民法166条1項1号・2号)。
■不適合について売主に通知する期間(通知期間)
目的物の種類・品質に関する契約不適合については、買主が不適合を発見してから1年以内に売主に通知しないと、売主の責任を追及することができなくなります(民法566条本文)。
ここまでをまとめると、契約不適合担保責任の追及には、3つの期間制限があることが分かります。
■通知期間の例外
通知期間の制限には、これが適用されないケースがあります。それは、引渡しの時点で、売主が契約不適合について悪意だったり、善意でも重過失があった場合です(民法566条ただし書き)。
本肢では、「目的物の引渡しの時点で目的物が品質に関して契約の内容に適合しないことをAが知っていた」というのですから、まさにこの例外パターンに当たります。したがって、Bは、通知期間の制限を受けません。
これを逆からいうと、Bの担保責任追及の期間については、消滅時効期間以外の制限はないことになります。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03s-04-4 | 売主Aと買主Bとの間で締結した売買契約に関し、目的物の引渡しの時点で目的物が品質に関して契約の内容に適合しないことをAが知っていた場合には、当該不適合に関する請求権が消滅時効にかかっていない限り、BはAの担保責任を追及することができる。 | ◯ |
2 | R02s-07-1 | Aを売主、Bを買主として、甲土地の売買契約が締結された。甲土地の実際の面積が本件契約の売買代金の基礎とした面積より少なかった場合、Bはそのことを知った時から2年以内にその旨をAに通知しなければ、代金の減額を請求することができない。 | × |
[共通の設定] Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約を締結した。甲建物には、品質に関して契約の内容に適合しない箇所(本件不適合)があった。 | |||
3 | R01-03-1 | Aは本件不適合を知っていたがBに告げず、Bはそのことを知らなかった。Bが本件不適合を建物引渡しから1年が経過した時に知ったとしても、本件不適合を知った時から2年後にその旨をAに通知すれば、BはAに対して担保責任を追及することができる。 | ◯ |
4 | 20-09-3 | 甲建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に、BがAの担保責任を追及するときには、Bは、その不適合を知った時から1年以内にその不適合をAに通知すればよく、1年以内に担保責任を追及するまでの必要はない。 | ◯ |
5 | 19-11-4 | 売買契約に、目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を追及できる期間について特約を設けていない場合、BがAの担保責任を追及するときは、その不適合を知った時から1年以内に当該不適合についてAに通知しなければならない。 | ◯ |
6 | 15-10-3 | Bが、本件不適合の存在を知らないまま契約を締結した場合、契約締結から1年以内に担保責任の追及を行わなければ、BはAに対して担保責任を追及することができなくなる。 | × |
7 | 14-09-3 | Bが、Aに対し、本件不適合に基づき行使できる権利を行使するためには、Bが欠陥を知った時から1年以内にその旨をAに通知しなければならない。 | ◯ |
消滅時効との関係 | |||
8 | 26-03-3 | 売買契約の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の買主の売主に対する担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行する。 | ◯ |