【宅建過去問】(平成02年問05)代理


Aは、Bの代理人として、C所有の土地についてCと売買契約を締結したが、その際次に掲げるような事情があった場合、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. BがAに代理権を与えていなかった場合は、Cは、そのことについて善意無過失であり、かつ、Bの追認がないとき、Aに対して契約の履行の請求又は損害賠償の請求をすることができる。
  2. AがBに隠れて当該土地の売買についてCからも代理権を与えられていた場合、Aの行為は、代理権を有しない者がした行為とみなされる。
  3. CがAをだまして売買契約を締結させた場合は、Aは当該売買契約を取り消すことができるが、Bは取り消すことができない。
  4. BがAに代理権を与えていなかった場合は、Cは、そのことについて善意であり、かつ、Bの追認がないとき、当該売買契約を取り消すことができる。

正解:3

無権代理の場合の相手方の権限を、主観別に分けてまとめておく。

1 正しい

相手方Cが本人Bの無権代理につき善意無過失である場合で、本人Bの追認を得られないときは、Cは、無権代理人Aに対し履行または損害賠償の責任を追及することができる(民法117条)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
無権代理人の責任追及(民法[04]3(3))
年-問-肢内容正誤
118-02-4本人が無権代理行為を追認しない場合、無権代理人は相手方の選択に従い、契約履行または損害賠償責任を負う。ただし、相手方が契約時に悪意の場合は責任を負わない。
211-07-4表見代理に該当する場合でも、相手方は無権代理を主張し、無権代理人に対し損害賠償請求できる場合がある。
309-01-4本人が追認を拒絶した場合、無権代理人が自ら契約を履行する責任を負うことがある。
405-02-2本人が追認しないときは、相手方は、無権代理につき善意であれば過失の有無に関係なく、無権代理人に履行を請求できる。×
502-05-1本人BがAに代理権を与えていなかった場合は、相手方Cは、そのことについて善意無過失であり、かつ、Bの追認がないとき、Aに対して契約の履行の請求又は損害賠償の請求をすることができる。

2 正しい

代理人が相手方の代理人も兼ねることを双方代理という。
双方代理は、原則として、無権代理行為とみなされる(民法108条1項本文)。ただし、以下の場合は例外であり、双方代理が許されている(同項ただし書き)。

  1. 本人があらかじめ許諾した行為
  2. 債務の履行

代理人が相手方の代理人も兼ねることを双方代理という。本肢では、「本人Bに隠れて」双方代理行為をしたのだから、その行為は、無権代理行為とみなされる。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
双方代理(民法[03]5(2)(3))
年-問-肢内容正誤
1R02s-02-2AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を授与した。BがCの代理人も引き受け、AC双方の代理人として甲土地に係るAC間の売買契約を締結した場合、Aに損害が発生しなければ、Bの代理行為は無権代理とはみなされない。×
230-02-3[Aが、所有する甲土地の売却に関する代理権をBに授与し、BがCとの間で、Aを売主、Cを買主とする甲土地の売買契約を締結した。]BがCの代理人にもなって本件契約を成立させた場合、Aの許諾の有無にかかわらず、本件契約は無効となる。
×
324-02-3売主・買主の承諾があれば、双方代理は有効。
422-02-4売主・買主の承諾があれば、双方代理は有効。
521-02-4売主に損失が発生しなければ、売主・買主双方の代理が可能。×
620-03-2売主から書面で代理権を与えられていれば、売主・買主双方の代理が可能。×
708-02-1登記申請について、買主の同意があれば、売主の代理人が、売主・買主双方を代理できる。
803-03-4本人・相手方の同意があれば、双方代理が可能。
902-05-2売主の代理人が売主に隠れて当該土地の売買について買主からも代理権を与えられていた場合は、当該契約は効力を生じない。

3 誤り

意思表示の効力が詐欺によって影響を受けるべき場合、その事実の有無は、代理人について決する(民法101条1項)。したがって、代理人Aがだまされて契約を締結した場合、その契約は取消しができるものとなる(民法96条1項)。
代理による意思表示である以上、この取消権も、本人であるBに帰属する。契約を取り消すことができるのは、Bである。

※代理人Aが取消権を行使できるかどうかは、代理権の範囲の設定による。一律に結論が決まるものではない。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
代理行為の瑕疵(民法[03]3(2))
年-問-肢内容正誤
126-02-エ代理人の意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、本人の選択に従い、本人又は代理人のいずれかについて決する。
×
224-02-2法人が代理人により取引を行った場合、即時取得の要件である善意・無過失の有無は、代理人を基準に判断される。
314-02-1Aは、Bに対してCとの間の売買契約を委任したが、Bが、DをCと勘違いした要素の錯誤によってDとの間で契約した場合、Bに重過失がなければ、Aは、この契約を取り消すことができる。
413-08-2代理人が、買主から虚偽の事実を告げられて売買契約をした場合でも、売主本人がその事情を知りつつ代理人に対して買主との契約を委託したものであるときには、売主本人から買主に対する詐欺による取消しはできない。
504-02-2未成年者である代理人が、相手方にだまされて契約を締結した場合、詐欺につき善意無過失の本人は、契約を取り消すことができない。
×
603-03-2代理人が相手方にだまされて契約を締結した場合、本人が詐欺の事実を知っていたときは、契約を取り消すことができない。
702-05-3相手方が代理人をだまして売買契約を締結させた場合は、代理人は当該売買契約を取り消すことができるが、本人は取り消すことができない。×
代理人による詐欺
108-02-3代理人が相手方をだまして契約を締結した場合、本人が詐欺の事実を知っていたと否とにかかわらず、相手方は契約を取り消すことができる。

4 正しい

無権代理につき善意である相手方Cは、本人Bが追認をしない間は、契約を取り消すことができる(民法115条)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
無権代理:相手方の取消権(民法[04]3(2))
年-問-肢内容正誤
118-02-3本人が無権代理行為を追認しない間は、相手方は契約を取消可能。ただし、相手方が悪意のときには取消不能。
209-01-2無権代理人は、本人の追認のない間は、契約を取り消すことができる。×
305-02-1本人が追認するまでの間、相手方は、無権代理について悪意であっても、契約を取り消すことができる。×
405-02-3相手方は、無権代理について善意無過失であれば、本人が追認しても、契約を取り消すことができる。×
504-03-2無権代理行為は有効であるが、本人が取り消すことができる。×
604-03-3善意無過失の相手方は、本人が追認するまでは、契約を取り消すことができる。
702-05-4BがAに代理権を与えていなかった場合は、相手方Cは、そのことについて善意であり、かつ、Bの追認がないとき、当該売買契約を取り消すことができる。

>>年度目次に戻る

令和6年 宅建解答速報・解説

毎年好評の「解答速報」は、本試験当日17:04に終了しました。

現在は、解説動画の収録・編集と解説文の執筆が進行中です。
これらを収めた【無料公開講座】も開講中。本試験の振り返りのため、気軽に受講しましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です