【宅建過去問】(平成05年問08)売主の担保責任

Aが1,000㎡の土地についてBに売却する契約をBと締結した場合の、売主Aの担保責任に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

  1. その土地を実測したところ700㎡しかなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、代金の減額を請求することができる。
  2. その土地のうち300㎡がCの所有地で、AがBに移転することができなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、代金の減額を請求することができる。
  3. その土地のすべてがDの所有地で、AがBに移転することができなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。
  4. その土地にEが登記済みの地上権を有していて、Bが利用目的を達成することができなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。

正解:1

1 誤り

買主が売主の担保責任を追及することができるのは、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に限られる(民法562条、563条、564条)。
本肢では、「1,000㎡の土地」の売買契約をしたにもかかわらず、実際には700㎡しかない。したがって、数量に関して、契約不適合が生じているようにも見える。
しかし、もし、この面積不足について、買主Bが知っていた(悪意)のであれば、Bは、そもそもそ700㎡の土地を購入するという売買契約を締結したのである。この場合、目的物が「契約の内容に適合しない」という評価はできない。Bが売主Aの担保責任を追及し、代金の減額を請求することは不可能である。
本肢は、「善意悪意に関係なく」とする点が誤っている。

■参照項目&類似過去問
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契約不適合担保責任:数量不足のケース(民法[24]3(2))
年-問-肢内容正誤
1R02s-07-1Aを売主、Bを買主として、甲土地の売買契約が締結された。甲土地の実際の面積が本件契約の売買代金の基礎とした面積より少なかった場合、Bはそのことを知った時から2年以内にその旨をAに通知しなければ、代金の減額を請求することができない。
×
205-08-1Aが1,000㎡の土地についてBに売却する契約をBと締結した。その土地を実測したところ700㎡しかなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、代金の減額を請求することができる。
×
303-11-4BがAからAの所有地を買い受ける契約を締結した。その売買が実測面積を表示し、単価を乗じて価格が定められている場合において、その面積が著しく不足していたときは、Bは、その善意悪意に関係なく契約を解除することができる。
×

2 正しい

権利の一部が他人に属する場合、売主Aは、土地の所有者Cから土地の所有権を取得して買主Bに移転する義務を負う(民法561条)。
他人に属する一部の土地の権利を買主に移転することができない場合、つまり、移転した権利が契約の内容に適合しない場合にも、売主は、目的物の契約不適合のときと同様の担保責任を負う(同法565条)。担保責任の追及方法として、Bは、Aに対して代金減額請求をすることができる(同法563条)。

※買主が、土地の一部が第三者の所有物であることを知っていたかどうか(善意悪意)によって、結論は、異ならない。

■参照項目&類似過去問
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契約不適合担保責任:一部他人物(民法[24]3(3)②)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。
116-10-3Bが購入した土地の一部を第三者Cが所有していた場合、Bがそのことを知っていたとしても、BはAに対して代金減額請求をすることができる。
208-08-2甲土地の8割の部分はAの所有であるが、2割の部分がCの所有である場合で、そのことをBが知って契約したときには、Bは、Aに対して契約を解除することができない。
×
305-08-2甲土地のうち一部がCの所有地で、AがBに移転することができなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、代金の減額を請求することができる。
403-11-1甲土地の一部を第三者が所有していた場合、BがAに権利を移転できず、残りの部分だけでは買主が買うことができないとき、買主は、他人物であることに関する善意悪意に関係なく、契約を解除できる。

3 正しい

他人物売買も契約として有効である。この契約により、売主Aは、土地の所有者Dから土地の所有権を取得して買主に移転する義務を負う(民法561条)。
土地の権利を買主に移転することができなければ、買主に対する債務不履行である。したがって、Bは、契約を解除することができる(同法542条)。

※買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知っていたかどうか(善意悪意)によって、結論は、異ならない。

■参照項目&類似過去問
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他人物売買:売主の債務不履行(民法[24]1(3)③)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。
128-06-1
Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、BはAに対して、損害賠償を請求することができる。
228-06-2
Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、Bは、本件契約を解除することができる。
317-09-1買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知りつつ売買契約を締結し、売主が売却した当該目的物の所有権を取得して買主に移転することができない場合には、買主は売買契約を解除するととともに、損害賠償を請求することができる。
416-10-2Aは、C所有の土地を自ら取得するとしてBに売却したが、Aの責に帰すべき事由によってCから所有権を取得できず、Bに所有権を移転できない場合、Bは、他人物売買であることを知っていたときであっても、Aに対して損害賠償を請求できる。
508-08-1この土地がCの所有であることをBが知って契約した場合でも、Aがこの土地をCから取得してBに移転できないときには、Aは、Aに対して契約を解除することができる。
605-08-3甲土地のすべてがCの所有地で、AがBに移転することができなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。
703-11-2その土地の全部が他人のものであって、AがBに権利を移転することができないとき、買主の善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。

4 正しい

売買の目的物である土地に地上権が設定されていることにより、Bは、土地の利用目的を達成することができない。このように移転した権利が契約の内容に適合しない場合にも、売主は、目的物の契約不適合のときと同様の担保責任を負う(同法565条)。担保責任の追及方法として、Aは、売買契約を解除することができる(同法542条)。

※買主が、地上権の存在を知っていたかどうか(善意悪意)によって、結論は、異ならない。

■参照項目&類似過去問
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売主の担保責任(抵当権・地上権等がある場合)(民法[24]3(3)③)
年-問-肢内容正誤
抵当権がある場合
[共通の設定]
Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。甲土地には、Cを抵当権者とする抵当権が設定され、その登記もされていた。
128-06-3
Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失い損害を受けたとしても、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。×
228-06-4
Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失ったときは、Bは、本件契約を解除することができる。
320-09-2甲土地に設定されている抵当権が実行されてBが所有権を失った場合、Bが甲土地に抵当権が設定されていることを知っていたとしても、BはAB間の売買契約を解除することができる。
417-09-3買主が、抵当権が存在していることを知りつつ不動産の売買契約を締結し、当該抵当権の行使によって買主が所有権を失った場合には、買主は、売買契約の解除はできるが、売主に対して損害賠償請求はできない。×
511-10-3AがCに設定していた契約の内容に適合しない抵当権の実行を免れるため、BがCに対しAの抵当債務を弁済した場合で、BがAB間の契約締結時に抵当権の存在を知っていたとき、Bは、Aに対し、損害の賠償請求はできないが、弁済額の償還請求はすることができる。×
608-08-3この土地が抵当権の目的とされており、その実行の結果Dが競落したとき、Bは、Aに対して契約を解除することができる。
704-06-3Bは、Cの抵当権が設定されていることを知らなかったときであっても、Cが抵当権を実行する前においては、Aに対し、売買契約を解除することができない。×
802-06-1Aは、契約の際Cの抵当権のあることを知らなくても、その理由だけでは、AB間の売買契約を解除することはできない。
901-04-4その土地に抵当権が設定されていて、買主がそのことを知らなかったときであっても、買主は、その事実を知ったとき、抵当権が行使された後でなければ、契約を解除することができない。×
地上権がある場合
105-08-4売買の目的物である土地に第三者が登記済みの地上権を有していて、買主が利用目的を達成することができなかった場合、善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。

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【宅建過去問】(平成05年問08)売主の担保責任” に対して8件のコメントがあります。

  1. しょう より:

    肢1の解説で、AとBが逆になっているのでは。

    《しかし、もし、この面積不足について、Aが知っていた(悪意)のであれば、Aは、そもそもそ700㎡の土地を購入するという売買契約を締結したのである。この場合、目的物が「契約の内容に適合しない」という評価はできない。AがBの担保責任を追及し、代金の減額を請求することは不可能である。
    本肢は、「善意悪意に関係なく」とする点が誤っている。》

    《しかし、もし、この面積不足について、Bが知っていた(悪意)のであれ
    ば、Bは、そもそもそ700㎡の土地を購入するという売買契約を締結したのである。この場合、目的物が「契約の内容に適合しない」という評価はできない。BがAの担保責任を追及し、代金の減額を請求することは不可能である。
    本肢は、「善意悪意に関係なく」とする点が誤っている。》

    1. 家坂 圭一 より:

      しょう様

      おっしゃる通りです。
      売主Aと買主Bが完全に逆転していました。
      先ほど、この点を修正済です。
      ご指摘いただき、本当にありがとうございます。

  2. みっちゃん より:

    1についてお尋ねします。1についても、2,3,4と同じように、買主の善意、悪意は関係なくあくまでも契約不適合で判断すべきで、契約内容が1,000㎡となっていたのであれば、Bが悪意であっても担保責任を追及できるのではないでしょうか。1だけ考え方がちがうのはおかしいと思うのですが・・・。

    1. 家坂 圭一 より:

      みっちゃん様

      ご質問ありがとうございます。

      1.肢1について

      肢1で問題になっているのは、例えば、

      1. 登記記録上1,000㎡と記載されているが、
      2. 実測してみると700㎡しかなかった

      というようなケースです。
      (実際には起こりそうもありません。)

      (1).買主が悪意の場合

      「実測してみると700㎡しかない」という事実について、買主が悪意だとすれば、売買契約の内容は、「実測面積700㎡の土地を引き渡す。」というものだと考えられます。
      したがって、その土地を引き渡せば、そもそも「契約不適合」は、生じていません

      (2).買主が善意の場合

      一方、実測面積について買主が善意であれば、売買契約の内容は、「1,000㎡の土地を引き渡す。」というものです。
      700㎡の土地を引き渡したとしても、「契約不適合」生じています

      2.肢2について

      肢2と比べると分かりやすいと思います。

      肢2のAは、買主Bに対して、

        • 自分が所有する700㎡の土地に加えて、
        • C所有の300㎡の土地を入手して、
        • Bに引き渡す

      という債務を負っています。

      「300㎡がCの所有地」であることについて、Bが善意でも悪意でも、Aが約束した通りに1,000㎡の土地を引き渡すことができなかったことに違いはありません。つまり、「契約不適合」生じています
      この「契約不適合」について、Aは、担保責任を負います。
      責任追及方法の一つとして、Bは、代金減額を請求することができます。

      3.ななこさんのご質問

      1つ下にある、ななこさんのご質問も、同内容です。
      こちらもご覧になることをお勧めします。

  3. ななこ より:

    1.ですが、誤の場合、
    その土地を実測したところ700㎡しかなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、代金の減額を請求することができる。
    ではなく、
    その土地を実測したところ700㎡しかなかった場合、Bは、善意悪意に関係なく、代金の減額を請求することができない。
    じゃないですかね?他の問題集ではこうだったので、どっちかなと思って、教えていただけると幸いです。

    1. 家坂 圭一 より:

      ななこ様

      ご質問ありがとうございます。
      売主の契約不適合担保責任について説明します。

      民法改正で導入された「契約不適合担保責任」というのは、文字通り、
      「引き渡した物に『契約不適合』があった場合に、売主が買主に対して負う責任」
      という意味です。
      売主が責任を負うかどうかは、「契約不適合」の有無で決まります。
      改正前の民法とは違って、「〇〇について善意か悪意か」で結論を決めるわけではありません。

      とはいえ、ほとんどの場合において、
      買主が◯◯について悪意であれば、売主は、契約不適合担保責任を負わない。
      という結論になります。

      その理由について、いちばん分かりやすい「目的物に物理的欠陥があった場合」を例に説明しましょう。

      (1)買主が欠陥について知っていた(悪意)。
      (2)ということは、欠陥のある物を対象に売買契約をしている。
      (3)したがって、「契約不適合」は存在しない。
      (4)売主は、担保責任を負わない。

      「欠陥を修理した上で引き渡す。」などという特約があれば別ですが、
      問題文にそのような特殊な事情が書かれていない限り、以上の結論になります。

      買主の善意・悪意と売主の契約不適合担保責任に関しては、別の記事でまとめました。
      こちらもご覧ください。
      ■売主の担保責任と悪意の買主

      1. ななこ より:

        丁寧に教えてくださってありがとうございました!
        おかげで理解できました!
        また何かあったらお願いします(>_<)

        1. 家坂 圭一 より:

          わざわざご返信ありがとうございます。
          本試験も迫ってきています。
          体に気を付けて、粘り強くがんばりましょう!
          今後ともよろしくお願いします。

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