【宅建過去問】(平成01年問04)売主の担保責任
土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- その土地が第三者の所有であって、当該第三者に譲渡の意思がないときは、契約は無効となる。
- その土地に欠陥があって、買主がそのことを知らなかったときは、買主は、その事実を知ったとき、欠陥の程度に関係なく、契約を解除することができる。
- その土地に権利を主張する者がいて、買主が買い受けた土地の所有権の一部を失うおそれがあるときは、買主は、売主が相当の担保を提供しない限り、その危険の限度に応じて代金の一部の支払いを拒むことができる。
- その土地に抵当権が設定されていて、買主がそのことを知らなかったときであっても、買主は、その事実を知ったとき、抵当権が行使された後でなければ、契約を解除することができない。
正解:3
1 誤り
他人物売買も契約として有効である。この契約により、売主は、第三者から土地の所有権を取得して買主に移転する義務を負う(民法561条)。
目的物の所有者に譲渡の意思がなかったとしても、この結論には変わりがない(最判昭25.10.26)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R06-01-4 | 他人が所有している土地を目的物にした売買契約は無効であるが、当該他人がその売買契約を追認した場合にはその売買契約は有効となる。 | × |
2 | H29-02-2 | Aを売主、Bを買主としてCの所有する乙建物の売買契約が締結された場合、BがAの無権利について善意無過失であれば、AB間で売買契約が成立した時点で、Bは乙建物の所有権を取得する。 | × |
3 | H29-05-4 | Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは当該自動車をCに100万円で売却した。売買契約締結時には当該自動車がAの所有物ではなく、Aの父親の所有物であったとしても、AC間の売買契約は有効に成立する。 | ◯ |
4 | H21-10-3 | Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。 | × |
5 | H13-01-1 | A・B・Cが、持分を6・2・2の割合とする建物の共有をしている。Aが、B・Cに無断で、この建物を自己の所有としてDに売却した場合は、その売買契約は有効であるが、B・Cの持分については、他人の権利の売買となる。 | ◯ |
6 | H11-10-1 | AからBが建物を買い受ける契約を締結した。この建物がCの所有で、CにはAB間の契約締結時からこれを他に売却する意思がなく、AがBにその所有権を移転することができない場合でも、AB間の契約は有効に成立する。 | ◯ |
7 | H01-04-1 | 売買契約の目的物である土地が第三者の所有であって、当該第三者に譲渡の意思がないときは、契約は無効となる。 | × |
2 誤り
売買契約の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合、買主に債務不履行が認められる。この場合、売主の担保責任を追及することができる。
そして、担保責任を追及する方法の一つとして、契約の解除も可能である(民法564条、541条、542条)。
しかし、「債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は、契約を解除することができない(同法541条ただし書き)。
本肢は、「欠陥の程度に関係なく」とする点が誤っている。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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[共通の設定] Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約を締結した。甲建物には、品質に関して契約の内容に適合しない箇所(本件不適合)があった。 | |||
1 | R03-07-3 | Bが引渡しを受けた甲建物に契約の内容に適合しない欠陥があることが判明したときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。 | × |
2 | R01-03-2 | 建物の構造耐力上主要な部分の不適合については、契約の目的を達成することができない場合でなければ、Bは本件不適合を理由に売買契約を解除することができない。 | × |
3 | R01-03-3 | Bが本件不適合を理由にAに対して損害賠償請求をすることができるのは、本件不適合を理由に売買契約を解除することができない場合に限られる。 | × |
4 | 19-11-2 | Bが本件不適合を知った場合でも、その不適合により売買契約をした目的を達成することができないとまではいえないときは、Aはその不適合を担保すべき責任を負わない。 | × |
5 | 15-10-2 | Bが、本件不適合を知らないまま契約を締結した場合、この欠陥が存在するために契約を行った目的を達成することができるか否かにかかわらず、Bは、Aの担保責任を追及して契約の解除を行うことができる。 | ◯ |
6 | 14-09-2 | Bは、本件不適合がこの売買契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である場合は、この売買契約を解除できないが、この欠陥により受けた損害につき、Aに対し賠償請求できる。 | ◯ |
7 | 14-09-4 | Bは、本件不適合が存在するために、この売買契約を締結した目的を達することができるか否かにかかわらず、この売買契約を解除できる。 | ◯ |
8 | 08-08-4 | 売買契約の目的物である土地の8割が都市計画街路の区域内にあることが容易に分からない状況にあったため、買主がそのことを知らなかった場合は、このため契約の目的を達することができるか否かにかかわらず、買主は、売主に対して契約を解除することができる。 | ◯ |
9 | 04-08-1 | 購入した建物の引渡し後に欠陥が発見された場合、その欠陥が軽微であり居住の用に支障がなくても、買主は、当該契約を解除することができる。 | × |
10 | 03-11-3 | 売買の目的物に物理的な欠陥があり、契約目的を達成できない場合、買主の善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。 | × |
11 | 01-04-2 | 売買の目的物である土地に欠陥があって、買主がそのことを知らなかったときは、買主は、その事実を知ったとき、欠陥の程度に関係なく、契約を解除することができる。 | × |
3 正しい
売買の目的について権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利の全部又は一部を取得することができず、又は失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる(民法576条本文)。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない(同条ただし書き)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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権利を失うおそれがある場合 | |||
1 | R03-07-4 | Aを売主、Bを買主として、A所有の甲自動車を50万円で売却する契約が締結された。甲自動車について、第三者CがA所有ではなくC所有の自動車であると主張しており、Bが所有権を取得できないおそれがある場合、Aが相当の担保を供したときを除き、BはAに対して、売買代金の支払を拒絶することができる。 | ◯ |
2 | 01-04-3 | 売買契約の目的物である土地に権利を主張する者がいて、買主が買い受けた土地の所有権の一部を失うおそれがあるときは、買主は、売主が相当の担保を提供しない限り、その危険の限度に応じて代金の一部の支払いを拒むことができる。 | ◯ |
抵当権等の登記がある場合 | |||
1 | 21-10-4 | A所有の甲土地に売買契約の内容に適合しない抵当権の登記があり、Bが当該土地の抵当権消滅請求をした場合には、Bは当該請求の手続が終わるまで、Aに対して売買代金の支払を拒むことができる。 | ◯ |
2 | 02-06-2 | Aは、売買契約の内容に適合しない抵当権が存在する場合は、その消滅を請求することができ、その手続きが終わるまで、Bに対し、代金の支払いを拒むことができる。 | ◯ |
4 誤り
民法は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合についても、目的物が契約の内容に適合しないものである場合のルールを準用している(同法565条)。
したがって、「その土地に抵当権が設定されていること」が売買契約の内容に適合しないのであれば、買主は、売主の担保責任を追及することが可能である。
担保責任を追及する方法の一つとして、契約を解除することができる(同法564条、541条)。
解除ができるのは、抵当権の実行後には限られない。実行の前でも、解除は可能である。本肢は、「抵当権が行使された後でなければ、契約を解除することができない」とする点が誤り。
※抵当権の実行前でも、担保責任を追及することができる。この点は、令和2年以前の民法と大きく違っている。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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抵当権がある場合 | |||
[共通の設定] Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。甲土地には、Cを抵当権者とする抵当権が設定され、その登記もされていた。 | |||
1 | 28-06-3 | Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失い損害を受けたとしても、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。 | × |
2 | 28-06-4 | Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失ったときは、Bは、本件契約を解除することができる。 | ◯ |
3 | 20-09-2 | 甲土地に設定されている抵当権が実行されてBが所有権を失った場合、Bが甲土地に抵当権が設定されていることを知っていたとしても、BはAB間の売買契約を解除することができる。 | ◯ |
4 | 17-09-3 | 買主が、抵当権が存在していることを知りつつ不動産の売買契約を締結し、当該抵当権の行使によって買主が所有権を失った場合には、買主は、売買契約の解除はできるが、売主に対して損害賠償請求はできない。 | × |
5 | 11-10-3 | AがCに設定していた契約の内容に適合しない抵当権の実行を免れるため、BがCに対しAの抵当債務を弁済した場合で、BがAB間の契約締結時に抵当権の存在を知っていたとき、Bは、Aに対し、損害の賠償請求はできないが、弁済額の償還請求はすることができる。 | × |
6 | 08-08-3 | この土地が抵当権の目的とされており、その実行の結果Dが競落したとき、Bは、Aに対して契約を解除することができる。 | ◯ |
7 | 04-06-3 | Bは、Cの抵当権が設定されていることを知らなかったときであっても、Cが抵当権を実行する前においては、Aに対し、売買契約を解除することができない。 | × |
8 | 02-06-1 | Aは、契約の際Cの抵当権のあることを知らなくても、その理由だけでは、AB間の売買契約を解除することはできない。 | ◯ |
9 | 01-04-4 | その土地に抵当権が設定されていて、買主がそのことを知らなかったときであっても、買主は、その事実を知ったとき、抵当権が行使された後でなければ、契約を解除することができない。 | × |
地上権がある場合 | |||
1 | 05-08-4 | 売買の目的物である土地に第三者が登記済みの地上権を有していて、買主が利用目的を達成することができなかった場合、善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。 | ◯ |
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