【宅建過去問】(平成17年問10) 使用貸借
Aは、自己所有の建物について、災害により居住建物を失った友人Bと、適当な家屋が見つかるまでの一時的住居とするとの約定のもとに、使用貸借契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Bが死亡した場合、使用貸借契約は当然に終了する。
- Aがこの建物をCに売却し、その旨の所有権移転登記を行った場合でも、Aによる売却の前にBがこの建物の引渡しを受けていたときは、Bは使用貸借契約をCに対抗できる。
- Bは、Aの承諾がなければ、この建物の一部を、第三者に転貸して使用収益させることはできない。
- 適当な家屋が現実に見つかる以前であっても、適当な家屋を見つけるのに必要と思われる客観的な期間を経過した場合は、AはBに対し、この建物の返還を請求することができる。
正解:2
宅建の試験では、賃貸借に関する出題や賃貸借と使用貸借を比較する問題を出題されることが多い。この問題は、使用貸借に関するものであるが、賃貸借と比較しながらまとめておこう。
1 正しい
使用貸借は、借主(B)の死亡によって終了する(民法599条)。
※賃貸借の場合、賃借権は通常の財産権として相続される。
賃貸借 | 使用貸借 |
相続される | 相続されない |
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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[共通の設定] AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物について使用貸借契約を締結した。 | |||
1 | R03-03-エ | Bが死亡した場合、Bの相続人は、Aとの間で特段の合意をしなくても、当該使用貸借契約の借主の地位を相続して甲建物を使用することができる。 | × |
2 | 27-03-1 | 借主が死亡した場合、賃貸借では契約は終了しないが、使用貸借では契約が終了する。 | ◯ |
3 | 21-12-4 | Bが死亡すると使用貸借契約は終了するので使用借権はBの相続人に相続されない。 | ◯ |
4 | 17-10-1 | Bが死亡した場合、使用貸借契約は当然に終了する。 | ◯ |
5 | 13-06-2 | 使用貸借契約において、貸主又は借主が死亡した場合、使用貸借契約は効力を失う。 | × |
6 | 09-08-3 | 契約で定めた期間の満了前にBが死亡した場合には、Bの相続人は、残りの期間についても、当該建物を無償で借り受ける権利を主張することはできない。 | ◯ |
2 誤り
使用貸借契約については、使用借権が対抗要件を獲得する方法が存在しない。つまり、借主Bは目的物の新しい所有者Cに対抗することはできない。
※建物の賃貸借の場合、賃借権の登記(民法605条)または引渡し(借地借家法31条1項)が対抗要件となる。
賃貸借 | 使用貸借 |
賃借権の登記 引き渡し |
方法なし |
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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[共通の設定] AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物について使用貸借契約を締結した。 | |||
1 | 21-12-3 | Aが甲建物をCに売却した場合、Bは甲建物の引渡しを受けて甲建物に居住していてもCに対して使用借権を主張することができない。 | ◯ |
2 | 19-13-2 | Aが甲建物をCに売却した場合、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。 | ◯ |
3 | 17-10-2 | Aがこの建物をCに売却し、その旨の所有権移転登記を行った場合でも、Aによる売却の前にBがこの建物の引渡しを受けていたときは、Bは使用貸借契約をCに対抗できる。 | × |
4 | 09-08-1 | Aが、Bの借受け後に当該建物をCに譲渡し登記を移転した場合、Cは、Bの借受け時から2年間は、Bに対し当該建物の返還を請求することはできない。 | × |
3 正しい
使用貸借において、借主Bは、貸主Aの承諾を得なければ、第三者に借用物の使用収益をさせることができない(民法594条2項)。
※賃貸借に関しても、無断転貸があった場合、賃貸人に賃貸借契約の解除を認めるのが民法の規定である(民法612条2項)。しかし、このルールは判例により、「賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない特段の事情があるときは、契約を解除することはできない」と修正されている(最判昭28.09.25)。
賃貸借 | 使用貸借 |
背信的行為でない限り、解除不可 | 解除可能 |
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R04-06-2 | Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合について考える。Bは、①ではAの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできないが、②ではAの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる。 | ◯ |
[共通の設定] AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物について使用貸借契約を締結した。 | |||
2 | H21-12-1 | BがAに無断で甲建物を転貸しても、Aに対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除できないのに対し、CがAに無断で甲建物を転貸した場合には、Aは使用貸借契約を解除できる。 | ◯ |
3 | H17-10-3 | Bは、Aの承諾がなければ、この建物の一部を、第三者に転貸して使用収益させることはできない。 | ◯ |
4 正しい
使用貸借の場合、貸主からの解除に関しては、以下のルールがある(民法598条1項、2項)。
本問では、「適当な家屋に移るまでの一時的な居住を目的」として、使用・収益の目的を定めている。したがって、使用収益に足りる期間を経過しない限り、AはBに対して、建物の返還を請求することができない。
本肢では、「適当な家屋を見つけるのに必要と思われる客観的な期間を経過した」というのだから、AはBに対し、建物の返還を請求することができる。
■参照項目&類似過去問
内容を見る[共通の設定]
AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物について使用貸借契約を締結した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R04-06-3 | 使用貸借の期間を2年と定めた場合、Bは、期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。 | × |
1 | H21-12-2 | A所有の甲建物につき、Bが適当な家屋に移るまでの一時的な居住を目的として使用貸借契約を締結した。返還時期の定めがない場合、AはBに対していつでも返還を請求できる。 | × |
2 | H17-10-4 | Aは、災害により居住建物を失った友人Bと、適当な家屋が見つかるまでの一時的住居とするとの約定のもとに、使用貸借契約を締結した。適当な家屋が現実に見つかる以前であっても、適当な家屋を見つけるのに必要と思われる客観的な期間を経過した場合は、AはBに対し、この建物の返還を請求することができる。 | ◯ |
3 | H09-08-2 | 2年の期間満了時において、Aの返還請求に正当事由がない場合には、Bは、従前と同一の条件で、さらに2年間当該建物を無償で借り受けることができる。 | × |