【宅建過去問】(平成15年問11)敷金(賃貸借契約)
借主Aは、B所有の建物について貸主Bとの間で賃貸借契約を締結し、敷金として賃料2ヵ月分に相当する金額をBに対して支払ったが、当該敷金についてBによる賃料債権への充当はされていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
- 賃貸借契約が終了した場合、建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立たず、Aの建物明渡しはBから敷金の返還された後に行えばよい。
- 賃貸借契約期間中にBが建物をCに譲渡した場合で、Cが賃貸人の地位を承継したとき、敷金に関する権利義務は当然にCに承継される。
- 賃貸借契約期間中にAがDに対して賃借権を譲渡した場合で、Bがこの賃借権譲渡を承諾したとき、敷金に関する権利義務は当然にDに承継される。
- 賃貸借契約が終了した後、Aが建物を明け渡す前に、Bが建物をEに譲渡した場合で、BE間でEに敷金を承継させる旨を合意したとき、敷金に関する権利義務は当然にEに承継される。
正解:2
1 誤り
敷金は目的物(建物)明渡義務を履行するまでの賃貸人の賃借人に対する全ての債権を担保するものである。したがって、明渡義務が先履行義務であり、明渡すまでは敷金の返還請求権が発生しない(民法622条の2第1項)
したがって、建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立たない(最判昭49.09.02)。
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同時履行の抗弁権:敷金に関連する債務([22]2(3)①)
同時履行の抗弁権:敷金に関連する債務([26]8(2))
同時履行の抗弁権:敷金に関連する債務([26]8(2))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R04-12-4 | 甲建物の賃借人Aが賃貸人Bに対して敷金を差し入れている場合、本件契約が期間満了で終了するに当たり、Bは甲建物の返還を受けるまでは、Aに対して敷金を返還する必要はない。 | ◯ |
2 | R03-01-2 | 賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、1個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものといえる。 | × |
3 | R03-01-4 | 賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務の間に同時履行の関係を肯定することは、家屋の明渡しまでに賃貸人が取得する一切の債権を担保することを目的とする敷金の性質にも適合する。 | × |
4 | R02-04-3 | 賃借人から敷金の返還請求を受けた賃貸人は、賃貸物の返還を受けるまでは、これを拒むことができる。 | ◯ |
5 | H27-08-ア | マンションの賃貸借契約終了に伴う賃貸人の敷金返還債務と、賃借人の明渡債務は、特別の約定のない限り、同時履行の関係に立つ。 | × |
6 | H15-11-1 | 建物の賃貸借契約が終了した場合、建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立たず、賃借人の建物明渡しは賃貸人から敷金の返還された後に行えばよい。 | × |
7 | H13-09-3 | 賃貸借契約が終了した場合、建物明渡債務と敷金返還債務とは常に同時履行の関係にあり、Aは、敷金の支払と引換えにのみ建物を明け渡すと主張できる。 | × |
2 正しい
賃貸人たる地位が譲受人に移転したときは、敷金の返還に関する債務は、譲受人が承継する(民法605条の2第3項)。
※賃借権の譲渡(肢3)の場合との違いに注意!!
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賃貸人の変更と敷金(民法[26]8(3)①)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03-12-2 | Aを賃貸人、Bを賃借人とする甲建物の賃貸借契約が締結された。甲建物がBに引き渡された後、甲建物の所有権がAからCに移転した場合、本件契約の敷金は、他に特段の合意がない限り、BのAに対する未払賃料債務に充当され、残額がCに承継される。 | ◯ |
2 | 20-10-2 | 賃貸中の建物が譲渡された場合、賃借人の承諾がなくても、敷金返還債務は新所有者に承継される。 | ◯ |
3 | 15-11-2 | 賃貸借契約期間中に建物が譲渡された場合で、譲受人が賃貸人たる地位を承継したとき、敷金に関する権利義務も当然承継される。 | ◯ |
4 | 15-11-4 | 賃貸借契約が終了した後、借主が建物を明け渡す前に、貸主が建物を第三者に譲渡した場合で、貸主と譲受人との間で譲受人に敷金を承継させる旨を合意したとき、敷金に関する権利義務は当然に譲受人に承継される。 | × |
5 | 11-14-4 | 賃貸借契約期間中に建物が売却され、賃貸人たる地位を譲受人に承継した場合、賃借人の承諾がない限り敷金返還債務は承継されない。 | × |
6 | 06-10-3 | 貸主が第三者に建物を譲渡し、譲受人が賃貸人となった場合、貸主に差し入れていた敷金は、借主の未払賃料を控除した残額について、権利義務関係が譲受人に承継される。 | ◯ |
7 | 02-13-2 | 賃借人が賃貸人に敷金を差し入れていた場合、建物の譲受人は、賃貸人からその敷金を受領しない限り、賃借人に対する敷金返還債務を引き継がない。 | × |
3 誤り
賃貸借契約期間中に賃借権の譲渡が生じた場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾したとしても、敷金に関する権利義務は当然には新賃借人に承継されない(最判昭53.12.22)。
※賃貸人の地位の移転(肢2)の場合との違いに注意!!
■参照項目&類似過去問
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賃借人の変更と敷金(民法[26]8(3)②)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 20-10-3 | 賃借権の移転合意だけでは、敷金返還請求権は、旧賃借人から新賃借人に承継されない。 | ◯ |
2 | 15-11-3 | 賃借権の譲渡を賃貸人が承諾した場合、敷金に関する権利義務は当然新賃借人に承継される。 | × |
3 | 06-10-4 | 借主が未払賃料を支払って、貸主の承諾を得て賃借権を第三者に譲渡した場合、借主が譲受人に敷金返還請求権を譲渡する等しなくても、敷金に関する権利義務関係は、譲受人に承継される。 | × |
4 誤り
賃貸借契約が終了した後、賃借人が建物を明け渡す前に、賃貸人が建物を第三者に譲渡した場合において、賃貸人と第三者で第三者に敷金を承継させる旨を合意したとしても、敷金に関する権利義務は第三者に承継されない(最判昭48.02.02)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
賃貸人の変更と敷金(民法[26]8(3)①)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03-12-2 | Aを賃貸人、Bを賃借人とする甲建物の賃貸借契約が締結された。甲建物がBに引き渡された後、甲建物の所有権がAからCに移転した場合、本件契約の敷金は、他に特段の合意がない限り、BのAに対する未払賃料債務に充当され、残額がCに承継される。 | ◯ |
2 | 20-10-2 | 賃貸中の建物が譲渡された場合、賃借人の承諾がなくても、敷金返還債務は新所有者に承継される。 | ◯ |
3 | 15-11-2 | 賃貸借契約期間中に建物が譲渡された場合で、譲受人が賃貸人たる地位を承継したとき、敷金に関する権利義務も当然承継される。 | ◯ |
4 | 15-11-4 | 賃貸借契約が終了した後、借主が建物を明け渡す前に、貸主が建物を第三者に譲渡した場合で、貸主と譲受人との間で譲受人に敷金を承継させる旨を合意したとき、敷金に関する権利義務は当然に譲受人に承継される。 | × |
5 | 11-14-4 | 賃貸借契約期間中に建物が売却され、賃貸人たる地位を譲受人に承継した場合、賃借人の承諾がない限り敷金返還債務は承継されない。 | × |
6 | 06-10-3 | 貸主が第三者に建物を譲渡し、譲受人が賃貸人となった場合、貸主に差し入れていた敷金は、借主の未払賃料を控除した残額について、権利義務関係が譲受人に承継される。 | ◯ |
7 | 02-13-2 | 賃借人が賃貸人に敷金を差し入れていた場合、建物の譲受人は、賃貸人からその敷金を受領しない限り、賃借人に対する敷金返還債務を引き継がない。 | × |
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十分に早い対応で大変満足しております。
また、解答のみならず、貴重なアドバイスにもお礼申し上げます。
判例のポイントを丁寧に拾っての解説はとても勉強になりました。有り難うございました。遅ればせながら、初めて問11に使用されたそれぞれの判例全文を読みましたが、その判例文が随所に設問作成に使用され、また、出題者の意図も垣間見えとても興味深かったです。家坂講師の判例について言及されたことにも納得した次第です。因みに、良い機会だと思いちょっとチャレンジして、今回の設問が「正しい」になるには、を判例文から探したのですが、それは、賃借人に譲渡事実の通知と承諾が必要、と解釈してみましたが、、、やはり、ややこしい判例文を素人解釈するのは今回でやめておきます。笑 「受験後の楽しみに!」ですね。
おかげさまで、学習の早い段階で、有効なアドバイスをいただけたことは幸いでした。貴重なお時間をありがとうございました。
まずは、ステップ1ですが、今回のことでステップ2と3がとても楽しみになりました。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
私の過去の2件の質問は破棄させてください。すみません!
肢4の正解が「Eに承継されない」のは、以下の解釈で落ち着きました。
肢4の文中にある、「Bが建物をEに譲渡した場合」の解釈は、Bが建物の所有権をEに譲渡した、ということだけ。肢2のように、「賃貸人の地位を承継したとき」、というような文が続かないことから、EはBの賃貸人の地位は承継していない、ということでいいのかと。
この解釈だと従属する他の文のつじつまも合います。
お騒がせしてすみませんでした。m(^-^)m
令和4年度のスリーステップを購入させて頂きました。どうぞ宜しくお願い致します。早速ですが、、、
肢4の「敷金を承継させる旨を合意した」のに、何故「敷金に関する権利義務は第三者に承継されない」のでしょうか。まだまだ宅建脳になれません。^^;
回答に「敷金に関する権利義務は第三者に承継されない」とありますが、ここでの権利義務と第三者を具体的に教えていただけますか?
こちらは少し自分なりの解釈をたててみたのですが、、、
スリーステップのステップ1、テキストP144に、「賃貸人の変更」では、「敷金返還債務を当然に承継」とありますので、BからEの賃貸人の変更はこれに当たると思いますが、「権利義務は当然にEに承継されない」のは、肢4の文頭に、「賃貸借契約が終了した後、」とあるので、契約終了時に、賃借人Aは、旧賃貸人Bに対し、当然の権利である敷金返還請求権で敷金の返還の請求済み、というはいかがでしょうか。簡単で結構なので添削して頂けると助かります。
おかげさまで、ステップ1でどんどん理解が深まっています。誠にありがとうございます!
ようか様
質問をいただいておきながら、対応が遅くなって大変申し訳ありません。
以後厳重に注意しますので、また気軽に質問してください。
今さらですが、回答します。
元々のご質問は、以下のものです。
簡単に回答すれば、「判例がそういっているから」ということになります。
宅建試験の問題は、本問の問題文にもあるように「民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しい(誤っている)ものはどれか。」を答えるものです。
判例とは異なる考え方をしても、正解にはなりません。
さらにいえば、この判例は、平成15年のこの問題で出題されただけです。
今年の本試験で出題される可能性も低いため、力を入れて勉強する必要はありません。
ようかさんには、「スリー・ステップ講座」を受講していただいているとのこと。
この講座では、「過去の複数回出題された知識」を網羅的に取り上げるルールになっています。つまり、「スリー・ステップ講座」の受講を続ければ、「複数回出題された知識」はフォローできることになります。
それ以外の知識は、「過去に1回出題されただけ」なわけですから、優先順位を下げ、「宅建合格後の楽しみ」に取っておくのがいいと思います。
この判例の説明
以上が「宅建受験対策」としての結論です。
しかし、気になるでしょうから、判例について簡単に触れておきます。
時間があるときにでもお読みください。
(判例自体には、肢4の解説にある「最判昭48.02.02」というリンクから最高裁判所のサイトにアクセスすることができます。)
判例が示す「理由」の核心は、以下の部分です。
この部分の前後も合わせて、判例のポイントを示しましょう。
↑ここまでは宅建で頻出の知識です。正確に押さえておきましょう。
以下は、この判例でしか触れられておらず、宅建試験での出題は、この1回だけです。
ご質問への回答は、以上です。
回答をお待たせしてしまい、本当に申し訳ありません。
引き続き何卒よろしくお願いします!
(ビーグッド教育企画 家坂)