【宅建過去問】(平成17年問15)賃貸借(借地借家法と民法の比較)
動産の賃貸借契約と建物の賃貸借契約(借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借、同法第39条に規定する取壊し予定の建物の賃貸借及び同法第40条に規定する一時使用目的の建物の賃貸借を除く。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 動産の賃貸借契約は、当事者の合意があれば書面により契約を締結しなくても効力を生じるが、建物の賃貸借契約は、書面により契約を締結しなければ無効である。
- 賃貸人と賃借人との間で別段の合意をしない限り、動産の賃貸借契約の賃貸人は、賃貸物の使用収益に必要な修繕を行う義務を負うが、建物の賃貸借契約の賃貸人は、そのような修繕を行う義務を負わない。
- 動産の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めればそのとおりの効力を有するが、建物の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めても期間を定めていない契約とみなされる。
- 契約期間を定めた場合、賃借人は、動産の賃貸借契約である場合は期間内に解約を行う権利を留保することができるが、建物の賃貸借契約である場合は当該権利を留保することはできない。
正解:3
本問では、「動産の賃貸借」と「通常の建物賃貸借」について、出題されている。
このうち、「動産の賃貸借」には、不動産の賃貸借と違って、借地借家法が適用されない。すなわち、民法の規定のみが適用されることになる。この点で、「動産の賃貸借」は、「一時使用目的の建物の賃貸借」と同じである(借地借家法40条)。宅建試験では、後者が出題されるケースが多いので、視野に入れておこう。
また、本問では、「定期建物賃貸借」(同法38条)が対象から除かれている。しかし、これに関する宅建での出題は多いので、一緒にまとめておこう。定期建物賃貸借については、更新に関する規定(同法26条1項)が適用されない(同法38条1項前段、30条)。また、期間1年未満とする賃貸借も、その定めの通り、有効となる(同法38条1項後段、29条1項)。つまり、契約の最短期間が限定されていない。
動産の賃貸借 | 建物の賃貸借 | 定期建物賃貸借 |
民法 | 民法 +借地借家法 |
民法 +借地借家法 |
一時使用の建物賃貸借 | 更新○・契約期限の下限○ | 更新✕・契約期限の下限✕ |
1 誤り
動産の賃貸借契約も建物の賃貸借契約も、当事者の合意のみで成立する。書面により契約を締結しなければならないわけではない(民法601条)。
※定期建物賃貸借(借地借家法38条)、取壊し予定建物の賃貸借(同法39条)には書面の作成が必要である。
動産の賃貸借 | 建物の賃貸借 | 定期建物賃貸借 取壊し予定建物の賃貸借 |
書面不要 (口頭でも可) |
書面不要 (口頭でも可) |
書面必要 |
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R06-12-4 | 賃貸人Aと賃借人Bとが、居住目的で期間を3年として、借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約(契約①)を締結した場合と、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通建物賃貸借契約(契約②)を締結した場合について考える。契約①の場合、公正証書によって契約をするときに限り契約の更新がないことを有効に定めることができ、契約②の場合、書面で契約し、かつ、Aに正当な理由がない限り、Aは契約の更新を拒絶することができなくなる。 | × |
2 | 30-11-1 | [AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約が専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする場合には、公正証書によらなければ無効となる。 | × |
3 | 27-03-3 | 貸主と借主との間の契約は、賃貸借では諾成契約であり、使用貸借でも諾成契約である。 | ◯ |
4 | 17-15-1 | 動産の賃貸借契約は、当事者の合意のみで効力を生じるが、建物の賃貸借契約は、要式契約である。 | × |
2 誤り
動産の賃貸借契約の賃貸人も建物の賃貸借契約の賃貸人も、賃貸物の使用収益に必要な修繕を行う義務を負う(民法606条)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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①賃貸人による修繕 | |||
1 | R05-09-3 | Bの責めに帰すべき事由によって甲建物の修繕が必要となった場合は、Aは甲建物を修繕する義務を負わない。 | ◯ |
2 | R04-08-1 | AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、地上権である場合でも賃借権である場合でも、特約がなくても、BはAに対して、甲土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。 | × |
3 | H25-08-3 | 建物の賃貸人が必要な修繕義務を履行しない場合、賃借人は目的物の使用収益に関係なく賃料全額の支払を拒絶することができる。 | × |
4 | H25-08-4 | 建物の賃貸人が賃貸物の保存に必要な修繕をする場合、賃借人は修繕工事のため使用収益に支障が生じても、これを拒むことはできない。 | ◯ |
5 | H17-15-2 | 賃貸人と賃借人との間で別段の合意をしない限り、動産の賃貸借契約の賃貸人は、賃貸物の使用収益に必要な修繕を行う義務を負うが、建物の賃貸借契約の賃貸人は、そのような修繕を行う義務を負わない。 | × |
6 | H01-06-1 | Aは、自己所有の建物をBに賃貸した。建物が老朽化してきたため、Aが建物の保存のために必要な修繕をする場合、Bは、Aの修繕行為を拒むことはできない。 | ◯ |
②賃借人による修繕 | |||
1 | R05-09-1 | 甲建物の修繕が必要であることを、Aが知ったにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。 | ◯ |
2 | R05-09-2 | 甲建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、Aが必要な修繕を直ちにしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。 | × |
3 | R05-09-4 | 甲建物の修繕が必要である場合において、急迫の事情があるときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。 | ◯ |
4 | R02s-12-1 | 賃貸借の目的物である建物の修繕が必要である場合において、賃借人Bが賃貸人Aに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらずAが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは自ら修繕をすることができる。 | ◯ |
3 正しい
動産の賃貸借契約についての最低期間は定められていない。したがって、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6か月と定めればその通りの効力を有する。
一方、建物の賃貸借契約に関しては、期間を1年未満とした場合、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされる(借地借家法29条1項)。したがって、契約期間を6か月と定めても、その契約は、期間の定めがないものということになる。
一時使用賃貸借 | 通常の建物賃貸借 | 定期建物賃貸借 | |
長期 | 50年 | 限定なし | 限定なし |
短期 | 限定なし | 1年 (1年未満=期間の定めなし) |
限定なし |
期間の定めなし | ○ | ○ | × |
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R05-12-1 | 期間を1年未満とする建物の賃貸借契約は、期間を1年とするものとみなされる。 | × |
2 | H26-12-2 | 定期建物賃貸借契約を締結するときは、期間を1年未満としても、期間の定めがない建物の賃貸借契約とはみなされない。 | ◯ |
3 | H19-14-2 | 定期建物賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができるが、一時使用賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができない。 | × |
4 | H17-15-3 | 動産の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めればそのとおりの効力を有するが、建物の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めても期間を定めていない契約とみなされる。 | ◯ |
5 | H05-12-1 | 賃貸借の期間を10月と定めた場合において、その賃貸借が一時使用によるものでないときは、Aが解約の申入れをしても、その申入れの日から6月を経過しないと、契約は終了しない。 | ◯ |
6 | H02-12-2 | 建物の賃貸借においては、その存続期間の最長限度に制限はない。 | ◯ |
4 誤り
契約期間を定めた場合であっても、当事者は期間内に解約を行う権利を留保することができる(民法618条)。これは、動産の賃貸借契約である場合と建物の賃貸借契約である場合とを問わない。
また、賃借人にとって不利になるものではないので、借地借家法上も有効である(借地借家法30条)。
一時使用賃貸借 | 通常の建物賃貸借 | 定期建物賃貸借 |
期間の定めなし:いつでも申入れ○ 期間の定めあり:解約する権利を留保した場合に限り、○ |
の要件をみたす場合、解約権を留保していなくても、中途解約が可能 |
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R04-12-3 | A所有の甲建物(床面積100㎡)につき、居住を目的とした賃貸借契約が借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約である場合、Bの中途解約を禁止する特約があっても、やむを得ない事情によって甲建物を自己の生活の本拠として使用することが困難になったときは、Bは本件契約の解約の申入れをすることができる。 | ◯ |
2 | R02-12-3 | AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約である場合、Aは、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情があれば、Bに対し、解約を申し入れ、申入れの日から1月を経過することによって、本件契約を終了させることができる。 | × |
3 | H30-12-2 | 借地借家法第38条の定期建物賃貸借で、契約の更新がない旨を定めた場合には、当該契約の期間中、賃借人から中途解約を申し入れることはできない。 | × |
4 | H27-12-4 | 賃貸人も賃借人も契約期間中の中途解約をすることができない旨の規定は、定期借家契約では有効であるが、普通借家契約では無効である。 | × |
5 | H24-12-4 | 普通建物賃貸借では中途解約不可、定期建物賃貸借契約では途中解約可能。 | ◯ |
6 | H23-12-4 | 一時使用目的の場合、中途解約は特約がなければ不可。 | ◯ |
7 | H20-14-4 | 定期建物賃貸借契約では、床面積に関わらず、中途解約が可能。 | × |
8 | H19-14-3 | 定期建物賃貸借契約では中途解約不可、一時使用賃貸借ではいつでも中途解約可能。 | × |
9 | H17-15-4 | 建物の賃貸借では、中途解約権の留保は不可。 | × |
10 | H02-09-3 | (Aは、その所有する建物を明らかな一時使用のためBに賃貸したが、Bは期間満了後も居住を続け、Aもその事実を知りながら異議を述べなかった。)Aは、正当事由のない場合でも解約の申入れをし、Bに対し、その3ヵ月後に明渡請求をすることができる。 | ◯ |