【宅建過去問】(平成21年問03)消滅時効
Aは、Bに対し建物を賃貸し、月額10万円の賃料債権を有している。この賃料債権の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Aが、Bに対する賃料債権につき支払督促の申立てをし、さらに仮執行宣言を付した支払督促について督促異議の申立てがないときは、消滅時効は更新される。
- Bが、Aとの建物賃貸借契約締結時に、賃料債権につき消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定したとしても、その約定に法的効力は認められない。
- Aが、Bに対する賃料債権につき内容証明郵便により支払を請求したときは、その請求により消滅時効は更新される。
- Bが、賃料債権の消滅時効が完成した後にその賃料債権を承認したときは、消滅時効の完成を知らなかったときでも、その完成した消滅時効の援用をすることは許されない。
正解:3
1 正しい
支払督促とは、債権者が簡易な方法で弁済を求めることのできる手続です(民事訴訟法382条以下)。支払督促があった場合、時効の完成が猶予されます(民法147条1項2号)。
さらに進んで、仮執行宣言付きの支払督促がなされ、それについて督促異議の申立てがなければ、支払督促は、確定判決と同一の効力を有するものとなります(民事訴訟法396条)。したがって、時効が更新されます(民法147条2項)。
※支払督促については、気にしないのが得策です。どうしても気になる人には、裁判所サイトの図解説明をオススメしておきます。
●支払督促|裁判所
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R01-09-4 | 訴えの提起後に裁判上の和解が成立した場合には、時効の更新の効力は生じない。 | × |
2 | 21-03-1 | 債権者が、債務者に対する賃料債権につき支払督促の申立てをし、さらに仮執行宣言を付した支払督促について督促異議の申立てがないときは、消滅時効は更新される。 | ◯ |
3 | 09‐04‐2 | 裁判上の和解が成立し1年後に支払うことになった場合、消滅時効期間は、和解成立から10年となる。 | × |
4 | 01‐02‐2 | 勝訴判決が確定した場合、時効は新たに進行を開始し、その時効期間は10年となる。 | ◯ |
2 正しい
時効の利益は、時効の完成前にあらかじめ放棄することができません(民法146条)。
したがって、「消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定した」としても、法的効力は認められません。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
時効の効力 | |||
1 | H29-02-1 | Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。 | × |
時効の援用 | |||
1 | R02s-05-1 | 消滅時効の援用権者である「当事者」とは、権利の消滅について正当な利益を有する者であり、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者も含まれる。 | ◯ |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H30-04-2 | 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。 | × |
4 | H30-04-3 | 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。 | ◯ |
5 | H18-01-3 | 時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。 | × |
6 | H12-02-1 | 物上保証人は、主たる債務者の消滅時効を援用できる。 | ◯ |
7 | H09-04-3 | 物上保証人は、債権の消滅時効を援用して債権者に抵当権の抹消を求めることができる。 | ◯ |
時効の利益の放棄 | |||
1 | R02-07-2 | 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。 | × |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H21-03-2 | 賃借人が、賃貸人との建物賃貸借契約締結時に、賃料債権につき消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定したとしても、その約定に法的効力は認められない。 | ◯ |
3 誤り
内容証明郵便による支払い請求は、催告に該当します。催告をすれば、その時から6か月を経過するまで、消滅時効の完成が猶予されます(民法150条1項)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
催告 | |||
1 | H21-03-3 | 債権者が、債務者に対する賃料債権につき内容証明郵便により支払を請求したときは、その請求により消滅時効は更新される。 | × |
2 | H01-02-2 | 訴えの提起前6月以内に、債権者が債務者に債務の履行の催告をしても、時効が更新されるのは、訴えを提起したときである。 | × |
協議を行う旨の合意 | |||
1 | H29-04-1 | 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、その合意があった時から1年を経過した時までは、時効は完成しない。 | ◯ |
夫婦間の権利 | |||
1 | R02s-05-4 | 夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効が完成しない。 | ◯ |
4 正しい
債務者による債務の承認は時効の更新事由に該当します(民法152条1項)。
しかし、本肢の債務については既に消滅時効が完成しています。時効完成後に、債務者がその事実を知らずに債務の承認をした場合、時効は中断するのでしょうか。債務者は、消滅時効を援用して、債務を免れることができなくなるのでしょうか。
判例は、債務者が時効の完成を知らずに債務を承認した場合でも、その後、債務者は、消滅時効を援用することができないとしています(最判昭41.04.20)。いわば、援用権を喪失させるわけです。債務者が債務を承認すれば、債権者は、債務の弁済を期待します。その後になって消滅時効を援用することは、信義則に反する行為です。この理由から、援用権を喪失させています。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-05-3 | 権利の承認があったときは、その時から新たに時効の進行が始まるが、権利の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことを要しない。 | ◯ |
2 | 30-04-4 | 債務者が時効の完成の事実を知らずに債務の承認をした場合、その後、債務者はその完成した消滅時効を援用することはできない。 | ◯ |
3 | 21-03-4 | 消滅時効完成後に債務者が債権を承認した場合、時効完成を知らなかったとしても、時効の援用は許されない。 | ◯ |
4 | 17-04-4 | 消滅時効完成後に債務者が債権を承認した場合、時効完成を知らなかったとしても、時効の援用は許されない。 | ◯ |
5 | 12-02-2 | 物上保証人が、債権者に対し、金銭債務の存在を時効期間の経過前に承認した場合、当該債務の消滅時効の更新の効力が生じる。 | × |
6 | 12-02-3 | 主債務者が、債権者に対し、金銭債務の存在を時効期間の経過前に承認した場合、物上保証人は、当該債務の消滅時効の更新の効力を否定することができない。 | ◯ |
7 | 07-03-4 | 債務の承認をした場合、債務者が被保佐人であって、保佐人の同意を得ていなくても、時効更新の効力を生じる。 | ◯ |
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