■講義編■民法[22]同時履行の抗弁権
例えば、土地の売買契約を締結した場合、売主は土地の引渡義務を負い、買主は代金の支払義務を負います。では、売主と買主、どちらが先に債務を履行すべきでしょうか。
契約でどちらが先と決まっていれば別ですが、原則的には、売主と買主が債務を同時に履行することになっています。つまり、例えば買主は、「引渡しを受けるまで代金を支払わない。」と主張することができるのです。これを、同時履行の抗弁権と呼びます。
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Contents
1.同時履行の抗弁権とは
(1).意味
双務契約の当事者の一方は、
相手方がその債務の履行を提供するまでは、
自己の債務の履行を拒むことができる
双務契約=当事者双方が互いに対価的関係に立つ債務を負う契約
(2).具体的イメージ
①売買契約
| 言い分 | 結論 | |
| 売主 | 引き渡せと言われても、代金をもらっていないから心配だ。 | 同時に(引換えに)履行すればよい |
| 買主 | 代金を支払えと言われても、建物の引渡しを受けていないから心配だ。 |
②債務の履行に代わる損害賠償債務の履行
【例】売買の目的物が売主の帰責事由により滅失した場合(⇒[15]1(2)②)
★過去の出題例★同時履行の抗弁権:債務の履行に代わる損害賠償債務の履行(民法[22]2(1)②)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R06-05-3 | 請負人の報酬債権に対して、注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、当該残債務の履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。 | × |
| 2 | H29-07-3 | 請負契約の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合せず、それが請負人の責めに帰すべき事由による場合、注文者は、請負人から損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。 | × |
| 3 | H11-08-3 | 建物の建築請負契約の請負人が、種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したときに請負人が注文者に対して負う損害賠償義務について、その履行の提供をしない場合、注文者は、当該請負契約に係る報酬の支払いを拒むことができる。 | ◯ |
(3).効果
①債務不履行責任が発生しない(⇒[15]2(1)②)
同時履行の抗弁権がある場合
→不履行が違法ではない
→債務不履行責任を負わない
②相殺することができない(⇒[21]4(3))
★過去の出題例★同時履行の抗弁権とは(民法[22]1)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R01-07-4 | [Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された。]Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていないことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。 | ◯ |
| 2 | H29-05-1 | Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは当該自動車をCに100万円で売却した。Bが報酬を得て売買の媒介を行っているので、CはAから当該自動車の引渡しを受ける前に、100万円をAに支払わなければならない。 | × |
| 3 | H27-08-ウ | マンションの売買契約に基づく買主の売買代金支払債務と、売主の所有権移転登記に協力する債務は、特別の事情のない限り、同時履行の関係に立つ。 | ◯ |
| 4 | H18-08-3 | (AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行することとした。決済約定日に、Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので、Aは履行を拒否した。)Aは、一旦履行の提供をしているので、Bに対して代金の支払を求める訴えを提起した場合、引換給付判決ではなく、無条件の給付判決がなされる。 | × |
| 5 | H15-09-1 | 動産売買契約における目的物引渡債務と代金支払債務とは、同時履行の関係に立つ。 | ◯ |
| 6 | H11-08-1 | 宅地の売買契約における買主が、弁済期の到来後も、代金支払債務の履行の提供をしない場合、売主は、宅地の引渡しと登記を拒むことができる。 | ◯ |
| 7 | H08-09-2 | 売主が、履行期に所有権移転登記はしたが、引渡しをしない場合、買主は、少なくとも残金の半額を支払わなければならない。 | × |
2.同時履行の抗弁権が認められるか
(1).民法の条文で認められているケース
①解除による原状回復義務相互間(⇒[23]4(1)②)
★過去の出題例★同時履行の抗弁権:解除による原状回復義務(民法[22]2(1)①)
解除の効果:同時履行の抗弁権(民法[23]4(1)②)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | H27-08-イ | マンションの売買契約がマンション引渡し後に債務不履行を理由に解除された場合、契約は遡及的に消滅するため、売主の代金返還債務と、買主の目的物返還債務は、同時履行の関係に立たない 。 | × |
| 2 | H21-08-3 | 債務不履行による解除の場合、債務不履行をした側の原状回復義務が先履行となり、同時履行の抗弁権を主張できない。 | × |
| 3 | H11-08-2 | 解除の際、一方当事者が原状回復義務の履行を提供しないとき、相手方は原状回復義務の履行を拒むことができる。 | ◯ |
②請負契約に関する目的物引渡債務と報酬支払債務
(a).請負契約とは(⇒[28]1)
当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約束し、
相手方(注文者)が仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束する
(b).同時履行の関係
★過去の出題例★同時履行の抗弁権:請負契約に関する目的物引渡債務と報酬請求権(民法[22]2(1)②)
同時履行の抗弁権:請負契約に関する目的物引渡債務と報酬請求権(民法[28]2(1)①)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | H15-09-2 | 目的物の引渡しを要する請負契約における目的物引渡債務と報酬支払債務とは、同時履行の関係に立つ。 | ◯ |
| 2 | H06-08-1 | 注文者の報酬支払義務と請負人の住宅引渡義務は、同時履行の関係に立つ。 | ◯ |
③委任契約(成果完成型)に関する成果物引渡債務と報酬支払債務
(a).委任契約とは(⇒[28]1(1))
(b).同時履行の関係
(2).判例によって認められているケース
①取消しによる原状回復義務相互間
★過去の出題例★同時履行の抗弁権:取消しによる原状回復義務相互間(民法[22]2(2)①)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | H30-01-1 | 売買契約が詐欺を理由として有効に取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。 | ◯ |
| 2 | H15-09-4 | 売買契約が詐欺を理由として有効に取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。 | ◯ |
| 3 | H14-01-2 | 詐欺による有効な取消しがなされたときには、登記の抹消と代金の返還は同時履行の関係になる。 | ◯ |
| 4 | H04-08-4 | 第三者の詐欺を理由に買主が契約を取り消した場合、登記の抹消手続を終えなければ、代金返還を請求することができない。 | × |
②弁済と受取証書の交付(⇒[20]4(3)①)
★過去の出題例★弁済と受取証書の交付(民法[20]4(3)①)
同時履行の抗弁権:弁済と受取証書の交付(民法[22]2(2)②)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | H05-06-4 | 借主は、弁済に当たり、貸主に対して領収証を請求し、貸主がこれを交付しないときは、その交付がなされるまで弁済を拒むことができる。 | ◯ |
| 2 | H03-09-4 | 借主が返済をしようとしても貸主が受取証書を交付しないときは、借主は、その交付がなされるまで、返済を拒むことができる。 | ◯ |
③建物買取請求権に関連する債務(⇒借地借家法[02]3(1)②)
建物買取請求の際の建物代金支払債務と土地の返還債務
| 状況 | 考え方 |
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建物買取請求権(借地借家法[02]3)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R05-11-3 | 本件契約に建物買取請求権を排除する旨の特約が定められていない場合、本件契約が終了したときは、その終了事由のいかんにかかわらず、BはAに対してBが甲土地上に所有している建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。 | × |
| 2 | R04-11-4 | 借地上の建物所有者が借地権設定者に建物買取請求権を適法に行使した場合、買取代金の支払があるまでは建物の引渡しを拒み得るとともに、これに基づく敷地の占有についても、賃料相当額を支払う必要はない。 | × |
| 3 | R02-11-3 | A所有の甲土地につき、Bとの間で居住の用に供する建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃貸借契約が締結された。本件契約で「Bの債務不履行により賃貸借契約が解除された場合には、BはAに対して建物買取請求権を行使することができない」旨を定めても、この合意は無効となる。 | × |
| 4 | H28-11-4 | [Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借]Aが地代を支払わなかったことを理由としてBが乙土地の賃貸借契約を解除した場合、契約に特段の定めがないときは、Bは甲建物を時価で買い取らなければならない。 | × |
| 5 | H24-11-4 | 一時使用目的の借地権にも、建物買取請求権の規定が適用される。 | × |
| 6 | H14-13-1 | 事業用定期借地権を設定した場合、借主は建物買取請求権を有しない。 | ◯ |
| 7 | H14-13-2 | 借主の債務不履行を原因とする契約終了の場合にも、建物買取請求できる。 | × |
| 8 | H14-13-3 | 賃貸借契約・転貸借契約がともに期間満了し更新がなければ、転借人は賃貸人に対し直接建物買取請求権を有する。 | ◯ |
| 9 | H14-13-4 | 借主が適法に貸主に建物買取請求権を行使すると、その所有権は直ちに借主から貸主に移転するが、借主は貸主が代金を支払うまで、建物の引渡しを拒むことができる。 | ◯ |
| 10 | H10-11-4 | 建物が存続期間満了前に貸主の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるとき、建物買取請求権を行使できない。 | × |
| 11 | H03-12-3 | 借地権者は、借地権が消滅した場合において、家屋があるときは、自らが債務不履行のときでも土地所有者に対し家屋の買取りを請求することができる。 | × |
(3).判例が認めなかったケース
①敷金に関連する債務
(a).敷金とは(⇒[26]8(1)①)
賃料債務など賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保するために賃借人が賃貸人に交付する金銭(名目は問わない)
明渡義務履行までの全債権を担保→残額があれば返還義務
(b).同時履行の関係(⇒[26]8(2))
★過去の出題例★同時履行の抗弁権:敷金に関連する債務([22]2(3)①)
同時履行の抗弁権:敷金に関連する債務([26]8(2))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R04-12-4 | 甲建物の賃借人Aが賃貸人Bに対して敷金を差し入れている場合、本件契約が期間満了で終了するに当たり、Bは甲建物の返還を受けるまでは、Aに対して敷金を返還する必要はない。 | ◯ |
| 2 | R03-01-2 | 賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、1個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものといえる。 | × |
| 3 | R03-01-4 | 賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務の間に同時履行の関係を肯定することは、家屋の明渡しまでに賃貸人が取得する一切の債権を担保することを目的とする敷金の性質にも適合する。 | × |
| 4 | R02-04-3 | 賃借人から敷金の返還請求を受けた賃貸人は、賃貸物の返還を受けるまでは、これを拒むことができる。 | ◯ |
| 5 | H27-08-ア | マンションの賃貸借契約終了に伴う賃貸人の敷金返還債務と、賃借人の明渡債務は、特別の約定のない限り、同時履行の関係に立つ。 | × |
| 6 | H15-11-1 | 建物の賃貸借契約が終了した場合、建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立たず、賃借人の建物明渡しは賃貸人から敷金の返還された後に行えばよい。 | × |
| 7 | H13-09-3 | 賃貸借契約が終了した場合、建物明渡債務と敷金返還債務とは常に同時履行の関係にあり、Aは、敷金の支払と引換えにのみ建物を明け渡すと主張できる。 | × |
②弁済と債権証書の返還(⇒[20]4(3)②)
③弁済と抵当権の抹消登記
★過去の出題例★同時履行の抗弁権:弁済と抵当権抹消登記(民法[22]2(3)②)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | H15-09-3 | 貸金債務の弁済と抵当権設定登記の抹消登記手続とは、同時履行の関係に立つ。 | × |
| 2 | H11-08-4 | 金銭の消費貸借契約の貸主が、抵当権設定登記について抹消登記手続の履行を提供しない場合、借主は、借金の弁済を拒むことができる。 | × |
④造作買取請求権に関連する債務(⇒借地借家法[06]3(1)②)
★過去の出題例★造作買取請求権(借地借家法[06]3)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R02-12-4 | AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、造作買取請求に関する特約がない場合、期間満了で本件契約が終了するときに、Bは、Aの同意を得て甲建物に付加した造作について買取請求をすることができる。 | ◯ |
| 2 | H30-12-4 | [AとBとの間で、Aが所有する甲建物をBが5年間賃借する旨の契約を締結した。]CがBから甲建物を適法に賃貸された転借人で、期間満了によってAB間及びBC間の賃貸借契約が終了する場合、Aの同意を得て甲建物に付加した造作について、BはAに対する買取請求権を有するが、CはAに対する買取請求権を有しない。 | × |
| 3 | H28-12-3 | 建物の適法な転借人が、賃貸人の同意を得て建物に造作を付加した場合、期間満了により契約が終了するときは、転借人は賃貸人に対してその造作を時価で買い取るよう請求することができる。 | ◯ |
| 4 | H27-11-4 | [AがBとの間で、A所有の甲建物について、期間3年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約を締結]AB間の賃貸借契約がBの賃料不払を理由として解除された場合、BはAに対して、Aの同意を得てBが建物に付加した造作の買取りを請求することはできない。 | ◯ |
| 5 | H10-12-3 | 転借人が建物所有者の同意を得て建物に付加した造作は、期間の満了によって建物の賃貸借が終了するとき、転借人から建物所有者に対し買取りを請求することができる。 | ◯ |
| 6 | H03-13-4 | 賃借人は、建物所有者の同意を得て建物に造作を付加したときは、賃貸借終了の際、建物所有者に対し時価でその造作を買い取るべきことを請求することができる。 | ◯ |
[Step.2]一問一答式実戦応用編講座
実戦応用編では、選択肢単位に分解・整理した過去問を実際に解き、その後に、(1)基本知識の確認、(2)正誤を見極める方法、の講義を視聴します。この繰返しにより、「本試験でどんなヒッカケが出るのか?」「どうやってヒッカケを乗り越えるのか?」という実戦対応能力を身につけます。
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|---|---|---|
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