【宅建過去問】(令和05年問33)重要事項説明書(35条書面)

宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 甲宅地を所有する宅地建物取引業者Aが、乙宅地を所有する宅地建物取引業者ではない個人Bと、甲宅地と乙宅地の交換契約を締結するに当たって、Bに対して、甲宅地に関する重要事項の説明を行う義務はあるが、乙宅地に関する重要事項の説明を行う義務はない。
  2. 宅地の売買における当該宅地の引渡しの時期について、重要事項説明において説明しなければならない。
  3. 宅地建物取引業者が売主となる宅地の売買に関し、売主が買主から受領しようとする金銭のうち、買主への所有権移転の登記以後に受領するものに対して、宅地建物取引業法施行規則第16条の4に定める保全措置を講ずるかどうかについて、重要事項説明書に記載する必要がある。
  4. 重要事項説明書の電磁的方法による提供については、重要事項説明を受ける者から電磁的方法でよいと口頭で依頼があった場合、改めて電磁的方法で提供することについて承諾を得る必要はない。

正解:1

1 正しい

設定の確認

「交換」への対処

「交換」の際の重要事項説明というのは、わずか2回目の出題に過ぎません。
わざわざ対策する必要はないですし、また、「2つの売買」に分けて考えるだけで対応可能です。つまり、

  • 宅建業者Aを売主、宅建業者でないBを買主とする甲宅地の売買
  • 宅建業者でないBを売主、宅建業者Aを買主とする乙宅地の売買

に分けて考えるわけです。

重要事項説明の相手方

売買の媒介を行う場合、重要事項説明は、買主に対してするものです(宅建業法35条1項)。売主に対して、重要事項説明をする必要はありません。

甲宅地に関して

Aは甲宅地について「売主」の立場に立っています。したがって、「買主」側のBに対して、甲宅地に関する重要事項説明書を交付し、その内容を説明する義務を負います。

乙宅地に関して

Aは乙宅地に関しては、「買主」の立場に立っています。買主が売主に対して、重要事項説明をする必要はありません。したがって、「売主」側のBに対して、乙宅地に関する重要事項説明をする義務を負わないわけです。

※「売主」側の立場にあるBは、宅建業者ではありません。そのため、「買主」側のAに対して重要事項説明をする義務はありません。

☆「重要事項説明の相手方」というテーマは、問42肢イでも出題されています。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
交換(宅建業法[01]3)
年-問-肢内容正誤
1R05-33-1甲宅地を所有する宅地建物取引業者Aが、乙宅地を所有する宅地建物取引業者ではない個人Bと、甲宅地と乙宅地の交換契約を締結するに当たって、Bに対して、甲宅地に関する重要事項の説明を行う義務はあるが、乙宅地に関する重要事項の説明を行う義務はない。
2H30-35-4宅地建物取引業者間の宅地の交換において交換契約に先立って交換差金の一部として30万円の預り金の授受がある場合、その預り金を受領しようとする者は、保全措置を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合はその概要を重要事項説明書に記載しなければならない。×
重要事項説明の相手方(宅建業法[11]1(2))
年-問-肢内容正誤
1R05-33-1甲宅地を所有する宅地建物取引業者Aが、乙宅地を所有する宅地建物取引業者ではない個人Bと、甲宅地と乙宅地の交換契約を締結するに当たって、Bに対して、甲宅地に関する重要事項の説明を行う義務はあるが、乙宅地に関する重要事項の説明を行う義務はない。
2R05-42-イ売主及び買主が宅地建物取引業者ではない場合、当該取引の媒介業者は、売主及び買主に重要事項説明書を交付し、説明を行わなければならない。×
3R04-28-1宅地建物取引業者が、宅地建物取引業者ではない個人から媒介業者の仲介なしに土地付建物を購入する場合、買主である宅地建物取引業者は重要事項説明書を作成しなくても宅地建物取引業法違反とはならない。
4R04-28-3宅地建物取引業者は、土地売買の媒介を行う場合、宅地建物取引業者ではない売主に対して契約が成立する前までの間に、宅地建物取引士をして重要事項説明書を交付して説明をさせなければならない。×
5R03s-35-2宅地建物取引業者は、その媒介により売買契約が成立したときは、当該契約の各当事者に、遅滞なく、重要事項説明書を交付しなければならない。
×
6H29-33-1宅地建物取引業者が宅地の売買の媒介を行う場合、売買の各当事者すなわち売主及び買主に対して、重要事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。×
7H27-29-1売主に対しては、買主に対してと同様に、宅地建物取引士をして、契約締結時までに重要事項を記載した書面を交付して、その説明をさせなければならない。
×
8H27-29-3宅地建物取引業者が代理人として売買契約を締結し、建物の購入を行う場合は、代理を依頼した者に対して重要事項の説明をする必要はない。
×
9H25-29-1宅地建物取引業者でない売主と宅地建物取引業者である買主が、媒介業者を介さず宅地の売買契約を締結する場合、法第35条の規定に基づく重要事項の説明義務を負うのは買主の宅地建物取引業者である。
×
10H08-38-1売主A、買主Bの間の宅地の売買について宅地建物取引業者Cが媒介した。Bが未成年者で、契約の締結について法定代理人の同意を得ていた場合において、Cは、宅地建物取引士をして、Bに対してのみ35条書面を交付して説明をさせた。
11H04-42-235条書面の交付は契約締結前に、37条書面の交付は契約締結後に、いずれも売主買主双方に対して、行わなければならない。×

2 誤り

宅地・建物の売買・貸借について、「引渡しの時期」は、重要事項とされていません。

※「引渡しの時期」は、37条書面の必要的記載事項です。他にも37条書面特有の事項があるので、下の表でまとめておきましょう。

37条書面特有の事項

■参照項目&類似過去問
内容を見る
37条書面特有の事項(引渡しの時期)(宅建業法[12]3(3)② )
年-問-肢内容正誤
1R05-33-2宅地の売買における当該宅地の引渡しの時期について、重要事項説明において説明しなければならない。×
2R04-36-4自ら売主となって建物の売買契約を締結する場合、当該建物の引渡しの時期について説明しなければならない。×
3R03-26-4宅地建物取引業者Aが、自ら売主として宅地建物取引業者ではない買主Bに対し建物の売却を行う。Aは、Bに対し、売買の対象となる建物の引渡しの時期について説明しなければならない。×
4R02-33-2宅地建物取引業者が媒介により宅地の貸借の契約を成立させた場合において、当該宅地の引渡しの時期について重要事項説明書に記載して説明を行ったときは、その内容を37条書面に記載する必要はない。×
5H24-31-4宅地建物取引業者は、居住用建物の貸借を媒介し、当該賃貸借契約を成立させた。この際、当該建物の引渡しの時期に関する定めがあったが、法第35条の規定に基づく重要事項の説明において、既に借主へ伝達していたことから、37条書面にはその内容を記載しなかった。
×
6H23-32-4宅地建物取引業者が自ら売主となって建物の売買契約を締結する場合、買主が宅地建物取引業者でないときは、当該建物の引渡時期を説明する必要がある。
×
7H13-39-3宅地建物取引業者が、宅地又は建物の売買の媒介に際して、宅地及び建物の引渡しの時期については、特に定めをしなかったため、重要事項説明書にはその旨記載し内容を説明したが、契約書面には記載しなかった。
×
8H09-40-3宅地建物取引業者Aが、売主B、買主Cとする建物の売買を媒介しようとしている。Aは、建物の引渡しの時期についてBとCの合意が不確定であったので、売買契約が成立するまでの間に、当該事項をCに説明しなかった。
9H05-44-2当該物件の引渡時期については、未だ定まっていなかったので、何も説明しなかった。

3 誤り

設定の確認

保全措置の必要性 「手付金等」とは

問題文には「売主が買主から受領しようとする金銭」としか書いてありません。この金銭が、契約締結日から引渡し前までに支払われる、代金に充当される金銭であれば、「手付金等」に該当することになります(宅建業法41条1項)。

「手付金等」を受領する場合、買主である宅建業者は、原則として、保全措置を講じる必要があります。
そして、手付金等を受領しようとする場合には、、「手付金等保全措置の概要」が取引条件に関する重要事項とされています(表の⑤。宅建業法35条1項10号)。

取引条件に関する重要事項

手付金等保全措置が不要な場合 買主が登記したケース

売主が買主から「手付金等」を受領する場合でも、買主への所有権移転登記がされたときには、それ以降、手付金等の保全措置を講じる必要がなくなります(宅建業法41条1項ただし書き、41条の2第1項ただし書き)。

本肢の金銭は、「買主への所有権移転の登記以後に受領するもの」です。したがって、仮に「手付金等」に該当するとしても、もはや保全措置を講じることは不要です。
そのため、「保全措置を講じるかどうか」について、重要事項説明書に記載する必要もありません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
取引条件に関する重要事項(⑤手付金等保全措置の概要)(宅建業法[11]2(3)⑤)
年-問-肢内容正誤
1R05-33-3宅地建物取引業者が売主となる宅地の売買に関し、売主が買主から受領しようとする金銭のうち、買主への所有権移転の登記以後に受領するものに対して、宅地建物取引業法施行規則第16条の4に定める保全措置を講ずるかどうかについて、重要事項説明書に記載する必要がある。×
2R04-32-3宅地建物取引業者である売主Aと宅地建物取引業者ではないBとの建物の売買契約において、手付金の保全措置を講ずる場合、Aはその保全措置の概要を、重要事項説明書に記載し説明する必要があるが、37条書面には記載する必要はない。
3R03-37-2宅地建物取引業者は、自ら売主となる土地付建物の売買契約において、宅地建物取引業者ではない買主から保全措置を講ずる必要のない金額の手付金を受領する場合、手付金の保全措置を講じないことを、重要事項説明書に記載して説明し、37条書面にも記載しなければならない。
×
4H19-34-2宅地建物取引業者Aが、自ら売主となって宅地建物取引業者でない買主Bに建築工事完了前のマンションを1億円で販売しようとしている。AがBから手付金として1,500万円を受領するに当たって保全措置を講ずる場合、Aは、当該マンションの売買契約を締結するまでの間に、Bに対して、当該保全措置の概要を説明しなければならない。
5H02-40-2宅地建物取引業者Aが自ら売主として工事完了前のマンションをBに売却する契約において、Aは、宅地建物取引業者でないBに、宅地建物取引業法第41条に規定する手付金等の保全措置の概要について、同法第35条に規定する重要事項として説明したが、同法第37条に規定する書面には記載しなかった。
6H01-47-1宅地建物取引業者が自ら売主となって工事完了前のマンションの売買契約を締結する。手付金等の保全措置について、保証委託契約によって保全措置を講ずることとし、その措置の概要は説明したが、保証保険契約については説明しなかった。
保全措置が不要な場合(買主が登記したケース)(宅建業法[19]3(2))

[共通の設定]
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として宅地建物取引業者ではない買主Bとの間で宅地又は建物の売買契約を締結した。
年-問-肢内容正誤
1R05-33-3
宅地建物取引業者が売主となる宅地の売買に関し、売主が買主から受領しようとする金銭のうち、買主への所有権移転の登記以後に受領するものに対して、宅地建物取引業法施行規則第16条の4に定める保全措置を講ずるかどうかについて、重要事項説明書に記載する必要がある。×
2H28-43-エ
【建築工事完了前のマンション(代金3,000万円)】
Aは、保全措置を講じないで、Bから手付金150万円を受領した場合、その後、建築工事が完了しBに引き渡す前に中間金150万円を受領するときは、建物についてBへの所有権移転の登記がなされるまで、保全措置を講じる必要がない。
×
3H26-33-4【建築工事完了前の建物(代金5,000万円)】
Aは、宅地建物取引業者でないBから手付金100万円と中間金500万円を受領したが、既に当該建物についてAからBへの所有権移転の登記を完了していたため、保全措置を講じなかった。
4H19-34-3Aが、Bに建築工事完了前のマンションを1億円で販売する。AがBから手付金として1,500万円を受領しようとする場合において、当該マンションについてBへの所有権移転の登記がされたときは、Aは、保全措置を講じなくてもよい。
5H19-43-2宅地建物取引業者Aが自ら売主となって、宅地建物取引業者でないBと1億円のマンションの売買契約(手付金1,500万円、中間金1,500万円、残代金7,000万円)を建築工事完了前に締結し、その引渡し及び登記の移転を残代金の支払と同時に行う場合、Aは、手付金の受領前及び中間金の受領前それぞれについて、保全措置を講じなければならない。
6H18-39-4Aは、当該建物が未完成であった場合でも、Bへの所有権移転の登記をすれば、Bから受け取った手付金等について、その金額を問わず法第41条に定める手付金等の保全措置を講ずる必要はない。
7H14-40-3【建物(完成物件)】
AがBから受領した手付が代金の額の1/10を超え、かつ、1,000万円を超える場合、Aは、いかなる場合も手付金等の保全措置を行わなければならない。
×
8H04-41-3【マンンョン(工事完了済)(代金4,500万円)】
Aは、Bから手付金900万円を受領するに当たって、銀行と保証委託契約を締結し、その契約を証する書面をBに交付したが、その後Bへの所有権移転登記を行ったので、当該保証委託契約を解約した。
9H03-49-4宅地建物取引業者Aは、土地付建物(価格1億5,000万円)を、建築工事の完了前に自ら売主として宅地建物取引業者でない買主Bに販売し、申込証拠金30万円を受領した後、売買契約を締結し、その際手付金として申込証拠金を充当するほか別に2,000万円を受領した。契約によれば、中間金6,000万円を1月後に、残代金6,970万円を所有権移転登記完了後にそれぞれ支払う。Aは、残代金の受領については、手付金等保全措置を講ずる必要はない。
10H02-42-1【宅地(代金1億円、手付金900万円、中間金4,100万円、残代金5,000万円)】
当該契約が宅地造成工事完了前に宅地建物取引業者Cの媒介により締結され、宅地の引渡し及び登記の移転を残代金の支払いと同時とした場合、Aは、保全措置を講ずることなく、手付金及び中間金を受領することができる。
×

4 誤り

重要事項説明書は、書面で交付するだけでなく、電磁的方法によって提供することも可能です。しかし、これが許されるのは、相手方の承諾がある場合に限られます(宅建業法35条8項)。
相手方から、「電磁的方法でよいと口頭で依頼があった」としても、改めて承諾を得ない限り、重要事項説明書を電磁的方法で提供することは許されません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
電磁的方法による提供(宅建業法[総合02])
[共通の設定]
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者ではない個人Bとの間で宅地の売買契約を締結する。

年-問-肢内容正誤
1R05-26-ア宅地建物取引業者が自ら売主として締結する売買契約において、当該契約の相手方から宅地建物取引業法施行令第3条の4第1項に規定する承諾を得なければ、37条書面の電磁的方法による提供をすることができない。
2R05-26-イ宅地建物取引業者が媒介業者として関与する売買契約について、宅地建物取引業法施行令第3条の4第1項に規定する承諾を取得するための通知の中に宅地建物取引士を明示しておけば、37条書面の電磁的方法による提供において提供に係る宅地建物取引士を明示する必要はない。×
3R05-26-ウ宅地建物取引業者が自ら売主として締結する売買契約において、37条書面の電磁的方法による提供を行う場合、当該提供されたファイルへの記録を取引の相手方が出力することにより書面を作成できるものでなければならない。
4R05-26-エ宅地建物取引業者が媒介業者として関与する建物賃貸借契約について、37条書面の電磁的方法による提供を行う場合、当該提供するファイルに記録された記載事項について、改変が行われていないかどうかを確認することができる措置を講じなければならない。
5R05-33-4重要事項説明書の電磁的方法による提供については、重要事項説明を受ける者から電磁的方法でよいと口頭で依頼があった場合、改めて電磁的方法で提供することについて承諾を得る必要はない。×
6R05-35-1Aは、仮設テント張りの案内所でBから買受けの申込みを受けた際、以後の取引について、その取引に係る書類に関してBから電磁的方法で提供をすることについての承諾を得た場合、クーリング・オフについて電磁的方法で告げることができる。×
7R05-35-2Aが、仮設テント張りの案内所でBから買受けの申込みを受けた場合、Bは、クーリング・オフについて告げられた日から8日以内に電磁的方法により当該申込みの撤回を申し出れば、申込みの撤回を行うことができる。×
8R05-35-3Aが、Aの事務所でBから買受けの申込みを受けた場合、Bは、申込みの日から8日以内に電磁的方法により当該申込みの撤回を申し出れば、申込みの撤回を行うことができる。×
9R05-39-4Aは、手付金の保全措置を保証委託契約を締結することにより講ずるときは、保証委託契約に基づいて銀行等が手付金の返還債務を連帯して保証することを約する書面のBへの交付に代えて、Bの承諾を得ることなく電磁的方法により講ずることができる。×
10R05-45-2Aは、住宅販売瑕疵担保保証金の供託をする場合、当該住宅の売買契約を締結するまでに、Bに対し供託所の所在地等について、必ず書面を交付して説明しなければならず、買主の承諾を得ても書面の交付に代えて電磁的方法により提供することはできない。×
11H28-30-3宅地建物取引業者は、37条書面を交付する際に、相手方の承諾があったとしても、書面に代えて、電磁的記録で提供することはできない。×

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