【宅建過去問】(平成06年問06)条件・手付

Aは、Bから土地建物を購入する契約(代金5,000万円、手付300万円、違約金1,000万円)を、Bと締結し、手付を支払ったが、その後資金計画に支障を来し、残代金を支払うことができなくなった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

  1. 「Aのロ-ンが某日までに成立しないとき、契約は解除される」旨の条項がその契約にあり、ロ-ンがその日までに成立しない場合は、Aが解除の意思表示をしなくても、契約は効力を失う。
  2. Aは、Bが履行に着手する前であれば、中間金を支払っていても、手付を放棄して契約を解除し、中間金の返還を求めることができる。
  3. Aの債務不履行を理由に契約が解除された場合、Aは、Bに対し違約金を支払わなければならないが、手付の返還を求めることはできる。
  4. Aの債務不履行を理由に契約が解除された場合、Aは、実際の損害額が違約金よりも少なければ、これを立証して、違約金の減額を求めることができる。

正解:4

06-06-0

1 正しい

本肢の契約条項は、契約に解除条件を付けるものである。したがって、解除条件が成就した場合(某日までにローンが成立しない場合)、契約は自動的に効力を失う(民法127条2項)。

■参照項目&類似過去問
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停止条件・解除条件(民法[05]2(1))
年-問-肢内容正誤
1H30-03-1AとBとの間で、5か月後に実施される試験にBが合格したときにはA所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した。本件約定は、停止条件付贈与契約である。
2H30-03-3AとBとの間で、5か月後に実施される試験にBが合格したときにはA所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した。Bは、本件試験に合格したときは、本件約定の時点にさかのぼって甲建物の所有権を取得する。×
3H18-03-1Aは、Bとの間で、A所有の山林の売却について買主のあっせんを依頼し、その売買契約が締結され履行に至ったとき、売買代金の2%の報酬を支払う旨の停止条件付きの報酬契約を締結した。あっせん期間が長期間に及んだことを理由として、Bが報酬の一部前払を要求してきても、Aには報酬を支払う義務はない。
4H11-06-1AとBは、A所有の土地をBに売却する契約を締結し、その契約に「AがCからマンションを購入する契約を締結すること」を停止条件として付けた(仮登記の手続は行っていない。)。停止条件の成否未定の間は、AB間の契約の効力は生じていない。
5H06-06-1AとBは、A所有の甲土地をBに売却する契約を締結し、「Bのロ-ンが某日までに成立しないとき、契約は解除される」旨の条項がその契約にあり、ロ-ンがその日までに成立しない場合は、Bが解除の意思表示をしなくても、契約は効力を失う。

2 正しい

手付による解除ができなくなるのは、契約の相手方が契約の履行に着手した時点以降である(民法557条1項)。 自らが履行に着手していても、相手方が履行に着手していなければ、解約手付による解除をすることができる。

本肢では、Aは、中間金を支払う行動により履行に着手しているものの、Bは、いまだ履行に着手していない。したがって、Aの方からであれば、手付を放棄することにより契約を解除することができる。この場合、もちろん、中間金の返還を受けることができる。

※Aが履行に着手しているから、Bは、手付の倍返しをするだけでは、契約を解除することができない。

■参照項目&類似過去問
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手付解除ができる期間・当事者(民法[24]2(2)②)
年-問-肢内容正誤
1R03s-04-1売主Aと買主Bとの間で締結した売買契約に関し、BがAに対して手付を交付した場合、Aは、目的物を引き渡すまではいつでも、手付の倍額を現実に提供して売買契約を解除することができる。
×
2R02-09-1Aがその所有する甲建物について、Bとの間で、Aを売主、Bを買主とする売買契約を締結した。Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。×
329-05-3Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは当該自動車をCに100万円で売却した。売買契約が締結された際に、Cが解約手付として手付金10万円をAに支払っている場合には、Aはいつでも20万円を償還して売買契約を解除することができる。×
421-10-2売主が履行に着手していなくても、買主が履行に着手していれば、買主は契約を解除できない。×
517-09-4売主は、自らが履行に着手するまでは、買主が履行に着手していても、契約を解除できる。×
616-04-2売主が履行に着手した場合、買主が履行に着手したかどうかにかかわらず、売主は契約を解除できない。×
712-07-2買主が履行に着手した場合、売主が履行に着手していないときでも、買主は契約を解除できない。×
806-06-2買主は、売主が履行に着手するまでは、自らが履行に着手していても、契約を解除できる。
904-07-3買主は、自らが履行に着手していても、売主が履行に着手していなければ、契約を解除できる。

3 正しい

債務不履行により契約が解除された場合、Aは、もちろん予定した違約金を支払う必要がある(民法420条)。
一方、手付は、手付解除に備えて交付されているのであって、債務不履行に対するペナルティではない。したがって、債務不履行を理由に契約が解除された本肢のケースでは、手付は不当利得となる。Bは、それを返還しなければならない。

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手付解除とは(民法[24]2(2)①)
年-問-肢内容正誤
112-07-1手付の額が売買代金の額に比べて僅少である場合には、解約手付とする約定は、効力を有しない。×
212-07-3手付解除した場合で、買主に債務不履行はなかったが、売主が手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき、売主は、その損害全部の賠償を請求することができる。×
312-07-4売主の側から手付解除する場合、単に口頭で手付の額の倍額を償還することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。
406-06-3買主の債務不履行を理由に契約が解除された場合、買主は、売主に対し違約金を支払わなければならないが、手付の返還を求めることはできる。
504-07-1不動産の売買契約が宅建業者の媒介による場合、契約に別段の定めがあっても、手付は解約手付となる。×
604-07-2解約手付の契約は、売買契約と同時に締結しなければ、効力を生じない。×

4 誤り

損害賠償額の予定をした場合は、実際の損害額の多い少ないにかかわらず、予定額の賠償額において清算される(民法420条)。
実際の損害額が違約金より少ないとしても、その減額を求めることはできない。

■参照項目&類似過去問
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損害賠償額の予定(民法[15]3(2))
年-問-肢内容正誤
1H26-01-2当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2H16-04-3手付金相当額を損害賠償の予定と定めた場合、損害がその額を超えていても、その額以上に損害賠償請求することはできない。
3H14-07-1賠償額の予定条項があっても、債務者が履行遅滞について帰責事由のないことを主張・立証すれば、免責される。
4H14-07-3裁判所は、賠償額の予定の合意が、暴利行為として公序良俗違反となる場合に限り、賠償額の減額をすることができる。×
5H14-07-4賠償額の予定条項がある場合、債権者は履行遅滞があったことを主張・立証すれば足り、損害の発生や損害額を主張・立証する必要はない。
6H06-06-4実際の損害額が違約金より少なければ、違約金の減額を求めることができる。×
7H04-07-4賠償額の予定がない場合、売主から解除する場合の損害賠償額は手付の倍額とされる。×
8H02-02-2賠償額の予定は、契約と同時にしなければならない。×
9H02-02-3賠償額の予定は、金銭以外のものですることができる。
10H02-02-4賠償額を予定した場合、実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても予定額を超えて請求することはできない。

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【宅建過去問】(平成06年問06)条件・手付” に対して4件のコメントがあります。

  1. おみ より:

    詳しい解説、大変ありがとうございます。
    お忙しいところ申し訳ございません。

    ローン不成立の場合、
    平成06年問06肢1は「Aが解除の意思表示をしなくても、契約は効力を失う」に対して
    平成04年問08肢「買主が解除の意思表示をしない限り、契約は解除されない」
    両方とも解除条件かと思ったのですが、違いをご教授お願いできますでしょうか。
    平成04年問08のほうは、解除条件がなければ買主保護のために買主に解除権がありで納得できるのですが、文章から「解除条件あり」に思ってしまいます。私はどこか大きな勘違いをしているのでしょうか。
    よろしくお願いいたします。

    1. 家坂 圭一 より:

      ご質問ありがとうございます。

      1. 「契約の解除」という場合の「解除」
      2. 「解除条件」という場合の「解除」

      で言葉が重なっているので、分かりにくいかも知れませんね。
      以下、それぞれの問題を説明します。

      【1】この問題(平成06年問06肢1)

      「Aのロ-ンが某日までに成立しないとき、契約は解除される」という特約です。

      「契約は解除される」ということは、つまり、「ローンの不成立」という「事実」が発生すると、その時点で、自動的に契約の効力は失われるわけです。
      売主や買主の意思とは無関係です。

      ある事実(ローン不成立)の発生により、契約の行為が自動的に失われる。
      このような「事実」を「解除条件」と呼びます。

      契約の効力は自動的に失われるのですから、買主Aが「解除の意思表示」をする必要はありません。

      【2】平成04年問08肢3

      こういう問題です(リンクはこちら)。

      買主のローン不成立のときは契約を解除することができる旨の定めが当該契約にある場合において、ローンが不成立となったときは、売主がその事実を知っていても、買主が解除の意思表示をしない限り、契約は解除されない。

      こちらでは、
      「ローン不成立のときは契約を解除することができる
      と定めています。
      つまり、「ローン不成立」という「事実」が発生すると、買主に「契約解除権」が与えられます
      (契約が自動的に失効するのではありません。)

      買主は、「契約解除権」を持っているので、この売買契約を解除したければ、そうすることができます。
      しかし、これはあくまで権利です。
      「自己資金で支払う」とか「友達から借りる」とか、「ローン」以外の方法で資金を調達できれば、契約を解除しないこともできるわけです。

      おみさんは、

      平成04年問08のほうは、解除条件がなければ買主保護のために買主に解除権がありで納得できるのですが、文章から「解除条件あり」に思ってしまいます。

      とおっしゃいます。
      しかし、この選択肢は、「契約の解除」に関するものではあるものの、「解除条件」とは関係がありません。

      したがって、結論は、この選択肢の言うとおりです。
      売主がその事実(ローン不成立)を知っていても、知らなくても、売主のほうから契約を解除することはできません。

      【3】[Step.1]の復習ポイント

      問題の解説は以上です。
      しかし、「解除条件」「契約解除」に関する知識が不十分だと、消化不良になるでしょう。

      その場合は、[Step.1]基本習得編で、以下の復習箇所を見直しておきましょう。

      (1)条件・解除条件

      契約の有効・無効のきっかけとなる「事実」のうち、発生が不確実なものを「条件」といいます。
      「条件」のうち、その「事実」の発生により、「法律行為の効力が失われるもの」を「解除条件」といいます。

      ■民法[05]条件・期限

      (2)契約の解除

      「解除」とは、いったんは有効に成立した契約の効力を解消し、その契約が初めから存在しなかった状態にすることをいいます。

      ■民法[23]契約の解除

      1. おみ より:

        ご丁寧な解説で理解できました!
        お忙しいところ、ありがとうございました。

        1. 家坂 圭一 より:

          とんでもない。
          質問が解消できて何よりです。

          疑問を感じ、それを解決したときこそが、その知識を確実にする最大のチャンスです。
          この機会に、

          • [Step.1]基本習得編で基礎知識を確認し、
          • [Step.2]一問一答編で、類題をまとめて解き、

          この論点を得点源に仕上げておきましょう。

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