【宅建過去問】(平成11年問07)無権代理・表見代理
Aが、A所有の1棟の賃貸マンションについてBに賃料の徴収と小修繕の契約の代理をさせていたところ、Bが、そのマンションの1戸をAに無断で、Aの代理人として賃借人Cに売却した。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
- Aは、意外に高価に売れたのでCから代金を貰いたいという場合、直接Cに対して追認することができる。
- Cは、直接Aに対して追認するかどうか相当の期間内に返事をくれるよう催告をすることができるが、Cがこの催告をするには、代金を用意しておく必要がある。
- Aが追認しない場合でも、CがBに代理権があると信じ、そう信じることについて正当な理由があるとき、Cは、直接Aに対して所有権移転登記の請求をすることができる。
- Cは、Bの行為が表見代理に該当する場合であっても、Aに対し所有権移転登記の請求をしないで、Bに対しCの受けた損害の賠償を請求できる場合がある。
正解:2
無権代理の場合の相手方の権限を、主観別に分けてまとめておく。
1 正しい
無権代理行為は原則として無効であるが、本人Aは相手方Cに対して追認をすることができる(民法113条)。
※この場合、契約のときにさかのぼって有効だったことになる(民法116条)。
■参照項目&類似過去問
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無権代理:本人の権限(追認権・追認拒絶権)(民法[04]2(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-02-4 | AがBに対して、A所有の甲土地を売却する代理権を授与した。Bが、Aから代理権を授与されていないA所有の乙土地の売却につき、Aの代理人としてFと売買契約を締結した場合、AがFに対して追認の意思表示をすれば、Bの代理行為は追認の時からAに対して効力を生ずる。 | × |
2 | R01-05-1 | 本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合、その後は本人であっても無権代理行為を追認して有効な行為とすることはできない。 | ◯ |
3 | R01-05-3 | 無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。 | ◯ |
4 | 26-02-ア | 無権代理行為を本人が追認する場合、契約の効力は、追認をした時から将来に向かって生ずる。 | × |
5 | 24-04-1 | 無権代理行為を本人が追認した場合、売買契約は有効となる。 | ◯ |
6 | 17-03-ウ | 無権代理行為を本人が追認した場合、売買契約は有効となる。 | ◯ |
7 | 14-02-4 | [Aが、Bの代理人としてCとの間で、B所有の土地の売買契約を締結する。]AがBに無断でCと売買契約をしたが、Bがそれを知らないでDに売却して移転登記をした後でも、BがAの行為を追認すれば、DはCに所有権取得を対抗できなくなる。 | × |
8 | 11-07-1 | 本人は無権代理行為を相手方に対して追認することができる。 | ◯ |
9 | 09-01-1 | 無権代理行為を本人または相手方が追認した場合、売買契約は有効となる。 | × |
10 | 06-04-3 | 本人の追認により契約は有効となるが、その追認は相手方に対して直接行うことを要し、無権代理人に対して行ったときは、相手方がその事実を知ったとしても、契約の効力を生じない。 | × |
11 | 04-03-4 | 無権代理行為は無効であるが、本人が追認すれば、新たな契約がなされたとみなされる。 | × |
2 誤り
相手方(C)は無権代理人(B)の行為を追認するか否かを本人(A)に催告することができる(民法114条)。
しかし、この催告をするにつき代金を用意しておく必要はない。
※催告に対して確答がない場合には、追認を拒絶したものとみなされ、契約は無効となる(民法114条)。
■参照項目&類似過去問
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無権代理:相手方の催告権(民法[04]3(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 16-02-2 | 相手方は本人に対して追認するか否か催告でき、本人が確答しない場合、追認とみなされ契約は有効となる。 | × |
2 | 11-07-2 | 相手方が本人に催告するには、代金を用意しておく必要がある。 | × |
3 | 09-01-3 | 無権代理人が本人に追認するかどうか催告し、本人が確答しない場合、本人は追認拒絶したものとみなされる。 | × |
3 正しい
AはBに対して、
(1)賃料の徴収と小修繕の契約に関する代理権を与えただけなのに、
(2)Bが売却行為を行っている。
つまり、権限外の行為の表見代理のケースである(民法110条)。
相手方Cは、代理人Bに権限があると信ずべき正当な理由がある(善意・無過失である)から、表見代理が成立し、この代理行為は有効となる。
したがって、Cは直接Aに対し所有権移転の請求をすることができる。
■参照項目&類似過去問
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表見代理(民法[04]5)
[共通の設定]
A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した。
[共通の設定]
A所有の甲土地につき、Aから売却に関する代理権を与えられていないBが、Aの代理人として、Cとの間で売買契約を締結した。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
権限外の行為の表見代理 | |||
1 | H26-02-イ | 不動産を担保に金員を借り入れる代理権を与えられた代理人が、本人の名において不動産を売却した場合、相手方において本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由があるときは、表見代理の規定を類推適用できる。 | ◯ |
2 | H18-02-2 | AがBに対し、甲土地に抵当権を設定する代理権を与えているが、Bの売買契約締結行為は権限外の行為となる場合、甲土地を売り渡す具体的な代理権がBにあるとCが信ずべき正当な理由があるときは、AC間の本件売買契約は有効となる。 | ◯ |
3 | H16-02-1 | AとBとが夫婦であり契約に関して何ら取り決めのない場合には、不動産売買はAB夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内にないとCが考えていた場合も、本件売買契約は有効である。 | × |
4 | H14-02-2 | Aが、BにA所有土地を担保として、借金をすることしか頼んでいない場合、CがBに土地売却の代理権があると信じ、それに正当の事由があっても、AC間に売買契約は成立しない。 | × |
5 | H11-07-3 | Aが、甲土地についてBに賃料の徴収の代理をさせていた。Bによる甲土地の売却をAが追認しない場合でも、CがBに代理権があると信じ、そう信じることについて正当な理由があるとき、Cは、直接Aに対して所有権移転登記の請求をすることができる。 | ◯ |
6 | H08-02-2 | BがAから抵当権設定の代理権を与えられ、土地の登記済証、実印、印鑑証明書の交付を受けていた場合で、CがAC間の売買契約についてBに代理権ありと過失なく信じたとき、Cは、Aに対して土地の引渡しを求めることができる。 | ◯ |
7 | H06-04-2 | AがBに抵当権設定の代理権しか与えていなかったにかかわらず、Bが売買契約を締結した場合、Aは、Cが善意無過失であっても、その売買契約を取り消すことができる。 | × |
代理権消滅後の表見代理 | |||
1 | R03s-05-4 | AがBに与えた代理権が消滅した後にBが行った代理権の範囲内の行為について、相手方Cが過失によって代理権消滅の事実を知らなかった場合でも、Aはその責任を負わなければならない。 | × |
2 | R02s-02-3 | AがBに授与した代理権が消滅した後、BがAの代理人と称して、甲土地をCに売却した場合、AがCに対して甲土地を引き渡す責任を負うことはない。 | × |
3 | H17-03-イ | Aが従前Bに与えていた代理権が消滅した後であっても、Cが代理権の消滅について善意無過失であれば、当該売買契約によりCは甲土地を取得することができる。 | ◯ |
4 | H08-02-4 | Bが、Aから土地売買の委任状を受領した後、破産手続開始の決定を受けたのに、Cに当該委任状を示して売買契約を締結した場合、Cは、Bが破産手続開始の決定を受けたことを知っていたときでも、Aに対して土地の引渡しを求めることができる。 | × |
5 | H06-04-4 | Bが代理権を与えられた後売買契約締結前に破産すると、Bの代理権は消滅するが、Bの代理権が消滅しても、Cが善意無過失であれば、その売買契約は有効である。 | ◯ |
代理権授与の表示による表見代理 | |||
1 | R03s-05-2 | AがBに代理権を与えていないにもかかわらず代理権を与えた旨をCに表示し、Bが当該代理権の範囲内の行為をした場合、CがBに代理権がないことを知っていたとしても、Aはその責任を負わなければならない。 | × |
2 | H18-02-1 | AがCに対し、Bは甲土地の売却に関する代理人であると表示していた場合、Bに甲土地を売り渡す具体的な代理権はないことをCが過失により知らなかったときは、AC間の本件売買契約は有効となる。 | × |
表見代理が成立しないケース | |||
1 | R03s-05-3 | BがAから何ら代理権を与えられていないにもかかわらずAの代理人と詐称してCとの間で法律行為をし、CがBにAの代理権があると信じた場合であっても、原則としてその法律行為の効果はAに帰属しない。 | ◯ |
2 | H04-03-1 | Aの所有する不動産について、Bが無断でAの委任状を作成して、Aの代理人と称して、善意無過失の第三者Cに売却し、所有権移転登記を終えた。Cが善意無過失であるから、AC間の契約は、有効である。 | × |
4 正しい
相手方Cは代理人Bの行為が表見代理に該当する場合であっても、無権代理の主張をすることができる(最判昭62.07.07)。
したがって、CはBに対し損害賠償または履行を請求することができる(民法117条)。
■参照項目&類似過去問
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無権代理人の責任追及(民法[04]3(3))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 18-02-4 | 本人が無権代理行為を追認しない場合、無権代理人は相手方の選択に従い、契約履行または損害賠償責任を負う。ただし、相手方が契約時に悪意の場合は責任を負わない。 | ◯ |
2 | 11-07-4 | 表見代理に該当する場合でも、相手方は無権代理を主張し、無権代理人に対し損害賠償請求できる場合がある。 | ◯ |
3 | 09-01-4 | 本人が追認を拒絶した場合、無権代理人が自ら契約を履行する責任を負うことがある。 | ◯ |
4 | 05-02-2 | 本人が追認しないときは、相手方は、無権代理につき善意であれば過失の有無に関係なく、無権代理人に履行を請求できる。 | × |
5 | 02-05-1 | 本人BがAに代理権を与えていなかった場合は、相手方Cは、そのことについて善意無過失であり、かつ、Bの追認がないとき、Aに対して契約の履行の請求又は損害賠償の請求をすることができる。 | ◯ |