【宅建過去問】(平成11年問09)不法行為(使用者責任)

Aの被用者Bが、Aの事業の執行につきCとの間の取引において不法行為をし、CからAに対し損害賠償の請求がされた場合のAの使用者責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. Bの行為が、Bの職務行為そのものには属しない場合でも、その行為の外形から判断して、Bの職務の範囲内に属するものと認められるとき、Aは、Cに対して使用者責任を負うことがある。
  2. Bが職務権限なくその行為を行っていることをCが知らなかった場合で、そのことにつきCに重大な過失があるとき、Aは、Cに対して使用者責任を負わない。
  3. Aが、Bの行為につきCに使用者責任を負う場合は、CのBに対する損害賠償請求権が消滅時効にかかったときでも、そのことによってAのCに対する損害賠償の義務が消滅することはない。
  4. AがBの行為につきCに対して使用者責任を負う場合で、AがCに損害賠償金を支払ったときでも、Bに故意又は重大な過失があったときでなければ、Aは、Bに対して求償権を行使することができない。

正解:4

1 正しい

被用者Bの行為が、本来の職務を逸脱しその地位を濫用したものであるような場合でも、その行為が本来の職務と密接の関連を有し外形上本来の職務の執行と見られる場合には、使用者Aは使用者としての責任を負わなければならない(民法715条1項 。最判昭36.06.09

■参照項目&類似過去問
内容を見る
使用者責任の成立要件(民法[30]2(2))

[共通の設定]
Cの被用者Aが、Bとの間で行った行為により、Bに損害が発生した。
年-問-肢内容正誤
1H23-08-1
青信号で横断歩道を歩いていたBが、赤信号を無視した自動車にはねられてケガをした。運転者AはCに雇用されていて、勤務時間中、仕事のために自動車を運転していた。Bが治療費として病院に支払った50万円の支払いをAに対して求める場合、債権は契約に基づいて発生する。×
2H18-11-2Aが営業時間中にC所有の自動車を運転して取引先に行く途中に前方不注意で人身事故を発生させても、Cに断で自動車を運転していた場合、Cに使用者としての損害賠償責任は発生しない。×
3H11-09-1Aの行為が、Aの職務行為そのものには属しない場合でも、その行為の外形から判断して、Aの職務の範囲内に属するものと認められるとき、Cは、Bに対して使用者責任を負うことがある。
4H11-09-2Aが職務権限なくその行為を行っていることをBが知らなかった場合で、そのことにつきBに重大な過失があるとき、Cは、Bに対して使用者責任を負わない。
5H06-07-1Bは、Aの不法行為責任が成立しなければ、Cに対して損害の賠償を求めることはできない。
6H06-07-3Bは、Aの行為がCの指示によるものでないときは、Aに対して損害の賠償を求めることができるが、Cに対しては求めることができない。×

2 正しい

被用者Bの行為が
(1)外形からみて使用者の事業の範囲内に属すると認められる場合であっても、
(2)被用者の職務権限内において適法に行なわれたものではなく、
(3)相手方Cが右の事情に悪意または重過失で知らなかったときは、
Cは、使用者Aに対して使用者責任に基づく損害賠償を請求することができない(民法715条1項 。最判昭42.11.02)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
使用者責任の成立要件(民法[30]2(2))

[共通の設定]
Cの被用者Aが、Bとの間で行った行為により、Bに損害が発生した。
年-問-肢内容正誤
1H23-08-1
青信号で横断歩道を歩いていたBが、赤信号を無視した自動車にはねられてケガをした。運転者AはCに雇用されていて、勤務時間中、仕事のために自動車を運転していた。Bが治療費として病院に支払った50万円の支払いをAに対して求める場合、債権は契約に基づいて発生する。×
2H18-11-2Aが営業時間中にC所有の自動車を運転して取引先に行く途中に前方不注意で人身事故を発生させても、Cに断で自動車を運転していた場合、Cに使用者としての損害賠償責任は発生しない。×
3H11-09-1Aの行為が、Aの職務行為そのものには属しない場合でも、その行為の外形から判断して、Aの職務の範囲内に属するものと認められるとき、Cは、Bに対して使用者責任を負うことがある。
4H11-09-2Aが職務権限なくその行為を行っていることをBが知らなかった場合で、そのことにつきBに重大な過失があるとき、Cは、Bに対して使用者責任を負わない。
5H06-07-1Bは、Aの不法行為責任が成立しなければ、Cに対して損害の賠償を求めることはできない。
6H06-07-3Bは、Aの行為がCの指示によるものでないときは、Aに対して損害の賠償を求めることができるが、Cに対しては求めることができない。×

3 正しい

使用者責任が発生する場合、使用者と被用者は、被害者に対する連帯債務を負う。
すなわち、AとBは、それぞれCに対して、債務全額の支払い義務を負うことになる。また、A又はBの一方に生じた事由は、絶対効が認められる一部の事由を除いて、他方債務者に影響しない(相対効の原則)。
本肢では、消滅時効について問われている。AとBの損害賠償義務が連帯債務の関係にある以上、Bの損害賠償義務が時効にかかったとしても、Aの損害賠償義務が当然に消滅するわけではない。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
使用者責任の性質(連帯債務)(民法[30]2(3))

[共通の設定]
Cの被用者Aが、Bとの間で行った行為により、Bに損害が発生した。

年-問-肢内容正誤
1H24-09-1BのCに対する損害賠償義務が消滅時効にかかったとしても、AのCに対する損害賠償義務が当然に消滅するものではない。
2H11-09-3Cが、Aの行為につきBに使用者責任を負う場合は、BのAに対する損害賠償請求権が消滅時効にかかったときでも、そのことによってCのBに対する損害賠償の義務が消滅することはない。

4 誤り

使用者責任により使用者が被害者に損害賠償金を支払ったときは、被用者に対して求償することができる(民法715条3項)。
被用者に故意または重大な過失があった場合に限定されるわけではない。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
使用者の被用者に対する求償(民法[30]2(4))

[共通の設定]
Cの被用者Aが、Bとの間で行った行為により、Bに損害が発生した。
年-問-肢内容正誤
1H28-07-ウ
Cは、使用者責任に基づき、Bに対して本件事故から生じた損害を賠償した場合、Aに対して求償することができるが、その範囲が信義則上相当と認められる限度に制限される場合がある。
2H25-09-1Cに雇用されているAが、勤務中にC所有の乗用車を運転し、営業活動のため顧客Bを同乗させている途中で、Dが運転していたD所有の乗用車と正面衝突した(なお、事故についてはAとDに過失がある。)。Cは、Bに対して事故によって受けたBの損害の全額を賠償した。この場合、Cは、BとDの過失割合に従って、Dに対して求償権を行使することができる。
3H25-09-2Cは、Bに対して事故によって受けたBの損害の全額を賠償した。この場合、Cは、被用者であるAに対して求償権を行使することはできない。×
4H24-09-3Cの使用者責任が認められてBに対して損害を賠償した場合には、CはAに対して求償することができるので、Aに資力があれば、最終的にはCはBに対して賠償した損害額の全額を常にAから回収することができる。×
5H20-11-3AがCに雇用されており、AがCの事業の執行につきBに加害行為を行った場合には、CがBに対する損害賠償責任を負うのであって、CはAに対して求償することもできない。×
6H18-11-4Aの不法行為がCの事業の執行につき行われたものであり、Cが使用者としての損害賠償責任を負担した場合、C自身は不法行為を行っていない以上、Cは負担した損害額の2分の1をAに対して求償できる。×
7H14-11-3C、Bに対し損害賠償債務を負担したことに基づき損害を被った場合は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、Aに対し、損害の賠償又は求償の請求をすることができる。
8H14-11-4Aが、自己の負担部分を超えて、Bに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができる。
9H11-09-4CがAの行為につきBに対して使用者責任を負う場合で、CがBに損害賠償金を支払ったときでも、Aに故意又は重大な過失があったときでなければ、Cは、Aに対して求償権を行使することができない。×
10H06-07-4Aは、Bに対して損害の賠償をした場合、Cに求償することはできない。×
11H04-09-4従業員Aが宅地建物取引業者Cの業務を遂行中に第三者Bに不法行為による損害を与えた場合、Cは、その損害を賠償しなければならないが、Aに対してその求償をすることはできない。×

>>年度目次に戻る

【無料公開講座】スリー・ステップ学習法

宅建学習のプロセスを3段階に分け、着実なステップアップを目指す『スリー・ステップ学習法』。この講座の特長を実際に理解・体験していただくための「無料公開講座」です。
  • [Step.1]基本習得編で宅建合格に必要な基礎知識を学ぶ。
  • [Step.2]一問一答編で「一問一答式」の本試験過去問で基礎知識を確認し、○×を見分ける解法テクニックを身に付ける。
  • [Step.3]過去演習編で「四択問題」の解決法を学ぶ。

この3段階で、着実に合格レベルに進むことができます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です