【宅建過去問】(平成20年問06)連帯債務・連帯保証
AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1,000万円を借り入れる場合と、DからEが1,000万円を借り入れ、Fがその借入金返済債務についてEと連帯して保証する場合とに関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- Aが、Bに対して債務を免除した場合にはCが、Cに対して債務を免除した場合にはBが、それぞれ500万円分の債務を免れる。Dが、Eに対して債務を免除した場合にはFが、Fに対して債務を免除した場合にはEが、それぞれ全額の債務を免れる。
- Aが、Bに対して履行を請求した効果はCに及ばず、Cに対して履行を請求した効果はBに及ばない。Dが、Eに対して履行を請求した効果はFに及ぶが、Fに対して履行を請求した効果はEに及ばない。
- Bについて時効が完成した場合にはCが、Cについて時効が完成した場合にはBが、それぞれ500万円分の債務を免れる。Eについて時効が完成した場合にはFが、Fについて時効が完成した場合にはEが、それぞれ全額の債務を免れる。
- AB間の契約が無効であった場合にはCが、AC間の契約が無効であった場合にはBが、それぞれ1,000万円の債務を負う。DE間の契約が無効であった場合はFが、DF間の契約が無効であった場合はEが、それぞれ1,000万円の債務を負う。
正解:2
設定の確認
1 誤り
■連帯債務のケース
連帯債務者の一人が債務を免除された場合であっても、他の連帯債務者の債務には影響がありません(相対効。民法441条本文)。本肢の例でいうと、Bが債務を免除された場合にはCが、Cが債務を免除された場合にはBが、それぞれ1,000万円の債務を負います(左図)。
本肢は、「500万円分の債務を免れる」とする点が誤りです。
■連帯保証のケース
主たる債務者Eが債務の免除を受ければ、保証債務の付従性により、連帯保証人Fも債務を免れます(中図)。
一方、連帯保証人が債務の免除を受けた場合については、連帯債務に関するルールが準用されます(民法458条、441条本文)。したがって、主たる債務者Eの債務には全く影響を与えません。つまり、Eは、依然として全額の債務を負担します(右図)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る[共通の設定]
AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1,000万円を借り入れた。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03-02-3 | AがCに対して債務を免除した場合でも、特段の合意がなければ、AはBに対して、弁済期が到来した1,000万円全額の支払を請求することができる。 | ◯ |
2 | H20-06-1 | Aが、Bに対して債務を免除した場合にはCが、Cに対して債務を免除した場合にはBが、それぞれ500万円分の債務を免れる。 | × |
3 | H16-06-2 | AがBに対して債務の全額を免除しても、CはAに対してなお1,000万円の債務を負担している。 | ◯ |
4 | H08-04-3 | Aが、Bに対して代金債務の全額の免除をした場合でも、Cに対して代金全額の支払いを請求することができる。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
[共通の設定] BがAに対して負う1,000万円の債務について、Cが保証人となっている。 |
|||
免除 | |||
1 | 20-06-1 | Aが、Bに対して債務を免除した場合にはCが、Cに対して債務を免除した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
時効完成 | |||
1 | 20-06-3 | Bについて時効が完成した場合にはCが、Cについて時効が完成した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
履行の請求 | |||
1 | 20-06-2 | Aが、Bに対して履行を請求した効果はCに及ぶが、Cに対して履行を請求した効果はBに及ばない。 | ◯ |
2 | 15-07-4 | Cの保証債務にBと連帯して債務を負担する特約がない場合、Bに対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、Cに対してもその効力を生ずる。 | ◯ |
3 | 07-03-3 | AがBに対して訴訟により弁済を求めた場合、Cの債務についても、時効の完成が猶予される。 | ◯ |
4 | 02-07-2 | AのBに対する履行の請求は、Cに対しては効力を生じない。 | × |
債務の承認 | |||
1 | 16-06-4 | Bが債務を承認して時効が更新された場合にはCの保証債務に対しても時効更新の効力を生ずる。 | ◯ |
主たる債務者の債権による相殺 | |||
1 | 06-09-4 | AがCに対して直接1,000万円の支払を求めて来ても、BがAに 600万円の債権を有しているときは、Cは、600万円の範囲で債務の履行を拒むことができるため、 400万円を支払えばよい。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
[共通の設定] BがAに対して負う1,000万円の債務について、Dが連帯保証人となっている。 |
|||
免除 | |||
1 | 20-06-1 | Aが、Bに対して債務を免除した場合にはDが、Dに対して債務を免除した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
2 | 16-06-2 | AがDに対して連帯保証債務の全額を免除すれば、Bも債務の全額を免れる。 | × |
時効の完成 | |||
1 | 20-06-3 | Bについて時効が完成した場合にはDが、Dについて時効が完成した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
履行の請求 | |||
1 | 20-06-2 | Aが、Bに対して履行を請求した効果はDに及ぶが、Dに対して履行を請求した効果はBに及ばない。 | ◯ |
2 | 15-07-3 | Dの保証債務がBとの連帯保証債務である場合、Dに対する履行の請求による時効の完成猶予は、Bに対してはその効力を生じない。 | ◯ |
3 | 10-04-3 | AがDに対して請求の訴えを提起することにより、Bに対する関係でも消滅時効の完成が猶予されることになる。 | × |
4 | 07-03-1 | AがDに対して訴訟により弁済を求めた場合、Bの債務についても、時効の完成が猶予される。 | × |
5 | 02-07-3 | AのDに対する履行の請求は、Bに対しては効力を生じない。 | ◯ |
2 正しい
■連帯債務のケース
連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しては、その効力を生じません(相対効。民法441条本文)。つまり、AがB(C)に対して履行の請求をしても、C(B)に対しては履行の請求をしたことにならないわけです(左図)。
■連帯保証のケース
主たる債務者Eに履行を請求すれば、保証債務の付従性により、連帯保証人Fにも履行を請求したことになります(中図)。
一方、連帯保証人に履行を請求した場合については、連帯債務に関するルールが準用されます(民法458条)。そして、連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しては、その効力を生じません(相対効。民法441条本文。右図)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る[共通の設定]
AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1,000万円を借り入れた。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03-02-1 | AがBに対して裁判上の請求を行ったとしても、特段の合意がなければ、CがAに対して負う債務の消滅時効の完成には影響しない。 | ◯ |
2 | H29-08-1 | AがBに対して履行の請求をした場合、Cがそのことを知っていれば、Cについても、その効力が生じる。 | × |
3 | H20-06-2 | Aが、Bに対して履行を請求した効果はCに及ばす、Cに対して履行を請求した効果はBに及ばない。 | ◯ |
4 | H08-04-2 | Aが、Bに対し代金の支払いを請求した場合、その効力はCには及ばない。 | ◯ |
5 | H03-06-3 | AがBに対して貸金の返済を請求して、Aの貸金債権の消滅時効の完成が猶予されたときでも、Cの債務については、猶予されない。 | ◯ |
6 | H02-07-4 | BとCが連帯債務を負う場合、AのBに対する履行の請求は、Cに対しては効力を生じない。 | ◯ |
7 | H01-10-1 | AがBに対して代金支払いの請求をすると、Aの代金債権の消滅時効は、Cについても完成が猶予される。 | × |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
[共通の設定] BがAに対して負う1,000万円の債務について、Cが保証人となっている。 |
|||
免除 | |||
1 | 20-06-1 | Aが、Bに対して債務を免除した場合にはCが、Cに対して債務を免除した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
時効完成 | |||
1 | 20-06-3 | Bについて時効が完成した場合にはCが、Cについて時効が完成した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
履行の請求 | |||
1 | 20-06-2 | Aが、Bに対して履行を請求した効果はCに及ぶが、Cに対して履行を請求した効果はBに及ばない。 | ◯ |
2 | 15-07-4 | Cの保証債務にBと連帯して債務を負担する特約がない場合、Bに対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、Cに対してもその効力を生ずる。 | ◯ |
3 | 07-03-3 | AがBに対して訴訟により弁済を求めた場合、Cの債務についても、時効の完成が猶予される。 | ◯ |
4 | 02-07-2 | AのBに対する履行の請求は、Cに対しては効力を生じない。 | × |
債務の承認 | |||
1 | 16-06-4 | Bが債務を承認して時効が更新された場合にはCの保証債務に対しても時効更新の効力を生ずる。 | ◯ |
主たる債務者の債権による相殺 | |||
1 | 06-09-4 | AがCに対して直接1,000万円の支払を求めて来ても、BがAに 600万円の債権を有しているときは、Cは、600万円の範囲で債務の履行を拒むことができるため、 400万円を支払えばよい。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
[共通の設定] BがAに対して負う1,000万円の債務について、Dが連帯保証人となっている。 |
|||
免除 | |||
1 | 20-06-1 | Aが、Bに対して債務を免除した場合にはDが、Dに対して債務を免除した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
2 | 16-06-2 | AがDに対して連帯保証債務の全額を免除すれば、Bも債務の全額を免れる。 | × |
時効の完成 | |||
1 | 20-06-3 | Bについて時効が完成した場合にはDが、Dについて時効が完成した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
履行の請求 | |||
1 | 20-06-2 | Aが、Bに対して履行を請求した効果はDに及ぶが、Dに対して履行を請求した効果はBに及ばない。 | ◯ |
2 | 15-07-3 | Dの保証債務がBとの連帯保証債務である場合、Dに対する履行の請求による時効の完成猶予は、Bに対してはその効力を生じない。 | ◯ |
3 | 10-04-3 | AがDに対して請求の訴えを提起することにより、Bに対する関係でも消滅時効の完成が猶予されることになる。 | × |
4 | 07-03-1 | AがDに対して訴訟により弁済を求めた場合、Bの債務についても、時効の完成が猶予される。 | × |
5 | 02-07-3 | AのDに対する履行の請求は、Bに対しては効力を生じない。 | ◯ |
3 誤り
■連帯債務のケース
連帯債務者の一人のために時効が完成した場合であっても、他の連帯債務者の債務には影響がありません(相対効。民法441条本文)。本肢の例でいうと、Bについて時効が完成した場合にはCが、Cについて時効が完成した場合にはBが、それぞれ1,000万円の債務を負います(左図)。
本肢は、「500万円分の債務を免れる」とする点が誤りです
■連帯保証のケース
主たる債務者Eについて時効が完成すれば、保証債務の付従性により、連帯保証人Fも債務を免れます(中図)。
一方、連帯保証人について時効が完成した場合については、連帯債務に関するルールが準用されます(民法458条、441条本文)。したがって、主たる債務者Eの債務には全く影響を与えません。つまり、Eは、依然として全額の債務を負担します(右図)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る[共通の設定]
AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1,000万円を借り入れた。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H29-08-3 | Bのために時効が完成した場合、CのAに対する連帯債務も時効によって全部消滅する。 | × |
2 | H20-06-3 | Bについて時効が完成した場合にはCが、Cについて時効が完成した場合にはBが、それぞれ500万円分の債務を免れる。 | × |
3 | H03-06-1 | Bの債務が時効により消滅したときでも、Cは、1,000万円全額を返済する債務を負う。 | ◯ |
4 | H03-06-3 | AがBに対して貸金の返済を請求して、Aの貸金債権の消滅時効の完成が猶予されたときでも、Cの債務については、猶予されない。 | ◯ |
4 | H03-06-4 | Bが債務を承認して、Aの代金債権の消滅時効が更新されたときでも、Cの債務については、更新されない。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
[共通の設定] BがAに対して負う1,000万円の債務について、Cが保証人となっている。 |
|||
免除 | |||
1 | 20-06-1 | Aが、Bに対して債務を免除した場合にはCが、Cに対して債務を免除した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
時効完成 | |||
1 | 20-06-3 | Bについて時効が完成した場合にはCが、Cについて時効が完成した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
履行の請求 | |||
1 | 20-06-2 | Aが、Bに対して履行を請求した効果はCに及ぶが、Cに対して履行を請求した効果はBに及ばない。 | ◯ |
2 | 15-07-4 | Cの保証債務にBと連帯して債務を負担する特約がない場合、Bに対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、Cに対してもその効力を生ずる。 | ◯ |
3 | 07-03-3 | AがBに対して訴訟により弁済を求めた場合、Cの債務についても、時効の完成が猶予される。 | ◯ |
4 | 02-07-2 | AのBに対する履行の請求は、Cに対しては効力を生じない。 | × |
債務の承認 | |||
1 | 16-06-4 | Bが債務を承認して時効が更新された場合にはCの保証債務に対しても時効更新の効力を生ずる。 | ◯ |
主たる債務者の債権による相殺 | |||
1 | 06-09-4 | AがCに対して直接1,000万円の支払を求めて来ても、BがAに 600万円の債権を有しているときは、Cは、600万円の範囲で債務の履行を拒むことができるため、 400万円を支払えばよい。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
[共通の設定] BがAに対して負う1,000万円の債務について、Dが連帯保証人となっている。 |
|||
免除 | |||
1 | 20-06-1 | Aが、Bに対して債務を免除した場合にはDが、Dに対して債務を免除した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
2 | 16-06-2 | AがDに対して連帯保証債務の全額を免除すれば、Bも債務の全額を免れる。 | × |
時効の完成 | |||
1 | 20-06-3 | Bについて時効が完成した場合にはDが、Dについて時効が完成した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。 | × |
履行の請求 | |||
1 | 20-06-2 | Aが、Bに対して履行を請求した効果はDに及ぶが、Dに対して履行を請求した効果はBに及ばない。 | ◯ |
2 | 15-07-3 | Dの保証債務がBとの連帯保証債務である場合、Dに対する履行の請求による時効の完成猶予は、Bに対してはその効力を生じない。 | ◯ |
3 | 10-04-3 | AがDに対して請求の訴えを提起することにより、Bに対する関係でも消滅時効の完成が猶予されることになる。 | × |
4 | 07-03-1 | AがDに対して訴訟により弁済を求めた場合、Bの債務についても、時効の完成が猶予される。 | × |
5 | 02-07-3 | AのDに対する履行の請求は、Bに対しては効力を生じない。 | ◯ |
4 誤り
■連帯債務のケース
連帯債務者の一人について契約が無効であった場合でも、他の連帯債務者の債務には影響を及ぼしません(左図、民法437条)。
■連帯保証のケース
債権者Dと主たる債務者Eとの契約が無効であった場合、保証債務の付従性により、連帯保証人Fも債務を免れます(中図)。
一方、債権者Dと連帯保証人Fとの契約が無効であった場合、連帯保証契約は不成立です。しかし、このことは、主たる債務には影響を与えません(右図)。つまり、保証人のいない債務として有効に成立します。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
[共通の設定] AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1,000万円を借り入れた。 |
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1 | 20-06-4 | AB間の契約が無効であった場合にはCが、AC間の契約が無効であった場合にはBが、それぞれ1,000万円の債務を負う。 | ◯ |
2 | 01-10-2 | 契約を締結する際、Aに錯誤があって、AC間の契約を取り消すことができる場合であったとしても、Bは、BC間の契約を取り消すことができない。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 20-06-4 | DからEが1,000万円を借り入れ、Fがその借入金返済債務についてEと連帯して保証する場合、DE間の契約が無効であった場合はFが、DF間の契約が無効であった場合はEが、それぞれ1,000万円の債務を負う。 | × |
2 | 06-09-2 | 主債務者の債権者に対する債務が条件不成就のため成立しなかった場合、保証人は、債権者に対して保証債務を負わない。 | ◯ |
連帯債務者の1人が時効や免除を受けた場合は、残った人の負担部分は500万円のままで債権者に1000万円の債務を負うってことでしょうか。
その通りです。
疑問に思ったこの機会に、[Step.1]で知識を確認しておきましょう。
■民法[17]連帯債務
4.連帯債務者の一人に生じた事由
(4).相対効が生じる場合
①免除
②時効完成