【宅建過去問】(平成20年問35)媒介契約(個数問題)

宅地建物取引業者Aが、Bから自己所有の宅地の売却の媒介を依頼された場合における当該媒介に係る契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

  • ア Aが、Bとの間に一般媒介契約(専任媒介契約でない媒介契約)を締結したときは、当該宅地に関する所定の事項を必ずしも指定流通機構へ登録しなくてもよいため、当該媒介契約の内容を記載した書面に、指定流通機構への登録に関する事項を記載する必要はない。
  • イ Aが、Bとの間に専任媒介契約を締結し、当該宅地に関する所定の事項を指定流通機構に登録したときは、Aは、遅滞なく、その旨を記載した書面を作成してBに交付しなければならない。
  • ウ Aが、Bとの間に専任媒介契約を締結し、売買契約を成立させたときは、Aは、遅滞なく、当該宅地の所在、取引価格、売買契約の成立した年月日を指定流通機構に通知しなければならない。
  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. なし

正解:4

はじめに

最初に、一般媒介契約と専任媒介契約、さらに専属専任媒介契約について、共通点と相違点をまとめておきます。

一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約

ア 誤り

■指定流通機構への登録

専任媒介の場合と違って、一般媒介契約の場合には、指定流通機構への登録は、任意です(宅建業法34条の2第5項参照)。つまり、登録することはできますが、登録する義務はありません。

■媒介契約書の記載事項

媒介契約書の記載事項は、以下のものです(宅建業法34条の2第1項、規則15条の9)。これは、一般媒介契約であるか、専任媒介契約であるか、を問いません。
したがって、一般媒介の場合にも、媒介契約書には指定流通機構への登録(同法34条の2第6号)に関して記載する必要があります。

媒介契約書の記載事項

※指定流通機構に登録しない場合には、「指定流通機構への登録=無」と記載することになります。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
指定流通機構への登録(登録義務)(宅建業法[10]4(3))

[共通の設定]
宅地建物取引業者Aが、BからB所有の宅地又は建物の売却に係る媒介を依頼された。
年-問-肢内容正誤
媒介契約が「専任媒介契約」であるケース
1R05-40-3Aは、当該中古住宅について法で規定されている事項を、契約締結の日から休業日数を含め7日以内に指定流通機構へ登録する義務がある。×
2R03s-33-イAがBとの間で専属専任媒介契約ではない専任媒介契約を締結した場合、Bの要望により当該宅地を指定流通機構に登録しない旨の特約をしているときを除き、Aは、当該専任媒介契約締結日から7日以内(休業日数を含まない。)に、指定流通機構に当該宅地の所在等を登録しなければならない。×
3R02s-28-アAがBとの間で専任媒介契約を締結した場合、Bの要望により当該宅地を指定流通機構に登録しない旨の特約をしているときを除き、Aは、当該契約締結日から7日以内(Aの休業日を含まない。)に、当該宅地の所在等を指定流通機構に登録しなければならない。
×
4H29-28-イAは、宅地の売却を希望するBと専任代理契約を締結した。Aは、Bの要望を踏まえ、当該代理契約に指定流通機構に登録しない旨の特約を付したため、その登録をしなかった。
×
5H27-30-イAは、Bの要望により、指定流通機構に当該宅地を登録しない旨の特約をし、指定流通機構に登録しなかった。
×
6H27-30-ウBと専任媒介契約を締結したAは、短期間で売買契約を成立させることができると判断したので指定流通機構に登録せず、専任媒介契約締結の日の9日後に当該売買契約を成立させた。×
7H26-32-アAがBとの間で専任媒介契約を締結し、Bから「売却を秘密にしておきたいので指定流通機構への登録をしないでほしい」旨の申出があった場合、Aは、そのことを理由に登録をしなかったとしても法に違反しない。
×
8H23-31-2A社は、Bとの間で専任媒介契約を締結したときは、Bからの申出があれば、所定の事項を指定流通機構に登録しない旨の特約を定めることができる。
×
9H15-43-2Aが、Bと専任媒介契約を締結した。Bから指定流通機構には登録しなくてもよい旨の承諾を得ていれば、Aは当該宅地に関する所定の事項について、指定流通機構に登録しなくてもよい。
×
媒介契約が「専属専任媒介契約」であるケース
1H11-37-2宅地の買主の探索が容易で、指定流通機構への登録期間経過後短期間で売買契約を成立させることができると認められる場合には、Aは、契約の相手方を探索するため、当該宅地について指定流通機構に登録する必要はない。
×
2H11-39-4AB間の媒介契約が専属専任媒介契約である場合で、Aが所定の期間内に指定流通機構に登録をしなかったとき、Aは、そのことを理由として直ちに罰則の適用を受けることがある。
×
3H06-47-1Aは、当該物件の情報を、必ず、国土交通大臣の指定する流通機構(指定流通機構)に登録しなければならない。
4H04-39-4この媒介契約が専属専任媒介契約であるときは、Aは、契約の相手方の探索については、国土交通大臣の指定する流通機構に当該宅地を登録することにより、行わなければならない。
5H03-44-4当該媒介契約が専属専任媒介契約である場合において、AB間の合意により、国土交通大臣が指定する流通機構に当該宅地を登録しなくてもよい旨の特約をしたときは、その特約は、無効となる。
媒介契約が「一般媒介契約」であるケース
1R03-38-ウAは本件契約を締結した後、所定の事項を遅滞なく指定流通機構に登録したが、その登録を証する書面を、登録してから14日後にBに交付した。
2R02-38-3一般媒介契約を締結した場合、Aは、指定流通機構に甲住宅の所在等を登録しなければならない。×
3H23-31-1A社は、Bとの間で締結した媒介契約が専任媒介契約であるか否かにかかわらず、所定の事項を指定流通機構に登録しなければならない。
×
4H20-35-アAが、Bとの間に一般媒介契約(専任媒介契約でない媒介契約)を締結したときは、当該宅地に関する所定の事項を必ずしも指定流通機構へ登録しなくてもよいため、当該媒介契約の内容を記載した書面に、指定流通機構への登録に関する事項を記載する必要はない。
×
5H11-39-1AB間の媒介契約が専任媒介契約でない場合、Aは、契約の相手方を探索するため、当該宅地について指定流通機構に登録することはできない。
×
媒介契約書の記載事項(指定流通機構への登録に関する事項)(宅建業法[10]3(1)⑤)

[共通の設定]
宅地建物取引業者Aが、BからB所有の宅地又は建物の売却に係る媒介を依頼された。

年-問-肢内容正誤
1H20-35-アAが、Bとの間に一般媒介契約(専任媒介契約でない媒介契約)を締結したときは、当該宅地に関する所定の事項を必ずしも指定流通機構へ登録しなくてもよいため、当該媒介契約の内容を記載した書面に、指定流通機構への登録に関する事項を記載する必要はない。
×
2H10-45-1媒介契約が専任媒介契約以外の一般媒介契約である場合、Aは、媒介契約を締結したときにBに対し交付すべき書面に、当該宅地の指定流通機構への登録に関する事項を記載する必要はない。
×

イ 誤り

指定流通機構に物件を登録すると(図の①)、指定流通機構から登録を証する書面が発行されます(同②)。宅建業者Aは、この書面を遅滞なく依頼者に引き渡す必要があります(同③、宅建業法34条の2第6項)。

指定流通機構への登録

宅建業者Aが何らかの書面を作成して交付するわけではありません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
指定流通機構への登録(登録を証する書面)(宅建業法[10]4(3)③)

[共通の設定]
宅地建物取引業者Aが、BからB所有の宅地又は建物の売却に係る媒介を依頼された。
年-問-肢内容正誤
1R04-42-4Aが、Bと専属専任媒介契約を締結した。Aは所定の事項を指定流通機構に登録した場合、Bから引渡しの依頼がなければ、その登録を証する書面をBに引き渡さなくてもよい。×
2R03-38-ウAは、Bと一般媒介契約を締結した後、所定の事項を遅滞なく指定流通機構に登録したが、その登録を証する書面を、登録してから14日後にBに交付した。
3R02-29-アAは、Bとの間で専任媒介契約を締結し、所定の事項を指定流通機構に登録したときは、その登録を証する書面を遅滞なくBに引き渡さなければならない。
4H29-43-ウAは、当該専任媒介契約の締結の日から7日(ただし、Aの休業日は含まない。)以内に所定の事項を指定流通機構に登録しなければならず、また、法第50条の6に規定する登録を証する書面を遅滞なくBに提示しなければならない。×
5H23-31-3A社は、Bとの間で専任媒介契約を締結し、所定の事項を指定流通機構に登録したときは、その登録を証する書面を遅滞なくBに引き渡さなければならない。
6H21-32-2AがBとの間で専任媒介契約を締結した。AがBに対して、甲宅地に関する所定の事項を指定流通機構に登録したことを証する書面を引き渡さなかったときは、Aはそのことを理由として指示処分を受けることがある。
7H20-35-イAが、Bとの間に専任媒介契約を締結し、当該宅地に関する所定の事項を指定流通機構に登録したときは、Aは、遅滞なく、その旨を記載した書面を作成してBに交付しなければならない。
×
8H11-39-3AB間の媒介契約が専任媒介契約である場合で、Aが、当該宅地について指定流通機構に登録をし、当該登録を証する書面の交付を受けたとき、Aは、その書面を遅滞なくBに引き渡さなければならない。

ウ 誤り

専任媒介契約に基づき売買契約が成立したとき、宅建業者は、遅滞なく、以下の事項を指定流通機構に通知する必要があります(宅建業法34条の2第7項、同法施行規則15条の13)。

契約成立時の通知

通知事項の中に「宅地の所在」は含まれていません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
指定流通機構への登録(契約成立時の通知)(宅建業法[10]4(3)④)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
宅地建物取引業者Aが、BからB所有の宅地又は建物の売却に係る媒介を依頼された。
1H28-27-2
AがBと専任媒介契約を締結した場合、当該宅地の売買契約が成立しても、当該宅地の引渡しが完了していなければ、売買契約が成立した旨を指定流通機構に通知する必要はない。
×
2H25-28-アA社が、Bとの間に専任媒介契約を締結し、甲宅地の売買契約を成立させたときは、A社は、遅滞なく、登録番号、取引価格、売買契約の成立した年月日、売主及び買主の氏名を指定流通機構に通知しなければならない。
×
3H24-29-1A社がBと専任媒介契約を締結した場合、当該土地付建物の売買契約が成立したときは、A社は、遅滞なく、登録番号、取引価格及び売買契約の成立した年月日を指定流通機構に通知しなければならない。
4H23-31-4A社は、Bとの間で専任媒介契約を締結した場合、当該宅地の売買契約が成立したとしても、その旨を指定流通機構に通知する必要はない。
×
5H21-32-4AがBとの間で専任媒介契約を締結した。Aは、指定流通機構に登録した甲宅地について売買契約が成立し、かつ、甲宅地の引渡しが完了したときは、遅滞なく、その旨を当該指定流通機構に通知しなければならない。
×
6H20-35-ウAが、Bとの間に専任媒介契約を締結し、売買契約を成立させたときは、Aは、遅滞なく、当該宅地の所在、取引価格、売買契約の成立した年月日を指定流通機構に通知しなければならない。
×
7H16-45-1A社は、宅地の売買の専任媒介契約を締結し、指定流通機構に登録を行った物件について売買契約が成立した場合は、遅滞なくその旨を指定流通機構に通知しなければならず、当該通知を怠ったときは指示処分を受けることがある。
8H15-43-1Aが、Bと専任媒介契約を締結した。Aは、媒介により、売買契約を成立させたが、Bから媒介報酬を受領するまでは、指定流通機構への当該契約成立の通知をしなくてもよい。
×
9H10-45-3媒介契約が専任媒介契約である場合で、指定流通機構への登録後当該宅地の売買の契約が成立したとき、Aは、遅滞なく、登録番号、宅地の取引価格及び売買の契約の成立した年月日を当該指定流通機構に通知しなければならない。

まとめ

ア、イ、ウの中に正しいものは一つもありません。正解は、肢4。


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【宅建過去問】(平成20年問35)媒介契約(個数問題)” に対して4件のコメントがあります。

  1. ミサカ妹 より:

    質問
    媒介契約書に
    記載すべき内容について

    インスペクションの
    あっせんの可否は
    媒介契約書の
    「必須」 記載事項でしょうか?
    それとも
    「任意」記載事項なの でしょうか?

    つまらない質問で
    申し訳ありません
    m(_ _)m

    1. 家坂 圭一 より:

      ミサカ妹様

      講師の家坂です。
      御質問ありがとうございます。

      媒介契約におけるインスペクション(建物状況調査)の扱いですが、
      宅建業法で媒介契約書面の記載事項としているのは、「建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項」です(同法34条の2第1項4号)。
      さらに、「標準媒介契約約款」を見ると、記載事項は、「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無(有・無)」とされています。
      つまり、あっせんをしない場合でも「無」の欄に◯を付ける必要があります。
      その意味では、「必須」記載事項ということになると思います。

  2. 高木 瞳 より:

    質問をお願い致します。

    専任媒介契約を締結し、所定の事項を指定流通機構に登録したときは、その登録を証する書面を遅滞なくBに引き渡さなければならない。

    このような問題がありますが一般媒介(任意)で登録した時は、登録をしたからには書面の引渡しは必要なのでしょうか?

    1. 家坂 圭一 より:

      高木様

      講師の家坂です。
      返信が遅くなり、大変申し訳ありません。

      一般媒介契約において、物件を指定流通機構に登録した場合、登録を証する書面(登録証明書)を依頼者に引き渡すべきか
      という御質問ですが、これは、難しい問題です。

      なぜなら、以下の2つの相反する考え方が可能だからです。

      (1)書面の引渡しは、法的な義務ではない。
      (2)登録証明書を宅建業者の手元に留めておく必要はないから、引き渡すべきだ。

      法律論なら(1)、依頼者保護の観点からすれば(2)、と考えるべきでしょう。
      そうであるにも関わらず、
      「登録を証する書面を引渡しする必要がある。」
      という問題文を出題をして、これを「誤り」と答えさせるのは、筋が悪い問題ということになるのではないでしょうか。
      このような背景が理由なのか、この点について、過去問に出題されたことはありません。

      歯切れの悪い回答ですが、今のところ、以上のように考えています。
      引き続き、この点について調べていこうと思います。

      《後日の話》

      令和3年10月試験で、ついにこの論点が出題されました(問38肢ウ)。
      結論も予想通りです。

      今後、同じ論点が問われた場合には、以下のように解答しましょう。

      1. 一般媒介契約では、宅建業者には、そもそも指定流通機構への登録義務自体がない。
      2. 登録することは可能だが、登録した場合であっても、依頼者に対して登録を証する書面を交付する義務を負わない。

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