【宅建過去問】(平成25年問12)借地借家法(借地)

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賃貸借契約に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

  1. ゴルフ場経営を目的とする土地賃貸借契約については、対象となる全ての土地について地代等の増減額請求に関する借地借家法第11条の規定が適用される。
  2. 借地権の存続期間が満了する際、借地権者の契約の更新請求に対し、借地権設定者が遅滞なく異議を述べた場合には、借地契約は当然に終了する。
  3. 二筆以上ある土地の借地権者が、そのうちの一筆の土地上に登記ある建物を所有し、登記ある建物がない他方の土地は庭として使用するために賃借しているにすぎない場合、登記ある建物がない土地には、借地借家法第10条第1項による対抗力は及ばない。
  4. 借地権の存続期間が満了する前に建物が滅失し、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を建築した場合、借地権設定者が異議を述べない限り、借地権は建物が築造された日から当然に20年間存続する。

正解:3

1 誤り

借地借家法による保護の対象となるのは、借地権です。そして、「借地権」は、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」を意味します(借地借家法2条1号)。
本肢の土地賃貸借契約は「ゴルフ場経営」を目的としていて、建物の所有を目的とするものではありません。したがって、その土地の利用権は、「借地権」ではないことになります。借地権に該当しないのですから、同法11条(地代等増減請求権)の適用や類推適用を受けることはできません(最判平25.01.22)。

■参照項目&類似過去問
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借地権(借地借家法[01]1(1))
年-問-肢内容正誤
1H25-12-1ゴルフ場経営を目的とする土地賃貸借契約については、対象となる全ての土地について地代等の増減額請求に関する借地借家法第11条の規定が適用される。×
2H18-13-1Bが建物を建築せず駐車場用地として利用する目的で存続期間を35年として土地の賃貸借契約を締結する場合には、期間は定めなかったものとみなされる。
×
地代等増減請求権(借地借家法[02]2)
年-問-肢内容正誤
1R05-11-1本件契約に、当初の10年間は地代を減額しない旨の特約を定めた場合、その期間内は、BはAに対して地代の減額請求をすることはできない。×
2R02-11-2A所有の甲土地につき、Bとの間で居住の用に供する建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃貸借契約が締結された。本件契約で「一定期間は借賃の額の増減を行わない」旨を定めた場合には、甲土地の借賃が近傍類似の土地の借賃と比較して不相当となったときであっても、当該期間中は、AもBも借賃の増減を請求することができない。×
3H29-11-3土地賃貸借契約が建物所有を目的として存続期間60年とし、賃料につき3年ごとに1%ずつ増額する旨を公正証書で定めたものである場合、社会情勢の変化により賃料が不相当となったときであっても、賃貸人も賃借人も期間満了まで賃料の増減額請求をすることができない。×
4H25-12-1ゴルフ場経営を目的とする土地賃貸借契約については、対象となる全ての土地について地代等の増減額請求に関する借地借家法の規定が適用される。×
5H05-11-3 「地代の増減は、借地権設定者・借地権者の協議によって定める」と約定した場合、借地権設定者は、協議を尽くさなければ、地代の増減を請求することはできない。×
6H01-12-4当事者間で借賃の増額について協議が調わない場合、借地権者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める借賃を支払えばよい。

2 誤り

借地権者が契約の更新を請求してきた場合、借地権設定者がこれを拒むためには、まず、遅滞なく異議を述べることが必要です(借地借家法5条1項ただし書き)。しかし、借地権設定者は、正当事由がなければ、異議を述べることができません(同法6条)。つまり、法定更新を拒むためには、「遅滞なく異議を述べること」に加えて、「正当事由があること」も要求されるのです。

したがって、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたとしても、正当事由がなければ、借地契約は法定更新されます。異議を述べさえすれば、借地契約が当然に終了する、とする本肢は誤りです。

■参照項目&類似過去問
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契約の法定更新(借地借家法[01]3)
年-問-肢内容正誤
1R05-11-4本件契約が借地権者の居住のための建物を所有する目的であり契約の更新がない旨を定めていない契約であって、期間満了する場合において甲土地上に建物があり、借地権者が契約の更新を請求したとしても、借地権設定者が遅滞なく異議を述べ、その異議に更新を拒絶する正当な事由があると認められる場合は、本件契約は更新されない。
2R03s-11-2借地権の存続期間が満了する場合、借地権者が契約の更新を請求したとき、その土地上に建物が存在する限り、借地権設定者は異議を述べることができない。×
3H25-12-2借地権の存続期間が満了する際、借地権者の更新請求に対し、借地権設定者が遅滞なく異議を述べた場合には、借地契約は当然に終了する。×
4H21-11-2当初の存続期間満了時に、借地権者が更新請求し、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べたとしても、異議の理由にかかわらず、借地契約を更新したものとみなされる。×
5H20-13-2存続期間満了後に、借地権者が土地使用を継続した場合、契約更新とみなされることがある。
6H19-13-3存続期間が満了した場合でも、借地権者が、建物収去・土地明渡しを請求できない場合がある。
7H10-11-2存続期間満了時に借地権者が更新を請求し、借地権設定者が異議を述べたがその異議に正当事由がない場合、契約は更新され、その存続期間は30年である。×
8H05-11-2「期間満了の際、借地権者に対し相当の一定額の交付さえ行えば、借地権設定者は更新を拒絶できる」と特約してもその特約は、無効である。
9H04-10-2当初の存続期間内に、建物が滅失し再築しない場合、期間満了時に、借地権者が更新請求しても、借地権設定者が異議を述べたときは、契約は更新されない。
10H04-10-3存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、借地権設定者が異議を述べなければ、期間の定めのない借地権が設定されたとみなされる。×
11H01-12-2存続期間満了時に、借地権者が更新請求し、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べなければ、前の契約と同一条件で更新したものとみなされる。
12H01-12-3存続期間満了後、借地権者が土地使用を継続しており、建物がある場合は、借地権設定者が異議を述べなければ、前の契約と同一条件で更新したものとみなされる。

3 正しい

借地の上に登記されている建物を所有している場合、借地権者は、第三者に借地権を対抗することができます(借地借家法10条1項)。
本肢では、登記ある建物を所有している土地に関して、この条文が適用されます。つまり、借地権を第三者に対抗することができるわけです。しかし、庭として使用している土地については、土地上に登記ある建物がないため、対抗要件が存在しません。このような土地については、対抗力が及ばないとするのが判例です(最判昭40.06.29)。

25-12-3

■参照項目&類似過去問
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借地権の対抗要件(借地借家法[02]1(1)(2))
年-問-肢内容正誤
1R03s-06-2
土地の賃借人として当該土地上に登記ある建物を所有する者は、当該土地の所有権を新たに取得した者と対抗関係にある第三者に該当する。

2R03s-11-3
借地権者が借地上の建物にのみ登記をしている場合、当該借地権を第三者に対抗することができるのは、当該建物の敷地の表示として記載されている土地のみである。

3R02s-11-1
借地権者が借地権の登記をしておらず、当該土地上に所有権の登記がされている建物を所有しているときは、これをもって借地権を第三者に対抗することができるが、建物の表示の登記によっては対抗することができない。×
4R02s-11-3土地の賃借人が登記ある建物を所有している場合であっても、その賃借人から当該土地建物を賃借した転借人が対抗力を備えていなければ、当該転借人は転借権を第三者に対抗することができない。×
5R02s-11-4借地権者が所有する数棟の建物が一筆の土地上にある場合は、そのうちの一棟について登記があれば、借地権の対抗力が当該土地全部に及ぶ。
6R02-11-1
A所有の甲土地につき、Bとの間で居住の用に供する建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃貸借契約が締結された。Bは、借地権の登記をしていなくても、甲土地の引渡しを受けていれば、本件契約締結後に甲土地を購入したCに対して借地権を主張することができる。×
7H30-11-4
[AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]Bは、甲土地につき借地権登記を備えなくても、Bと同姓でかつ同居している未成年の長男名義で保存登記をした建物を甲土地上に所有していれば、甲土地の所有者が替わっても、甲土地の新所有者に対し借地権を対抗することができる。×
8H29-11-1
(A所有の甲土地につき、平成29年10月1日にBとの間で賃貸借契約(本件契約)が締結された。)Aが甲土地につき、本件契約とは別に、平成29年9月1日にCとの間で建物所有を目的として賃貸借契約を締結していた場合、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは、本件契約よりもCとの契約が優先する。
×
9H28-11-1
[Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借]Aが甲建物を所有していても、建物保存登記をAの子C名義で備えている場合には、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたDに対して、Aは借地権を対抗することができない。

10H28-11-2
[Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借]Aが甲建物を所有していても、登記上の建物の所在地番、床面積等が少しでも実際のものと相違している場合には、建物の同一性が否定されるようなものでなくても、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたEに対して、Aは借地権を対抗することができない。
×
11H26-07-2借地権者が借地上の建物につき自己名義で保存登記をしている場合、借地の不法占拠者に対し、賃借権に基づいて妨害排除を求めることができる。
12H26-11-2借地上の建物の登記があれば、土地が第三者に売却されても、借地権を対抗可。
13H25-12-3二筆ある土地の借地権者が、一筆の土地上に登記ある建物を所有し、他方の土地は庭として使用している場合、後者の土地には対抗力が及ばない。
14H24-11-1建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において、借地権の登記がなくても、その土地上の建物に借地人が自己を所有者と記載した表示の登記をしていれば、借地権を第三者に対抗することができる。
15H24-11-3土地の転借人は、転貸人たる賃借人が対抗力ある建物を所有していれば、賃借権を対抗可。
16H20-13-4口頭の借地契約でも、借地上の建物の登記があれば、借地権を対抗可。
17H18-13-4公正証書で借地契約をしても、対抗力が認められない場合がある。
18H15-13-1借地上の建物の保存登記があれば、借地権を対抗可。
19H11-13-1自己名義の保存登記があっても、居住していなければ対抗不可。×
20H11-13-2配偶者名義の保存登記があっても、対抗不可。
21H11-13-3一筆の土地上にある2棟の建物のうち1棟について自己名義の保存登記があれば、全体について借地権を対抗可。
22H11-13-4所在地番が多少相違しても同一性が認識できれば対抗可。
23H08-13-1長男名義の保存登記があれば、対抗可。×
24H08-13-2自己名義の保存登記があれば、強制競売の競落者にも対抗可。
25H08-13-4定期借地権の場合、公正証書で契約締結していれば、建物の登記がなくても対抗可。×

4 誤り

借地権の存続期間満了前に建物が滅失した場合、借地権設定者の承諾があれば、借地権は築造された日(又は承諾の日)から20年存続することになります(借地借家法7条1項)。また、借地権者の通知に対し、借地権設定者が2か月以内に異議を述べなかった場合にも、承諾があったものとみなされます(同条2項)。
この場合、借地権は、承諾日又は築造日のいずれか早い日から20年間存続します。つまり、承諾があったとみなされる日の方が早ければ、その日から20年間存続するわけです。
本肢は、「築造された日から当然に20年間存続」とする点が誤っています。

25-12-4

■参照項目&類似過去問
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当初の契約期間中の滅失・取壊し(借地借家法[01]4(1))
年-問-肢内容正誤
1R04-11-1借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が借地権の残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造することにつき借地権設定者の承諾がない場合でも、借地権の期間の延長の効果が生ずる。×
2R04-11-2転借地権が設定されている場合において、転借地上の建物が滅失したときは、転借地権は消滅し、転借地権者(転借人)は建物を再築することができない。×
3R04-11-3借地上の建物が滅失し、借地権設定者の承諾を得て借地権者が新たに建物を築造するに当たり、借地権設定者が存続期間満了の際における借地の返還確保の目的で、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨の特約を借地権者と結んだとしても、この特約は無効である。
4H25-12-4借地権の存続期間満了前に建物が滅失し、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を建築した場合、借地権設定者が異議を述べない限り、借地権は築造日から当然に20年間存続する。×
5H21-11-1当初の存続期間内に建物が滅失し、借地権者が借地権設定者の承諾を得ずに残存期間を超えて存続すべき建物を築造→借地権設定者は解約の申入れが可能。×
6H21-11-3借地権の当初の存続期間中に借地上の建物の滅失があった場合、借地権者は地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。×
7H10-11-1当初の存続期間内に、借地権者が、借地権設定者に通知することなく、建物を取壊し残存期間を超えて存続すべき建物を築造→借地権設定者は契約の解除が可能。×
8H04-10-1木造建物の所有を目的とする借地契約において、期間満了前に借地権者が鉄筋コンクリート造りの建物を無断で増築した場合、借地権設定者が遅滞なく異議を述べなければ、借地権の存続期間は、増築のときから20年となる。×
9H04-10-4期間満了前に建物が火災により滅失し、借地権者が同等の建物を再築した場合、土地所有者が遅滞なく異議を述べなければ、借地権の存続期間は、建物滅失の日から20年となる。×
10H03-12-1借地権者は、家屋が火災により減失したときは、新築することができ、その建物が借地権の残存期間を超えて存続するものであっても、土地所有者は異議を述べることができない。×
11H02-12-3建物の所有を目的とする土地の賃貸借において、当該建物が借地人の失火により滅失したときは、賃貸人は、解約の申入れをすることができる。×
12H02-12-4建物の所有を目的とする土地の賃貸借において、当初の存続期間中に当該建物が滅失したときであっても、当該賃貸借は終了しない。

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【宅建過去問】(平成25年問12)借地借家法(借地)” に対して2件のコメントがあります。

  1. 家坂 圭一 より:

    >3度目の正直さま

    「通知のあった日」ではなく、「通知後2月を経た日」を基準にします。
    ただし、この点をテーマにした出題は、過去に一度もありません。

  2. 3度目の正直 より:

    細かいことで恐縮ですが(試験にはあまり関係ないとおもいます)、肢4において、借地権者の通知に対し、借地権設定者が2月以内に異議を述べなかった場合にも、承諾があったものとみなされるということで図には”みなし承諾”と表現されていると思いますが、この”みなし承諾”は借地権者の通知があった日を基準として考えればよいでしょうか。〔通知後2月を経た日ではない?〕

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